2018年09月02日 10:42 弁護士ドットコム
「入国在留管理庁」という新たな政府組織が、2019年4月にも発足すると報じられている。報道によると、現在ある法務省入国管理局を「庁」に格上げし、法務省の外局に位置付けるという。政府組織の中に「庁」と名のつくものが様々あって、何だかよくわからない…と感じる人もいるだろう。そこで、2001年の省庁再編以降にできたものを振り返ってみる。
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まず、庁は、省に外局として置かれる行政機関で、トップは長官とすることが国家行政組織法に規定されている(復興庁は復興庁設置法により、国家行政組織法の適用対象外)。多くの場合、長官は官僚トップである事務次官の有力候補が就くとされ、局長ポストよりも長官ポストの方が格上とみられる。(※官僚トップの例外=外務省は駐米大使、法務省は検事総長がそれぞれ事務次官よりも格上)
省庁が再編されて以降、新たな庁として一番最初に設置されたのは「観光庁」だった。国土交通省の外局として、2008年10月に発足。外国人観光客をより多く日本に呼び込むため、観光行政を強化する必要性が主張された。
当時の産経新聞などの報道によると、内閣府に置くこともいったん検討されたが、結局は国交省の外局とすることで落ち着いた。時を同じくして国交省の外局である海難審判庁が廃止されるため、その「引き換え」として観光庁の新設が認められたとの見方もあった。
続いて、2009年9月には「消費者庁」が発足。複数の省庁にまたがる消費者行政の一元化を推進するのが狙いとされた。東日本大震災と東京電力・福島第一原発の事故を受け、2012年2月に「復興庁」が、同年9月には「原子力規制庁」が発足した。復興庁は内閣の下に置かれ、原子力規制庁は環境省の外局である原子力委員会の事務局を担う機関とされている。
2015年10月には同時に2つの「庁」が誕生した。防衛省の外局として「防衛装備庁」が発足。「防衛装備品の効率的な調達を図り、研究開発から調達までを一元的に担う」と当時のNHKニュースは伝えた。さらに文部科学省の外局として「スポーツ庁」が発足し、初代長官に1988年ソウル五輪競泳金メダリストの鈴木大地氏が就任したことも話題になった。
廃止された「庁」もいくつかある。理由は、時代の流れで行政が担う必要性が薄まったり、不祥事だったり、上記のように新たな組織を作る引き換えとしての廃止だったりと様々指摘されている。
2003年に廃止されたのが農林水産省の外局だった「食糧庁」だ。戦後の食糧難を経て政府が米価を決めていた時代の存在感は大きかった。2007年9月には前年に起きた入札談合事件を受け、「防衛施設庁」を解体。上記で触れたように「海難審判庁」は2008年10月に廃止され、役割は海難審判所と運輸安全委員会が受け継いだ。
2009年12月には厚生労働省の外局だった「社会保険庁」が廃止され、翌年1月に日本年金機構が業務を引き継いだ。年金記録のずさん管理など不祥事が続いたことによる解体だった。
1府21省庁が1府12省庁になった「省庁再編」は2001年のこと。橋本龍太郎首相が打ち出した「行革」で、縦割りを排除してスリム化を図る狙いが込められた。ただ、厚生労働省(厚生省+労働省)や国土交通省(建設省+運輸省+国土庁など)、総務省(自治省+郵政省+総務庁)といった巨大官庁が生まれ、さらなる「省庁再々編論」は今なおくすぶっている。
復興庁は復興庁設置法により、「平成33(2021)年3月31日までに廃止する」と定められた時限的な組織となっている。このため、大災害への対応を強化するべく、復興庁を改組して防災省(庁)をつくるべきだとの構想も出ている。
日本経済新聞は8月3日、厚生労働省の分割案が与党内で浮上していることに加え、徴税と年金保険料の徴収を一元化する「歳入庁」構想について財務省が警戒していると報じた。
(弁護士ドットコムニュース)