「咳をしても一人」という尾崎放哉の有名な句がある。咳をしても、誰も心配して声をかけてくれる人のない孤独と寂しさが痛いほど伝わってきて、なんともいえない悲しさが広がる。孤独という感情は、誰の心にもいつの時代にも、普遍的なものなのだろう。
8月末のはてな匿名ダイアリーには、「独身四十代の孤独は凄まじい」と嘆くエントリがあった。いくら収入があっても、仕事にも趣味の集まりにも生きがいを見いだせず、心を通わす人はいない。「なんのために生きてるんだ?」と切実な孤独を訴えていた。(文:okei)
「一人でいると辛い人」は、メジャーな感性だから結婚しないと辛い?
40代といっても前半と後半ではまた違うが、筆者は40代後半だ。40代というのは気力・体力・記憶力の減退をいよいよ実感し、自分が「してきたこと」と「してこなかったこと」の結果が、ハッキリと現れている時期である。もちろん人によるが、ある程度先も見えてきて、なんなら老後も見えてきて、親は年を取り介護も視野に入ってくる。
後戻りできない流れの中で、周囲は家庭があり子どもがいて、若者には元気と自由と未来がある。それに比べると自分は……と落ち込む気持ちはよくわかる。投稿者のポエム的な書き込みからは、そんな苦悩がありありと伝わってきた。
ブックマークは1000近く付くほどの注目を集め、様々なコメントが寄せられた。「金に困ってないなら問題ない」などと突き放す人をはじめ、「あー、自分もこうなりそう(苦笑)」「わかるわー」などと身につまされる人は多い。客観的な意見として、
「一人でいると孤独を感じるというメジャーな感性を持ってる人は結局、結婚して家族を作るというメジャーな人生を歩むのが幸せなんだよ。メジャーな感性なのにマイナーな生き方してるからつらいんだよ」
というコメントも。結婚に向いている・向いていないがあるとしても、生き方はそれぞれの自由であるべきだ。家族と折り合いが悪く「一人の自由のほうがマシ」という人も少なくない。ただ、この投稿者は一人で生きていくのに向いていない人なのかもしれない。
家族持ちも辛い「本気で、独身が解消されれば孤独じゃなくなると思ってるの?」
大量のコメントからは、"独身40代"に思うところのある人が多いことが分かる。しかし、「50代独身だが孤独を感じたことは一度もない」などと言い切る人も一人ではなかった。年代は関係ないという見方だ。
「これ独身関係あるのかね」との指摘があるように、所帯持ちでも子どもがいても、孤独を感じている人はいくらでもいる。そこを突っ込み、「本当に、独身が解消されたら孤独でなくなると本気で思っているの?」と詰め寄るような声もあった。家族がいればしがらみも煩わしさも増えるものだ。
しかし自由なはずの投稿者は「いい一日でも悪い一日でも、朝から晩まで孤独なことは同じ。いくら収入があっても何を持ってても 誰とつるんでも虚しいだけ」などと切々と虚無感や寂しさを綴っており、ちょっとうつ状態ではないかと疑うほどである。精神科への受診を薦める声も多く、筆者も同感だ。
思うに、結婚や子どもには「辛いけど楽しい、大変だけど可愛い」という感情は別の、「未来」を感じることができる。だが、独身だと自分だけで自己完結しなくてはならず(あるいはそう思い込み)、衰えや先が見えてきた40代はそのことと正面から向き合わねばならない。だから、こうした嘆きが注目を集めるのだろう。
「婚活すれば」という薦めも度々入っているが、投稿者がどういう事情で結婚していないのか分からないので下手なことは言えない。それよりも、心が病んでしまっている状態を、なんとか気楽に過ごせるように心掛けるほうがいいだろう。人は、他人と比べたり、未来や過去のことばかり考えていると辛くなってしまう。実はこうした悩みを抱えて生きているのは自分一人ではないと了解し、思い詰めないようにしてほしい。