苦戦が予想されたF1第14戦イタリアGPの予選で、トロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーが、Q3に進出。予選9番手を獲得した。
この背景には、グリッドペナルティを科せられていたニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)とダニエル・リカルド(レッドブル)がQ2でタイムアタックせずに予選を終了させていたことも関係しているが、トロロッソ・ホンダが予選の戦い方をきちんと準備し、ガスリーがその期待に見事に応える素晴らしい走りを披露したことも忘れてはならない。
予選後、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、Q3に進出できた理由として、「他車のトウ(スリップストリーム)を上手に使用できた」ことを挙げている。
「トウを使う」とは、前方を走るマシンの後ろに入ることで空気抵抗を小さい状態にして、スピードを上げることだ。ストレートが多いモンツァはトウの効果が大きいサーキットで、予選ではトロロッソ・ホンダだけでなく、多くのドライバーが少しでもトウを使用していた。
トウを使用するにはアタックに入る直前で前車との距離を適正に保った状態でコントロールラインを通過することが重要となる。ホンダの本橋正充副テクニカルディレクターによれば、その間隔は『約3秒』だという。「モンツァの場合、前車が最終コーナーのパラボリカを脱出したときに、自分がパラボリカに入っていくというイメージです」
この状態でアタックを始めると、前車につまることなく、1周にわたってトウの効果を得ることができるという。
ただし、その間隔を適正に保つのが簡単ではない。そのため、モンツァでは1回だけアタックしてピットインするのではなく、コース上にとどまって、何度かアタックするのが恒例となっている。
■3回アタックしたハートレーと2回アタックのガスリーに明暗
トロロッソ・ホンダはQ1でガスリーが1セットのタイヤで2回アタックし、ブレンドン・ハートレーが1セットのタイヤで3回アタックした。ハートレーのほうが1回多くアタックしたのは、「そのほうが、正しくトウにつくチャンスが増えるから」だった。
しかし、1セットのタイヤで2回アタックにはアウトラップ→アタックラップ(エネルギー放出)→クールダウンラップ(エネルギー充電)→アタックラップ(エネルギー放出)→インラップと5周分の燃料をするが、1セットのタイヤで3回アタックするには、プラス2周分の燃料を搭載しなければならない。
モンツァでのフューエル・エフェクト(燃料搭載量がラップタイムに与える影響)は10kgあたり0.31秒なので、コンマ1~2秒のロスとなる。それでも、ハートレーが3回アタックを選択したのはトウを得ることによる効果が「コンマ5秒程度あるから」(ハートレー)だという。
しかし、残念ながらハートレーはうまくトウを使ったものの、Q1は大接戦。ハートレーは0.046秒差でQ2進出を逃した。逆にガスリーはQ1だけでなくQ2でも、トウを上手に利用して、Q3に進出。トロ・ロッソのホームレースで9番手からレースをスタートさせる。