F1第14戦イタリアGP、暑かったり寒かったりと気温の変化が激しかったモンツァからムッシュ柴田氏が現地の様子をお届けします。
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イタリアといえば、ジェラート。ちょっとビックリするのは、僕の泊まってる小さな町でさえ、ホテルから歩いて行ける距離に少なくとも4軒のジェラート屋があることです。まだすごく暑かった木曜日に、どの店が一番かホテルの人に訊いて買ったのがこれです。
マンゴとレモンシャーベット。果肉どっさりでメチャクチャ美味しい上に、これで2ユーロ20(約270円)ですよ……。
でも金曜日からは天気が急激に崩れるとともに気温も20℃を切り、ジェラートどころではなくなりました。
モンツァサーキットは森の中にあって、なので関係者駐車場は雨が降ると、こんなありさまです。
土曜日には、すごくうれしい出来事がありました。
2018年からF2に参戦している牧野任祐選手が、予選14番手から勝ってしまったのです。F1直下のカテゴリーのレース1を、日本人が制したのは初めて。そもそもデビュー年にレース1を勝つドライバー自体非常に少ないだけに、すごい快挙です。
グリッド上位陣と真逆のタイヤ戦略を取ったのが大当たりしたことが最大の勝因で、なので今後も勝ち続けられる、というほど甘いものではありません。でもこの勝利が牧野くんのキャリアの、大きなターニングポイントになることはまちがいないでしょう。
非力なチームで苦しい戦いを強いられている福住仁嶺にとっては、いうまでもなく悔しい勝利だったはず。直後に話を聴きに行った時は、さすがにかなり落ち込んでました。
でも翌日には気持ちを切り替えて、レース2も0ポイントに終わったにもかかわらず、前向きのコメントに終始してました。2戦前のハンガリーからステアリングが曲がったままだったり、今回はチームメイトが4速ギヤを二つ組まれた状態でレースを走らされたりと、このチームの酷さはちょっと想像を絶してます。
決勝当日は朝8時前にサーキットに着いたんですが、レーススタートまでまだ7時間もあるというのに、ゲート前はすでに長蛇の列でした。
モンツァにはもう30回以上来てますが、少なくともこの10年にはなかったことです。フェラーリのフロントロウ独占が、イタリア人たちの血をたぎらせたのでしょうか。
「今回はグリッドガールが復活するぞ」という情報を聞きつけ、勇んでグリッドに向かったのですが、
半分はグリッドボーイでした。しかもカメラを向けても、ニコリともしない。そういうふうにしろと言われてるんでしょうけど、
モナコの笑顔全開とは、えらい違いです。
レースは結局セバスチャン・ベッテルが自滅し、キミ・ライコネンもタイヤが持たずに、フェラーリは8年ぶりのモンツァ制覇はなりませんでした。
それでもチェッカー後には恒例のコースなだれ込みと、ルイス・ハミルトンへのブーイングで鬱憤を晴らしてたティフォシたち。ここにもフィンランド国旗が写ってますが、フリー走行でもライコネンがトップタイムを出した時に大歓声が上がったりと、どうもライコネンの方が人気がある印象でした。
モンツァには久しぶりに浜島裕英さん(フェラーリの元ビークル&タイヤインタラクション・デベロップメント/現在はセルモの総監督)が来てて、なので「タイヤ目線のフェラーリの敗因」などをレース後に拝聴してたんですが、「ハミー、ハミー」と、ひっきりなしにかつての仕事仲間やライバルたちから声をかけられてました。
懐かしや、フェラーリドライバーだったルカ・バドエルじゃないですか。
「ゴーカートやってて、ちょっと速いんだ」と、息子自慢。
「どうしてドライバーっていうのは、子供を同じ仕事に就けたがるんでしょうねえ」と、浜島さん。同感です。
どれだけ厳しい世界か、身をもって味わってきただろうに。自分の果たせなかった夢を、託すということなんでしょうか。
あ、そんな父親が、ここにも。