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菅田将暉の“共感力”と山田孝之の“優しさ” 『dele』互いを補完し合う最高のバディに

2018年09月01日 14:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 金曜ナイトドラマ『dele』(テレビ朝日系)の第6話が8月31日に放送された。「依頼人が遺したデジタルデバイスのデータを秘密裏に消去する」仕事を請け負う主人公・坂上圭司(山田孝之)と真柴祐太郎(菅田将暉)は、依頼を通じて、亡くなった人やその周辺にいる人々の人生に触れる。1話完結の物語は、依頼人一人ひとりの人生、それに触れる圭司と祐太郎の姿を丁寧に描き出す。


参考:柴咲コウと橋本愛の切なく愛おしい愛の形 『dele』第5話は“生”を感じさせる回に


 第6話では、菅田演じる祐太郎の共鳴力が存分に活かされ、そんな祐太郎をサポートする圭司の優しさが伝わる回であった。彼らがバディとして、互いを強く信頼していることが伝わってくる。


 家出していた少女・石森純子(山田愛奈)が、雪に覆われ眠るようにして死んでいるのが見つかった。警察は自殺だと判断。しかし、彼女の両親は自殺原因を探るために、圭司の姉である弁護士・坂上舞(麻生久美子)のもとへやってくる。両親は、娘の日記から自殺原因を探りたいと、パソコンのパスワード解除を依頼した。舞によって引き合わされた圭司と祐太郎は、真相を突き止めるべく、亡くなった少女の人生に触れていく。


 祐太郎は、他人の感情を汲み取るのが早い。純子の同級生と接触した時、純子がスマホから削除した仲睦まじい写真とは違う、不穏な空気を即座に察した。いじめっ子が纏うような空気を察した祐太郎は、真相解明のために同級生のスマホを入手する。そこには案の定、いじめ現場を映す動画が保存されていた。


 この動画を見ているとき、祐太郎の表情は重く、悲しい。いじめを受けている少女のように、助けを求めるような表情が印象的だ。いじめの様子から「このままだとやばい気がする」と話す祐太郎は、圭司と共にいじめを受けていた少女を訪ねる。そこには屋上から飛び降りようとする彼女の姿があった。祐太郎が少女の心の傷に共鳴しなければ、彼女は命を落としていたかもしれない。


 他人に共鳴する祐太郎を、菅田はしなやかに演じる。祐太郎を演じる菅田の表情は素直で、他人の感情によってコロコロ変わるのが魅力的だ。相手が高圧的な態度を取れば、その態度に対応する。相手が助けを求めるような心情を見せれば、ぽっかり空いた穴を埋めるようにそっと寄り添う。相手が見せる感情に“共鳴”した表情を見せる菅田は、軽やかでいて頼もしい。


 いじめの主犯格にいた純子の同級生と接したときも、はじめは厳しい態度を見せたが、彼女自身が純子の死に傷ついていることを理解すると、最後には彼女を支えるような声をかけた。そんな祐太郎に彼女も安堵したのか、涙ながらに「純子の死の真相が分かったら教えてほしい」と告げた。いじめた側にもいじめられた側にも、親身になって話を聞き出すことができるのは、祐太郎しかいない。祐太郎がどんな相手にも素直に接するからこそ、彼女たちが抱える闇や傷を、浮き彫りにすることができるのだ。


 圭司は、そんな祐太郎を表情には出さないものの信頼しているようだ。祐太郎が困ることのないよう、さまざまな場面で彼を支えている。真相を探るため、学校に向かおうとする祐太郎に、言葉では「住所知らないだろ」と突っぱねながらも、携帯を通じて住所を教える。同級生の名前を調べ忘れた祐太郎のために、先回りして学校のホームページをハッキングし、名前を突き止める。表情は常に硬く、眉間にしわを寄せながら話す圭司だが、第1話で見せた他人を遠退けるような雰囲気は見当たらない。自分にはない能力をもった祐太郎を信頼し、彼が行動しやすいようにサポートしている印象だ。


 圭司のこの優しさは、彼の根底の部分を表している。祐太郎と共にいじめられていた少女の元へ訪れたとき、「生きるのが怖い」と自殺しようとした彼女を思い留まらせたのは、祐太郎の言葉ではなく圭司の言葉だった。1度屋上から落ちかけたときに手すりを掴んだ彼女の行動を、いつものように淡々と指摘する圭司だったが、「やり残したことがあるからだろ」「死ぬのはそれからでもいい(やり残したことをやったあとでもいい)」と彼女に訴える。


「とりあえず俺たちが解決してやるから」「俺たちを信じろ」


 この台詞は、彼女の心に寄り添った圭司の優しさに溢れる台詞だ。


 それと同時に、圭司がはっきりと「俺たち」と告げたことで、祐太郎のことをバディとして信頼していることを表す台詞でもある。圭司がこの言葉を発したあと、祐太郎は圭司のほうへ振り向く。これは圭司が少女を引き止めたことを驚いているだけでなく、彼の自分への信頼を感じとったからなのではないだろうか。


 結局、死の真相は自殺だった。友人や家族の裏の顔を知り、傷つき、自殺を選んだ純子の意思を汲み取った圭司と祐太郎は、復元したデータを削除することに決める。純子の周辺に漂っていた闇のすべてが解決したわけではないが、故人の意思を尊重し“削除”を選ぶ描写には、胸に刺さるものがあった。(片山香帆)