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山本舞香の涙が重要な意味に 『チアダン』土屋太鳳らに待ち受ける“離れ離れの未来”

2018年09月01日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 進路希望調査というのは(とくに地方を舞台にした)ハイスクール劇には定番中の定番ともいえる題材。地元に残る者と、夢を追って東京に出る者。わかば(土屋太鳳)ら「Rockets」の3年生たちにとって、迫りくる大会が終わればそのあとに待っているのは卒業と、チームが離れ離れになっていく未来というわけだ。


参考:山本舞香、演じる役柄に共通点? 『チア☆ダン』や『SUNNY 強い気持ち・強い愛』で見せる“男気”


 そんな中でひとりだけきちんと進路を考えていなかったわかばが、進路希望調査票に「全米制覇」と書くという、このドラマらしいユニークさで神妙なムードを打ち消すところから始まった、8月31日放送のTBS系金曜ドラマ『チア☆ダン』第8話。(この進路希望調査票のくだりは、『ちはやふる』で綾瀬千早が「クイーン」と書くシーンを想起してしまった)


 しかしながら、今回のエピソードのメインとなるプロットは、なかなか突拍子もない展開だったことは否定できない。アメリカ留学を志望していた汐里(石井杏奈)が父親から連絡を受けて訪れた東京で、絡まれている女子高生を助けるのだが、次のシーンで汐里は女子高生に絡んでいた男たちに追いかけられ、かと思いきや翌日学校に警察から連絡が。さらにネット上には汐里が暴行事件を起こしたと実名と学校名に写真まで付いて炎上し、弁護士と名乗る男から電話まで掛かってくる。


 いくらネット社会といえども、そしていくら物語が2019年夏という1年後の未来を描いているからといっても、この展開がかもし出す圧倒的な違和感はぬぐいきれない。結局汐里はRocketsに迷惑をかけられないと退部を決意し、事の真相を何も話さないまま去ろうとするのである。これまで比較的王道な描き方で廃部の危機や敵対する部活との関係、顧問の不在を描いてきたこのドラマだけに、このようなピンチが訪れることは想定できるものの、その描き方の甘さはらしくない。


 そして汐里は、例によって退部しないように説得するRocketsのメンバーたちに語り始める。絡まれていた女子高生が元いた学校の後輩であったこと、男たちを振り払おうとして軽い怪我をさせたことなど、物語の前半で生じた違和感を解決させるものではなく、かえって空回りが生じる。しかも、被害届が出された“警察沙汰”の案件でありながら、汐里の親が関与せずに桜沢教頭(木下ほうか)が立ち会う不思議な展開。


 そんな急展開に引っ張られたためにうっかり見落とてしまいかけていたのが、進路希望調査の面談で父親と喧嘩した渚(朝比奈彩)が家出してわかばの家に転がり込んでくるというサイドエピソードも重ねられていた。こちらも何だか釈然としないまとまり方をしてしまっていたのだが、総じて今回のエピソードのテーマとなるのは「身近な人に自分の気持ちを伝える」ということに他ならないわけだ。


 わかばや汐里、渚によって描かれるそれぞれの父親との関係。そしてRocketsのメンバー同士の関係。まさに部室の壁に描かれ、終盤で流れた「You’ll Necver Walk Alone」(リヴァプールFCよりも、ヘンリー・キングの『回転木馬』のイメージの方が強いのだが)という言葉と共にあるものだ。その点では、中学時代の出来事で人間不信に陥りながら、汐里のおかげで心を開くようになった茉希(山本舞香)が涙を流すシーンは、とても重要な意味を持つといえよう。(久保田和馬)