“スーパーシーズン”第3戦までが終了した2018/19年のWEC世界耐久選手権。10月12~14日に行われる第4戦の舞台となるのは、霊峰富士の麓に位置する富士スピードウェイでの1戦、WEC富士6時間耐久レースだ。今回はクラス唯一のワークスチームであるトヨタに挑む、ノンハイブリッドのプライベーター勢にフォーカスする。
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2017年を持ってポルシェがWEC参戦を終了したことで、ハイブリッドマシンでLMP1クラスに参戦するマニュファクチャラーはトヨタ1社となった。そこでWECを統括するFIAおよびACOフランス西部自動車クラブは、2018年シーズンに向けてLMP1ノンハイブリッドのエントリーを増やすべく、従来は大きな差があったハイブリッドとノンハイブリッドの性能差を縮めることを決定。ライバルなくしてレースは成立せずと、トヨタも自分たちにとって不利に働くその案を承諾した。
性能差を埋めるため、FIAとACOはまずトヨタに対しTS050ハイブリッドの開発凍結を打診。トヨタはそれを受け入れ、一部のパーツ以外は基本的に2017年仕様を踏襲することにした。
その上で、ノンハイブリッド勢に対しては燃料使用量や最低重量をかなり緩く設定し、TS050に戦いを挑めるような新車両規定を策定。多くのプライベーターが興味を持ち、2018年に向けてLMP1規定のマシンを開発した。
その結果、多種多様なノンハイブリッドLMP1が誕生し、2018年のWEC開幕戦スパ6時間には多くのニューマシンが姿を現した。
プライベーターのなかで、もっとも総合的なレベルが高いのはレベリオン・レーシングである。レベリオンはスイスのチームだが、シャシーはフランスの名門オレカ製で、実質的にはオレカの直系チームである。
オレカは去年までトヨタのLMP1プロジェクトにも深く関わっていたため、耐久レースのノウハウは充分に持っている。また、LMP2には以前から戦闘力の高いマシンを提供しており、その的確なクルマづくりには定評があった。
結果、ギブソン製のNAエンジンを搭載する彼らの新作LMP1、レベリオンR13はバランスのとれたマシンに仕上がった。また、ドライバーに関しても元ポルシェのニール・ジャニとアンドレ・ロッテラーというル・マン・ウイナーが加わり、完成度の高いチームとなった。
■バトンも参戦するノンハイブリッドLMP1。性能調整の恩恵で戦力はトヨタに肉薄
ロシアのSMPレーシングも、レベリオンに匹敵する力を持つチームだ。彼らのマシンBR1は、ロシアのBRエンジニアリングが開発したとされているが、シャシーはシングルシーター界の雄、イタリアのダラーラ製である。
開幕戦スパではオールージュで“離陸”するアクシデントがあったが、その後改良が施されル・マンでは終盤までノンハイブリッドのトップを争い続けた。エンジンはイギリスのAERが開発したターボを搭載するなど、NAのレベリオンとは違うアプローチが興味深い。
また、ドライバーにはジェンソン・バトン、ヴィタリー・ペトロフといったF1出身者に加え、元トヨタのステファン・サラザンを迎えるなど、レベルは全体的に高い。ル・マンではマシントラブルやクラッシュで結果を残すことができなかったが、速さはレベリオンに匹敵。今後の成長が楽しみなチームである。
その他にも、SMPと同じくBR1シャシーを使いながら、ギブソン製NAエンジンを搭載するドラゴンスピードや、イギリスのジネッタ製シャシーに、フランスのメカクローム製ターボ・エンジンを搭載するCEFC TRSM、そしてニッサン製エンジンを載せるバイコレスなど、LMP1ノンハイブリッドは百花繚乱だ。
開幕2戦では信頼性もパフォーマンスも不足しトヨタと対等に勝負をすることはできなかったが、その後性能調整策であるEoT(技術の均衡)が推し進められ、シミュレーション上ではTS050とのパフォーマンス差がゼロになった。これで信頼性が高まれば、総合優勝の可能性もゼロではない。
今後は富士6時間を含むすべてのレースで、トヨタに勝負を挑むLMP1ノンハイブリッド勢の力走が見られるはずだ。
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WEC第4戦富士の概要やチケット情報など、詳しくは富士スピードウェイの公式ホームページまで。