F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第13戦ベルギーGP、第14戦イタリアGPの2戦分だ。
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☆ カルロス・サインツJr.(ルノー)
ベルギーGP:11位/イタリアGP:8位
フェルナンド・アロンソから2019年シーズンのマクラーレンシートを授かった10日後のスパ・フランコルシャンでは、硬いミディアムタイヤを履き粘走19番手から11位に。モンツァではプラス・ダウンフォースを選択、コーナーを全力で走って8位に。彼の4点によって結果的にルノーは失格となったハースを退け、ランク4位防衛成功。
☆☆ セルゲイ・シロトキン(ウイリアムズ)
ベルギーGP:12位/イタリアGP:10位
絶えずふらつく“絶叫マシン状態”のウイリアムズFW41を徐々に乗りこなしてきている。コーナー出口でのスピンが減った。14戦目にやっと1ポイント、相棒であるランス・ストロールは大富豪であるパパのコネで既にフォース・インディアに関心が……。最終盤シロトキンがどこまでチームを押し上げるか。
☆☆ ロマン・グロージャン(ハース)
ベルギーGP:7位/イタリアGP:失格)
幻の6位、チームメンバーはモンツァ帰りの空港で“失格”を聞かされたという。この連戦はチームメイトに予選先行、雨がらみコンディション変化や接近戦の混乱状況を切り抜けた。フォース・インディア勢の猛攻を封じこみ4戦連続入賞したのだが……。
☆☆☆ ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)
ベルギーGP:9位/イタリアGP:14位
パワーユニット(PU/エンジン)ハンデを厭わず自己限界を高めてくる予選アタック能力が、レッドブル昇格につながった。コーナリング・スピードがチームメイトであるブレンドン・ハートレーとはかなり違う。モンツァでアロンソ、ダニエル・リカルドと“接触戦”、ダメージを負ったが引かない意志を強くアピール。新人扱いされないために存在を示すことが2019年につながる。
■フェラーリの地元モンツァで大きなミスを犯したセバスチャン・ベッテル
☆☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
ベルギーGP:4位/イタリアGP:3位
エース専用にできているメルセデスW09を自分好みのセットアップに、その努力を2年目の2018年シーズンずっと続けている。レース中にはロングスティントを実行、しかしそれが“アシスト役”に見えてしまうのがつらいところ。ハミルトンが勝つたびにハグしてくるが、受けとめる彼の心境は複雑だろう。
☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
ベルギーGP:3位/イタリアGP:5位
ひとことで言うなら『落ち着いたレーススタイル』に変貌。と思ったらモンツァではボッタス相手に“MAXパターン”なブレーキング、タイムペナルティをとられた。納得いかないと発言する態度、パーソナリティがオランダのファンを毎GPに呼び込む。いま観客動員力、ナンバーワン。
☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
ベルギーGP:1位/イタリアGP:4位
スパは5星、モンツァは1星、なのでこうした。レッドブル時代からチームメイトが予選で脚光を浴びると決勝で“過剰反応”、ミスを犯すことがあった。スパではレ・コンブのブレーキング勝負を制して完勝も、モンツァではロッジアでスピンして最後尾に後退、追い上げの4位。あそこは焦らずに3番手通過でも、そこからだっていろいろやりようがあった。
☆☆☆☆ エステバン・オコン(フォース・インディア)
ベルギーGP:6位/イタリアGP:6位
自分のまわりで起きていることにとらわれず、ドライビングに集中したこの連戦。スパ予選3番手は見事だった。レースでのタイヤマネージメントも上達、ペレスに引けをとらない。
■ヒール役のルイス・ハミルトンのおかげでモンツァは満員御礼
☆☆☆☆ セルジオ・ペレス(フォース・インディア)
ベルギーGP:5位/イタリアGP:7位
キャリア8年目、チームと一心同体の彼の行動によってフォース・インディアは最大の危機を乗り越えた。結束力は強まり、レースウイークにマイナートラブルなど無く、エンジニアたちも2台を効率よくセットアップ。
1年前にスパで“同士討ち”寸前の事件(?)があったことなど忘れてしまう。2戦で合計32点獲得でコンストラクターズランキングは7位へ、6位マクラーレン52点を射程距離にとらえる。母国GPとなる第19戦メキシコGPではどこまでランクアップしているか。
☆☆☆☆(+☆0.5) キミ・ライコネン(フェラーリ)
ベルギーGP:リタイア/イタリアGP:2位
ある『歴代フェラーリ・ドライバー』アンケート調査によると、1位ミハエル・シューマッハー50.1%、2位ライコネン12.4%、3位ジャック・ビルヌーブ10.3%、4位ファン・マヌエル・ファンジオ5.6%、ベッテルは10位1.3%だった。
在籍2007年から2009年にPP5回/9勝、2014年からはPP1回/0勝・2位7回のライコネン。フェラーリの地元でポールポジションは初めて、淡々とインタビュ―に答えたが19年去就が未定なだけに内心では、フェラーリでの『モンツァ・ラストラン』の思いもあっただろう。
☆☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
ベルギーGP:2位/イタリアGP:1位
イタリアGP主催者『ACI』は、ハミルトンに感謝してもいいのではないか。ティフォシにとっての“ヒール・悪役”がいるから満員御礼に。「今年こそやっつけてしまえ」、その熱気はすさまじかった。
その空気を読みいっそう戦意を燃やし3番手から逆転5勝目、劣勢を自覚していたマシンで勝ちとった。ちなみにメルセデスパワーでこの10年に7勝、ティフォシが大歓声を上げたのは8年前に一度だけだ――。