長年「1人っ子政策」で厳しい産児制限を行ってきた中国だが、2016年に「2人っ子政策」へ転換した後も、出生数は減少している。
9月5日放送の「Newsモーニングサテライト」(テレビ東京)が、その理由を探るため中国の小学生に密着。子どもたちは毎日パソコンで宿題、スポーツやピアノ、算数に英語と習い事に明け暮れる日々だった。番組を見た視聴者からは、ネットで「中国の教育熱凄すぎ…」といった驚きの声が上がった。(文:okei)
小学4年生の夏休み、17種類の宿題と毎日2種類の習い事
今月から小学4年生のシンシン君(9歳)の夏休みは、宿題や習い事で埋まっている。毎日、午前中から昼過ぎまではパソコンに向かって宿題。彼は「小学2年生から宿題はほとんどパソコンでやる」と当然のように語った。夏休みの宿題リストには、算数・英語・音楽など17もの課題がびっしりと並んでいた。
午後は3時から5時までバドミンを週3回、水泳週2、英語週2、ピアノ週1回。夕食後の午後6時半から7時には、学校の宿題で毎日ニュース番組を視聴する。
これで終わりかと思いきや、午後7時過ぎからは算数を週5回、ピアノ週1回、英語週1回を夜の9時まで。ピアノは自宅へ先生を呼んでの個人レッスンだった。シンシン君は英語も堪能で、どれも疲れた様子もなく精力的にこなしていた。
しかし自由時間はほとんどない。なぜ、そこまで習い事が必要なのか。シンシン君の母親は、「ほとんどの子が習い事をしている」と説明する。息子の出来は悪くないつもりだったが、小学校に入ると周囲も優秀だと気付き焦りがつのった。学歴社会の中国では、勉強ができなければ将来十分な収入が得られないという不安がつきまとうのだという。シンシン君の母親は、
「もし子どもが、勉強ができなかったら、私が老後働けなくなっても子どもの面倒を見ないといけない。いま息子の教育にお金を使って、将来息子に養ってもらえるほうがいい」
と、明確に語っている。
年間およそ160万円の習い事、家計の大きな負担に
シンシン君の習い事の費用は、年間およそ160万円にもなるそうだ。母親は、「2人目を産むか」聞かれると、「1人だけでも多くのエネルギーを使う。2人なら今の2倍のエネルギーが必要そんな力はもう残っていない」と答えた。
もちろん日本でも、経済的な理由で2人目を作らないと決めている夫婦も少なくない。しかし中国では、「老親の面倒は子どもがみる」という考え方が日本よりも強い。「老年人権益保障法」で、離れて暮らす高齢者を定期的に訪問し、経済面・生活面の援助をしなくてはならないと義務付けているほどだ。シンシン君の家は、祖父母が同居していた。
「老後は子どもに面倒を見てもらうのが当たり前」のため、当然1人の子どもに注力するエネルギーが日本とは違うようだ。中国の一般的な家庭の、家計に占める教育費の割合は2割以上を占め、大きな負担になっている。教育費の高騰が社会問題になっており、子どもの私立学校の学費を払うために借金を重ねた親が、破産する事態が相次いでいるという。
"2人目を産まない理由"は、日本の多くの人と同じく「経済的な理由」だが、お金がないというよりも、"たった一人にありったけの(もしくは無くても)おカネを注ぎ込む"といった印象だ。
北京の「中国人口と発展研究センター」の研究員は、「今後出産の奨励政策を全国的に真剣に検討する必要がある」としている。「所得税から教育費を免除する政策なら2人目を産んでも生活水準が落ちない」と言うが、果たしてどうだろうか。