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V.I (from BIGBANG)、関ジャニ∞、Aimer……アーティストの“ルーツ”が感じられる新作

2018年09月04日 10:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 アーティストのルーツ、背景が見えてくるような楽曲は、やはり魅力的だ。その人がどんな音楽を聴いて、それをどう解釈しているか。そして、メンバー自身の現状、そのなかで感じている思いがどう表現されているのか。そういうことをじっくりと紐解きたくなる、深みや奥行きを備えた新作を紹介したい。


(関連:関ジャニ∞を愛さずにはいられない 新曲「ここに」とドームツアーから滲み出る“がむしゃらさ”


 このグループにはやはり、エモいロックナンバーがよく似合う。関ジャニ∞のニューシングルの表題曲「ここに」。新体制になって最初の楽曲で彼らは、メンバーの脱退という事態を受け止め、ここからさらに先に進んでいくんだという思いをストレートに表現してみせた。楽曲提供はWANIMA。圧倒的にエモーショナルなメロディ、生々しい臨場感に溢れたバンドサウンド、そして、〈始まるんじゃない 始めるんだぜ!!〉に象徴されるポジティブな意志を反映したリリック。グループの現状をリアルに反映しながら、メンバー自身の考え、やりたいこと、この先の未来を示唆する「ここに」は、関ジャニ∞の新しいストーリーの始まりを告げる楽曲として認知されることになるだろう。


 BIGBANGの末っ子的存在V.Iによる、前作『LET’S TALK ABOUT LOVE』以来、約5年ぶりのソロアルバム『THE GREAT SEUNGRI』。韓国のヒットメイカーTEDDYのほか、SUNNY BOY、SLANDERなどの気鋭のクリエイターが参加、WINNERのMINO、iKONのB.Iとのコラボ曲が収録された本作は、フューチャーベース、オルタナR&B、エレクトロ・ヒップホップといったトレンドを取り込んだトラックメイク、そして、セクシーな雰囲気と親しみやすいキャラクターを使い分けるボーカルがたっぷり楽しめる仕上がり。BIGBANGのヒット曲を想起させるポップチューン「BE FRIEND」を収録するなど、グループへの愛着が伝わるところも本作の魅力。このサービス精神こそ、V.Iのエンターテインメントを支える軸なのだと思う。


 “幼くも、今を支える思い出たち”をコンセプトに制作された、トリプルA面によるAimerの15thシングル『Black Bird / Tiny Dancers / 思い出は奇麗で』。映画『累-かさね-』主題歌として制作された「Black Bird」はずっしりとしたヘビィネスを感じさせるサウンド、シリアスな思いを映し出すメロディが心に残るミディアムチューン。怯え、絶望、憎しみにまみれた女性が、どこかにあるはずの光に向かって進もうとする意志を描いた歌詞も、陰と陽を同時に描き出すAimerのボーカルによく似合っている。さらにエレクトロ系のきらびやかなトラックのなかで、大人と子供の狭間で揺れる年齢特有の感情を綴った「Tiny Dancers」、幼い頃の父親との思い出をテーマにした叙情的なナンバー「思い出は奇麗で」を収録。サウンドメイク、歌詞の世界を含めて、Aimerの多彩な表現が楽しめる記念碑的な作品だ。


 “エルレより、普通に、魂が好き!”という書き出しで原稿を書いてみたいと思っている筆者はグループ魂のメンバーと同世代であり、彼らと同じようにSex PistolsやThe Clashやアナーキーやザ・スターリンが大好きな子供だったわけだが、信じられないことに30年くらい経った現在でも〈No future/No future for you〉のサビでおなじみのSex Pistols「God Save the Queen」を聴くといきなり盛り上がってしまう。とは言えジョニー・ロットンも自分も気が付けば立派な中年なわけで、人生折り返しどころか、残りのほうが確実に短くなりつつあり、「おいおい、ホントに“No future”じゃねえか!」というのが、グループ魂の新曲「もうすっかり NO FUTURE!」だ。演奏もジャケットのデザインも初期パンクが好きな人にはたまらない仕上がりだが、自分たち自身をネタにした身体の張り方こそがものすごくパンク。やっぱり信用に足るパンクバンドである、グループ魂は。


 カクバリズム移籍第一弾となった前作『夜のすべて』がスマッシュヒット、収録曲「ダンスに間に合う」で知名度を上げた思い出野郎Aチームの新作は、夏の終わり、秋の始まりにぴったりのメロウ&ミドルなナンバーを中心にした5曲入り1st EP『楽しく暮らそう』。70年代シカゴソウル、ノーザン・ソウル、00年代以降のネオソウルを軸にしながら、ラヴァーズ・ロック、ファンク、ゴスペルなどを加えたサウンドからは、メンバーのルーツミュージックがはっきりと感じられる。タイトル通り、“いろいろあって辛いけど、いい音楽で踊って楽しく過ごそう”という思いに溢れた歌詞にもグッとくる。そう、新しき光と道を示してくれるのは、いつだってソウルミュージックなのだ。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。