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吉岡里帆、“アルコール依存症”に立ち向かう 『健康で文化的な最低限度の生活』音尾琢真との格闘

2018年09月05日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ケースワーカーとして着実に経験を積み重ね、少しだけ貫禄もついてきたように思える義経えみる(吉岡里帆)。この職に就いてから早くも1年が過ぎ、利用者との交流も順調……かに見えたが、彼女は大きな問題を抱える利用者と格闘していくこととなる……。


 9月4日に放送された火曜ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)第8話では、えみるの担当する利用者の赤嶺岳人(音尾琢真)が病院に緊急搬送。なんと彼は飲酒により膵臓を壊してしまい、アルコール依存症になっているのだという。もはや命にもかかわるような状況だ。


写真:アルコール依存症を演じた音尾琢真


 明るくひょうきんな性格である赤嶺は、えみるの真剣な姿にもマジメに取り合わない。しかし、医者からの「このままだと死ぬ」という言葉を受けたえみるは必死な説得を試み、結果的に赤嶺の「がんばる」という誓いの言葉を引き出すことになる。


 しかし一筋縄ではいかない。赤嶺はことあるごとに飲酒してしまい、やがてまたも緊急搬送されてまう始末。半田(井浦新)をはじめとする区役所の面々の協力もあり、なんとか立ち直り、同じ問題を抱える人たちの集団で形成される「依存症自助グループ」に参加する。ここでは参加者それぞれがお互いのアルコールにまつわる体験を語り合い、それが、完治はなくとも回復に有効とされているのだ。だが、やはり赤嶺は飲酒してしまう。ドラマや映画などの作品に“依存症”の人物が出てくることは多々あるが、その人物が物語の中心になるのは珍しいように思う。“アル中”とは日常的にも割と耳にする言葉だが、改めてその病としての重さを知る機会となった。


 そんな赤嶺を演じているのは、ゲスト俳優の音尾琢真。今年は『ブラックペアン』(TBS系)や『ヒモメン』(テレビ朝日系)にもゲスト俳優として出演し、映画では『孤狼の血』や『検察側の罪人』で裏社会に生きる男を演じながら、公開が待たれる『止められるか、俺たちを』では赤塚不二夫役をコミカルに演じている。年齢的には中堅どころの、押しも押されぬバイプレイヤーの1人だろう。この『ケンカツ』でも、これまでレギュラー俳優陣が積み上げてきた作品の世界観に溶け込みながら、ゲスト俳優だからこその“異物”としてのインパクトも巧みに放っている。


 そして、自助グループ支部長・八代孝役として登場したのが嶋田久作。嶋田といえば、朝ドラ『半分、青い。』(NHK)で、酒好きの100円ショップの店長を演じていただけに、思わず吹き出してしまう。ワンカップ片手に職場で飲み潰れたり、店が混み合う時間帯に謎の失踪に出たりと、ずいぶん自由な人であった。


 そんな彼(本作においては、まっとうな人間)が、赤嶺に贈る言葉は「やり直せばいいよ。命があるんだから」。ケースワーカー2年目のえみるが、今回も粘った末に勝ち取った言葉である。だが、つねに油断はならない。完治はないのだ。しかし、回復はある。筆者も酒好きなだけに、なんとも身につまされる回であった。


(折田侑駿)