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佐藤龍我、ドラマ初出演とは思えない存在感! 『ゼロ 一獲千金ゲーム』での演技の凄み

2018年09月10日 12:52  リアルサウンド

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 賞金1000億円をかけて、知力・体力・時の運が試されるゲームに挑む若者たちの戦いを描いたドラマ『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系)。原作である福本伸行作品『賭博覇王伝 零』と同様、“天才勝負師”と謳われる義賊の主人公・宇海零(加藤シゲアキ)とライバル関係になるのが、佐藤龍我演じる標だ。9月9日に放送された第9話では、零と標の一騎打ちが描かれた。常に冷静で顔色一つ変えない標が、はじめて動揺する姿を見せた回だった。


参考:杉野遥亮、小関裕太、甲斐翔真……『ゼロ 一獲千金ゲーム』で白熱する若き俳優たちの演技バトル


 標は在全(梅沢富美男)が用意したオリジナルゲームを勝ち抜き、勝者の証である4つのリングを手に入れる。零はそんな標に、彼が計画する「在全を倒す方法」を聞き出した。原作では標の台詞が伏せ字となり、具体的な方法は明かされない。ドラマでも、いくつかの単語が飛び交うように聞こえるだけで、具体的な方法は明かされなかった。「革命を起こすために死ぬ覚悟はできてる」と話す標の目には力があり、命をも賭けた覚悟を背負う圧が感じられる。しかし零は、命をも捨てる覚悟の標を守るために、彼から勝者の座を奪うことを決意する。「必ず生きて帰す」と仲間たちを助けてきた零らしい考えだ。


 零と標は「ブレークダウン」と呼ばれるゲームで一騎打ちとなる。目の前にリングの入った箱が4つ並ぶ。鉄板で守られていない箱を当て、ハンマーでリングを叩き割ることができれば勝利である。標は零の企みを瞬時に見破り、また零に対して手の内を明かすなどして翻弄する。圧倒的な力の差を見せつけ、零を追い込む標。それでも標は顔色一つ変えない。しかし零はゲームの最中、標との心理戦ではなく対話を求めるようになる。「標が取り巻きをつくったり、自分と組むことを持ちかけてきたのは、誰かを頼りたかったからじゃないか」と問いかける零。「信用できない相手は利用するしかない」と話していた標の表情は硬いが、零のまっすぐな言葉に心を乱されたようだ。人差し指で膝を執拗に掻く姿が映し出された。


 佐藤演じる標は、“天才勝負師”零をも凌ぐ頭脳の持ち主である。常に冷静沈着だが心の内に大きな野望を抱いているという役どころだ。他のキャラクターにはない得体の知れなさを漂わせていた佐藤は、標が零を圧倒するライバルになることを初登場時から視聴者に印象づけた。表情がなく、淡々と台詞を話す標に違和感を抱く視聴者もいたかもしれないが、佐藤の目つきや相手の表情を見るときの挙動は、革命を起こし、命を失うかもしれない覚悟をも背負った少年を体現するものだった。


 とはいえ、標が冷酷な人間ではないということも佐藤は自身の演技をもって伝えている。思えば第5話で人間柱時計にされた標は、組むことになったスナオ(杉野遥亮)に対して「1番馬鹿そうだから選んだ」と言っていた。馬鹿そうだと言ったことを「あれはほめ言葉だから」と伝えた標は、スナオに救出されたとき「やっぱり君を選んで正解だった」と呟く。第9話で「信用できない相手は利用するしかない」と言った標だが、スナオに対しては、彼の“素直さ”を買ってチームを組んでいたことが推察できる。佐藤は決して標の感情を表情で表そうとはしない。しかし言葉少なな標の台詞に、彼の感情をひそかに込めることで、彼が必ずしも他人を突き放しているわけではないことを表している。在全を倒すという野望を必ず達成するため、その目的が邪魔されることがないよう、人を信用してこなかっただけなのだ。


 そんな標は、心の奥底で「信用できる大人」を求めていたことを零に指摘される。執拗に膝を掻いていた指にぐっと力が入ったとき、はじめて標に幼さが感じられた。


 ドラマ終盤、零は「ブレークダウン」で標に勝利する。しかし標が負けたわけではないことは視聴者にも伝わる。ゲームを鑑賞していたセイギ(間宮祥太朗)が勘づいたが、「信用できる大人」を心の奥底で求めていた標は、零に自身の手の内を明かし続けることで、彼が自分の言葉を信用するかどうか見極めていたのだ。零の勝利が決まったとき、標は初めてその顔に笑みを浮かべる。予告編では零への勝利を確信した不敵な笑みのように見えたのだが、実際にはようやく出会えた「信用できる大人」に対して浮かべた安堵の表情だった。第9話で標が背負い続けてきた覚悟が明かされるまで、彼の真意がわからないように笑みを浮かべた佐藤の深い演技に脱帽する。ゲームに敗北した標は、去り際「またいつか会いましょう」と零に声をかけて会場を立ち去る。その背中に、第1話から背負い続けてきた覚悟は見えなかった。


 最終話に再び標が登場するかどうかは不明だが、標が『ゼロ 一獲千金ゲーム』になくてはならない存在だったのは事実である。佐藤は9名のジャニーズJr.によるオーディションで標役を勝ち取った。今作がドラマ初出演とは思えないほどの存在感を発揮した彼は、今後どのような役を演じるのだろうか。(片山香帆)