2015年のスーパーGT300クラス王者でもあるアンドレ・クートが、TCRチャイナの第2戦寧波インターナショナルスピードパークに参戦。マックプロ・レーシングのFK8ホンダ・シビック・タイプR TCRのステアリングを握り、見事2戦連続ポール・トゥ・ウインを飾り、怪我からの完全復活に華を添えた。
クートは2017年7月のチャイナGTズーハイ戦で大クラッシュを喫し、第1腰椎を負傷、その後は怪我の療養を続けてきた。そして2018年からレース活動を再開。今季はピレリ・スーパー耐久のST-XクラスにアウディR8 LMSで参戦して国内レース復帰を果たしている。
そのクートはレーシングドライバーとしての感覚をさらに研ぎ澄ませるべく、この新設シリーズにもチャレンジを決めたという。
マカオ出身で現在41歳のクートは、今回地元の新たなエージェンシーと契約しTCRチャイナ参戦に向けてのプランを進めてきたが、レースウイークを前に「正直言って、このマシンと寧波のトラックに関して何の予備知識も事前練習もないので、レースに過度な期待は抱いていないんだ」と、弱気な言葉も残していた。
「スケジュールの都合から現地入りするのは金曜になり、その時点でプラクティスの機会も逸している。予選と3ヒートの決勝にはぶっつけ本番で挑むことになる。理想的な条件ではないけれど、僕の使命は可能な限りチームを助けること。その上でいいリザルトが獲得できれば最高だ」
そう語って挑んだFK8ホンダ・シビック・タイプR TCRとの初予選では、ものの数周でトラックとマシンの特性を把握すると、2番手を1.2秒引き離す1分53秒296のタイムを刻み、シリーズ初参戦で初ポールポジションを獲得してみせる。
続くレース2向けの予選セッションでも、自らのタイムをコンマ6秒短縮して1分52秒774で連続ポールを確保し、後続に対し2.2秒の大量ギャップを築く圧巻のアタックを披露した。
そのままレース1に挑んだクートは、抜群のスタートを決めて一人旅。後続のチームワーク・モータースポーツ、ズー・チェン・ユーとリー・リンの2台のフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRに対し16秒のマージンを築いてポール・トゥ・フィニッシュを決めてみせた。
続くレース2でも、クートと彼のシビック・タイプRは後続のバトルを尻目にライト・トゥ・フラッグの完璧なレース展開を見せ、10周のレースで2番手チョウ・ビー・ファンのゴルフに30秒以上の差をつけトップチェッカー。貫禄とキャリアの差を見せつけるレースとなった。
翌日の日曜に開催された耐久60分のレース3は、リバースグリッドの抽選により3番手発進となったマックプロ・レーシング・ホンダだが、スタートで2台のゴルフGTIを仕留めたクートがトップで1コーナーへと突入。
そのまま前日同様にリードを拡大していくが、5周を過ぎたところでトラック上には雨粒が落ち始め、7周を過ぎて本降りとなったところでクートはウエットタイヤへの交換を決断し、ウインドウが開く前にピットへと向かった。
その後、9周を終えて首位のズー・チェン・ユー(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)は最終コーナーでコースオフしながらもメインストレートへと戻ると、ほぼ浸水状態のコントロールラインを通過。しかしハイドロプレーニングでコントロールを失ったズーのゴルフは、そのまま1コーナーのバリアに激しくクラッシュ。2番手サニー・ウォン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)はなんとか衝突を避けたものの、レースはそのまま赤旗中断に。
結局、悪天候のためレース再開はならず、30分にも満たない時間でサスペンデッド。ウォン組が勝利となり、クートは4位で週末最後のレースを終えることとなった。
今回は賞典外ながら、この週末だけでランキング2位に相当するポイントを稼ぎ出したクートは、自らのドライビング完全復活を確認すると同時に「我々、マックプロ・レーシングにとって最高の週末になった。みんなとのレースは本当に楽しかった」と、喜びを語った。
「今週末はすべてのことをやり遂げ、可能な限り最高の結果を得ることができた。マシンのフィーリングも素晴らしく、ドライブが楽しかったよ」
「レース3は雨のためにタイヤ交換を決めて、ピットに入ったところでレースが終わってしまったようなものだ。今後もさらにここで戦うための準備はすでにできているよ!」