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映画『ヴァレリアン』は“恋のリトマス試験紙”!? chelmicoが率直に語り合う、その魅力

2018年09月04日 12:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 リュック・ベッソンが監督を務めたSF超大作『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』のBlu-ray&DVDが9月5日に発売される。『スター・ウォーズ』にも多大な影響を与えたSFコミック『ヴァレリアンとローレリーヌ』を映画化した本作は、銀河をパトロールする、ヴァレリアン(デイン・デハーン)とローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)の美男美女コンビが、全宇宙の存亡を揺るがす陰謀に立ち向かう姿を描いた作品だ。


参考:菊地成孔の『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』評:ミレニアム・ファルコンに乗り遅れた者共よ萌えているか?


 今回リアルサウンド映画部では、8月8日メジャーデビューアルバム『POWER』をリリースしたchelmicoにインタビューを行った。劇中のヴァレリアンとローレリーヌ同様、“コンビ”で活動するRachelとMamikoは、本作を観てどのような感想を抱いたのか。率直に感じたことをじっくりと語り合ってもらった。


――まずは、映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』をご覧になって、いかがでしたか?


Rachel&Mamiko:面白かった!


――(笑)。


Rachel:とりあえず、ヒロイン役のカーラ・デルヴィーニュが、すごい可愛かったよね?


Mamiko:可愛かった! 「マジ、完璧じゃね?」って思ったもん(笑)。主役のデイン・デハーンも、すごいカッコ良かったし……。


Rachel:もう、美男美女って感じだったよね。っていうか、そういう映画ってありますよね? この人たちが出ているだけで、最後まで観ていられるっていう。『ヴァレリアン』も、そういう映画だったような気がする。


――この映画のカーラ・デルヴィーニュは、本当にキュートですよね。SF超大作なのに、いきなりシックな黒ビキニで登場するし(笑)。


Rachel:そう! もう、「ありがとうございます!」みたいな感じですよね(笑)。でも、彼女が演じているローレリーヌっていうヒロインがすごい強いってわけでもなく、結局主人公のヴァレリアンに助けられたりもするじゃないですか。最近の映画って、どれも女がめちゃめちゃ強かったりするから、そこが逆に新鮮だったというか……。


Mamiko:確かに。ローレリーヌは、任務の途中で変な宇宙人にさらわれるからね(笑)。でも、ホント面白かったなあ……。


――ちなみにこの映画は、今年の3月末に日本でもロードショー公開されているのですが、そのときはどんなふうに見ていましたか?


Rachel:や、実は全然記憶になくて……。


Mamiko:まったく知らなかったよね(笑)。


Rachel:映画は結構観るほうだから、ロードショーものはチェックしているんですけど、私のセンサーがなぜかピクリとも反応せず……すいません(笑)。


――いえいえ(笑)。


Rachel:だから、「えっ、何だろう、この映画?」っていうか、「何で私たちなんだろう?」って、スタッフに聞いたんですよね。そしたら、「二人組が活躍する“バディもの”だから、chelmicoにピッタリだと思って」ってことだったので、「じゃあ、ヒューマン系みたいな映画なのかな?」って思って観始めたら……。


Mamiko:全然違ったっていう。


Rachel:そう、いきなり宇宙人が出てきて、ビックリしたわ。


Mamiko:しかも、めっちゃたくさん種類出てくるし。


Rachel:何かよくわからない言語でしゃべっているし、「えっ? 誰だよ?」みたいな(笑)。


Mamiko:あと、途中からいきなりリアーナが出てきたから、ビックリしたよね?


Rachel:ビックリした。「何でリアーナ?」って(笑)。めちゃめちゃ踊ってたよね?


Mamiko:踊ってた踊ってた。でも、すごい上手かったし、リアーナも超可愛かった。


Rachel:私たちはサンプル盤で観せてもらったから、パッケージとかも全然ついてない状態で、とりあえず観たんですよね。


――なるほど。ビジュアル的な情報も無い、まったく先入観の無い状態で、ご覧になったんですね?


Rachel:まったくのゼロから入って……そしたら、思ったよりも、全然面白かったっていう(笑)。こういう映画を、普通にポップコーンとかを食べながら観たら、きっと楽しいよね。


Mamiko:うん、絶対楽しいと思う。


――一応、簡単に説明させていただくと、この映画の原作は、『スター・ウォーズ』にも多大な影響を与えたと言われているフランスの伝説的なSFコミック(BD)で、それを幼少の頃から愛読していたというリュック・ベッソン監督が、満を持して映画化したものが本作になります。


Rachel:監督がリュック・ベッソンっていうのも知らなかったし、ホント事前に何も知らなかったんですよね。


Mamiko:何も知らなかった。私、『スター・ウォーズ』、観てないし(笑)。


Rachel:私も4、5、6しか観てないわ。でも、この映画、すごい超大作ですよね。めちゃくちゃお金も掛かっているし。


――とりあえず、お二人とも楽しんでいただけたようですが、具体的にはどのあたりが面白かったですか?


Rachel:さっきも言ったけど、カーラ・デルヴィーニュが、まず超可愛い(笑)。あと、ハトの三人組みたいの出てくるじゃないですか?


――情報屋のドーガン=ダギーズ?


Rachel:そう、あの子たちも可愛かった(笑)。


――それはそれで「可愛い」の意味がちょっと違う気がしますけど(笑)、あの宇宙人の日本語吹き替えの声優は、THE ALFEEのご三方が担当されているんですよね。


Mamiko:え、そうなんですか? ヤバい!


Rachel:そうそう、Wikipediaで吹き替えの声優さんをチェックしたら、主演の2人を日野聡さんと沢城みゆきさんが担当していたりして、すごい豪華だった。


Mamiko:どれどれ……リアーナの吹き替え、ゆりやんレトリィバァなんだ(笑)。


Rachel:だから、日本語吹き替え版も、ちょっと観てみたいと思ったんだけど……でも、何だろう、この映画の魅力って?


Mamiko:やっぱ、何と言っても、主演の2人が魅力的なことじゃない?


Rachel:うん、ヴァレリアンは、ローレリーヌのことを、ずっと好き好き言ってるし、何かすごい可愛かったよね。


Mamiko:任務の途中なのに、ちょいちょいローレリーヌに「結婚してくれ!」って言ってたよね。


Rachel:言ってた言ってた(笑)。でもさ、ヴァレリアンって、いつローレリーヌに惚れたんだろう?


Mamiko:わかんない。最初から好きだったのかな? っていうか、そういうツッコミどころみたいなのは、いろいろ多い映画だよね。


Rachel:確かに。だから、全体的には、結構コミカルな映画だったような気がする。


Mamiko:そうだね。悪役もみんな、ちょっとアホだしさ。


Rachel:あと、パール人だっけ? いきなり真珠で顔洗ってるし。


Mamiko:あれ、めっちゃウケた! 真珠で顔洗うんだって(笑)。


Rachel:でもさ、あの真珠みたいなのって、すごいパワーを持った物質なんでしょ?


Mamiko:パワーで顔洗ってんのか。


Rachel:(笑)。でも、そういう宇宙人たちの造形とかも含めて、衣装とか背景のデザインが、全体的に可愛かったよね。SFっぽいデザインの服もカッコ良かったけど、ヴァレリアンとローレリーヌの私服みたいなのも、すごい可愛かったし。


Mamiko:あと、ちゃんと着こなしてるところが、すごいなって思った。ローレリーヌが、途中でウェディングドレスみたいなのを着ているシーンがあったじゃん。でも、その上からレザーのジャケットを羽織って、下は普通にパンツを履いていて……何かやるなあって思った。ファッション誌とかで言うところの、“甘辛ミックス”みたいな?


Rachel:確かに甘辛だわ(笑)。でも、そうやって普通に楽しく観られる感じの映画だったよね。心の中でツッコミが止まらないというか(笑)。


Mamiko:うん。私、普通にゲラゲラ笑って観てたわ。


Rachel:私も、声出して笑った(笑)。リアーナが踊りまくってるシーンも超笑ったし。


Mamiko:私もそこ、めっちゃ笑った(笑)。


Rachel:えっ、「まだ踊るの?」、「まだ踊るの?」って(笑)。でも、あのシーンは、もう一回観たいかも。あと、ローレリーヌが拉致されて、変な宇宙人にお洋服を着せられるシーンとかも、何かほっこりするんだよなあ。宇宙人の至らなさみたいなものが可愛いというか、出てくる人たちの“おとぼけ感”みたいなのが、何かいちいち可愛いっていう(笑)。でも、別に“コメディ映画”って感じの笑いではないんだよなあ……何て言ったらいいんだろう?


Mamiko:確かに「どこが面白かった?」って言われると、結構難しい映画かもしれないよね。逆に、どうでした?


Rachel:それ、気になるよね? 逆に、どう観るのが正解なのかっていう。


――あ、僕ですか(笑)。正解が何かはわからないですけど、『スター・ウォーズ』のような、善と悪との戦いを描いたSF超大作かと思いきや、実はヴァレリアンのプロポーズをローレリーヌが受けるかどうかを描いたラブコメ映画だったような気がしないでもないです。


Rachel:確かに(笑)。


Mamiko:そう、実はプロポーズがメインなんだけど、そのまわりにある世界観が、とにかくものすごいっていう(笑)。


――ただ、あの2人がすごくキュートだったので、観ていてすごく楽しかったです。


Mamiko:そう、割と物語と関係ないところで、突然ヴァレリアンが愛を語り始めたりするんだけど、それが全然嫌じゃなかった。っていうか、ホントすごい可愛かったよね。あと、物語の舞台がダイナミックで、どんどん展開していくから、すごい観やすかった。


Rachel:うん。CGとかもすごい綺麗だから、観ていて全然飽きなかった。


Mamiko:でも、何でリアーナが出てるの?


Rachel:リュック・ベッソンが、リアーナのこと好きだったんじゃない? リアーナのダンスシーンとか、ものすごい気合い入れて撮ってたし。


Mamiko:リュック・ベッソンって、何撮った人だっけ?


――もともとは『グラン・ブルー』とかで、日本でも認知されるようになって……。


Mamiko:あ、『グラン・ブルー』の監督か。あの映画、私が人生で初めて観た映画なんですよ。お父さんに観せられて……でも、それと比べると、だいぶ遠いところに来ましたよね(笑)。


Rachel:全然違うよね(笑)。でも、『フィフス・エレメント』とかは、『ヴァレリアン』に結構近いかも。あれもSF超大作だったし。


Mamiko:あ、そっか。


Rachel:でもさ、こうしてフィルモグラフィーを眺めてみると、リュック・ベッソンは、気に入った俳優を撮るのが、ものすごい上手な人なのかもね。『レオン』のナタリー・ポートマンとか、『フィフス・エレメント』のミラ・ジョヴォヴィッチとか、みんなすごい可愛かったじゃん。で、それと同じように、今回の『ヴァレリアン』も主演の2人がとにかく可愛かったし、綺麗に撮れていたような気がする。もう、物語なんて二の次、三の次みたいな感じで(笑)。


Mamiko:確かに(笑)。リアーナとかも、「ミュージックビデオか!」ってくらい、衣装も何パターンも揃えて、綺麗に撮ってたし。


――リアーナの他にも、イーサン・ホークやクライヴ・オーウェンが出ているし、実は出演者はかなり豪華なんですよね。


Mamiko:そう、実はすごい人たちが、たくさん出てるんだよね。


Rachel:何かさ、それは音楽でも同じかもしれないけど、好き放題やってる人のお手伝いをしたいって思う人って、結構いると思うんですよね。「どういうのができるんだろう?」って気になるというか。特に今回の映画なんてSFだから、その全体の仕上がりみたいなものって、監督にしかわからないじゃないですか。にもかかわらず、それを自信満々に言われたら、きっと謎の説得力みたいなものが出ちゃうと思うんですよね。


――なるほど。そうやって他人を巻き込む力みたいなものが、依然としてある監督なのかもしれないですね。


Rachel:や、よく作ったと思いますよ。こんなに人とお金を集めて。でも、その割には、変に重くならず、何も気にせず観られるところが、すごい良かったと思う。


Mamiko:そうだね。観る分には、何も気負わないで観れたかも。とりあえず、おうちでリラックスしたいときに、普通に観られるというか。


Rachel:だから要は、あんまり深く考えないで観て欲しいってことだよね。あと、あんまり期待しないで欲しい(笑)。「めっちゃ面白いよ!」ってオススメすると、すごい期待されちゃうから……や、ホントに面白いんだけどさ。


Mamiko:わかる(笑)。もし、友だちに勧めるとしたら何て言う?


Rachel:「マジで疲れてるときに観たらいいよ」かな?


Mamiko:ははは、確かに。疲れてるときには最高かも。名前も何か「バファリン」っぽいし(笑)。


Rachel:(笑)。大人になるとさ、基本的に疲れてんじゃん。


Mamiko:疲れてる疲れてる。逆に、疲れてないときのほうが少ないもんね(笑)。


Rachel:そう、だから何も考えないで観られる映画って、結構貴重だと思うんだよね。


Mamiko:貴重貴重。


Rachel:何か最近の映画って、絶対メッセージ性があったりするじゃん。別にそれが悪いわけじゃないんだけど、疲れてるときには「ちょっと……」ってなったりするから。


Mamiko:うんうん。あ、でも、そしたらchelmicoの音楽に似てるかもね。


Rachel:あ、確かに、似てるわ。私たちの音楽も、何も考えずに聴けると思うし。


Mamiko:「何も考えないで、何も期待しないで聴いてみて!」って感じだし、結構ツッコミどころも多いから(笑)。


Rachel:そうだね(笑)。「何、言ってんねん」みたいなことも結構ラップしてるし……サビでまとめればいいと思ってるから(笑)。


Mamiko:そうそう。そういう意味で、ホントに似てるかも。


――結構すごいこと言い始めましたね(笑)。でも、『ヴァレリアン』がSFファンからいろいろ言われているように、chelmicoの2人もヒップホップ・ファンからいろいろ言われたりもするんじゃないですか?


Rachel:ああ……でも、マジで、ヒップホップ・マニアこそ、ヒップホップに対して厳しいかもしれない。


Mamiko:マニアは好きだから厳しさもあるんだろうけど、優しい人も多いと思うよ。


Rachel:私たちは楽しくやってんだから、いいじゃんみたいな。や、でもさ、こういう『ヴァレリアン』みたいなものを楽しめる心の余裕があったほうが、絶対いいと思うんですよね。この映画も、作り手や出演者たちが楽しくやってるんだなっていうのが、すごく伝わってくるじゃないですか。


Mamiko:そう! こういうものを楽しめる人が、もっと増えたらいいと思う。


Rachel:『ヴァレリアン』を観て、完成度がどうとか、メッセージ性がどうこうとか文句言ったりするのは、マジで無意味だから。


Mamiko:野暮だよね。


Rachel:野暮野暮。それはうちらの音楽も同じというか、やりたいことを全部やっちゃってるのは、リュック・ベッソンと一緒(笑)。


Mamiko:だから、疲れてる友だちに、『ヴァレリアン』と私たちのアルバム『POWER』を一緒に渡すのがいいかもしれないよね。何も考えずに観られるし、聴けるよって(笑)。


Rachel:そうだね。心を無にして、観たり聴いたりして欲しいよね。


――何かについて考えたいとか勉強したいときもあるけど、映画や音楽って、そのためだけにあるものではないですからね。


Mamiko:うん、絶対それだけじゃない。それだけじゃないんだよ……。


Rachel:単に、「楽しみたいから」っていう理由でもいいと思うんだよな。そんなに深く考えずに。


――そうやって、何も考えずに楽しく観る映画としては、予算も出演者も、めちゃくちゃ豪華ですよね。


Rachel:や、もう超秀作だと思います。むしろ、贅沢っていうか、デザートみたいなもんですよね。別に無くてもいいんだけど、あったら潤うっていう。


Mamiko:潤う潤う。あったら嬉しい!


Rachel:だから、ただそれを自由に楽しめばいいんですよね。ホント、いちいちメッセージ性とか言い出したら、みんな疲れちゃうっていうか、エンターテインメントって、そういうのでいいと思うんですよね。まあ、公開タイミングでは、全然気づいてなかったけど(笑)。


Mamiko:そうだね(笑)。


Rachel:でも、映画館のでかいスクリーンで観たかったなって思った。


Mamiko:ね。映画館で観たら、さらにヤバそうだよね。リアーナのダンス・シーンとか、絶対ヤバいと思う。


Rachel:何か友達同士で観に行って、終わったあと「あのシーンのあれ、結局何だったの?」とか言い合いたいよね。


Mamiko:うん。今、こうしていろいろ思い出したながらしゃべってるだけで、結構楽しいもん(笑)。


Rachel:絶対盛り上がると思う。でもホント、みんな、こういう映画を笑いながら観られるぐらいの感じでいて欲しいよね。


Mamiko:あ、この映画のリアクションで、恋人選びとかできそうじゃない? この映画を一緒に楽しめるかどうかで、その人の性格がわかるというか、このシーンのこのポイントを、ちゃんと面白がれるかっていう。


Rachel:そうだね。この映画を観てイライラするようなら、そのあと、マジでケンカとか絶えなさそう。


Mamiko:そんな小さいやつ、絶対やめたほうがいい!


Rachel:「あそこ、笑えるよね」とか一緒に言い合ったり、突っ込んだりできる人じゃないと無理! そういう意味では、“リトマス試験紙”みたいな映画かもしれない。


Mamiko:いいじゃん、“恋のリトマス試験紙、『ヴァレリアン』!”……それ、タイトルでお願いします!


Rachel:や、それはどうかと思うけど(笑)。でもホント、私たちは面白かったです!


Mamiko:オススメです!


(取材・文=麦倉正樹)