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『チア☆ダン』でキーパーソンを好演! E-girls 石井杏奈の“表現者”としての絶妙なバランス

2018年08月31日 16:42  リアルサウンド

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 少女たちの熱い姿がお茶の間を賑わせている『チア☆ダン』(TBS系)で、少々おてんばながらもなんとも憎めないリーダーシップを発揮している石井杏奈。E-girlsのパフォーマーとしての活動を軸に持つ彼女だが、そこでの経験は本作でも活きているのではないだろうか。


参考:目標のための犠牲は必要なのか? 土屋太鳳主演『チア☆ダン』第7話には深く考えさせられる


 本作で石井が演じるのは、東京から福井の高校に転校してきた桐生汐里というキャラクター。土屋太鳳演じる主人公・藤谷わかばにチアダンス部を作ろうと持ちかけたのは彼女であり、つまりはこの、“少女たちがチアダンスで全米制覇を目指す”という壮大な物語のきっかけをつくった人物なのである。


 しかしこの汐里というキャラクターは猪突猛進型で、たまに空気も読めない。だが彼女のはつらつとした姿は周囲を翻弄しながらも、愛嬌たっぷりの性格と、演じる石井の笑顔とがマッチして愛すべき存在となっている。毎話少女たちのたくさんの笑顔が咲き乱れる本作だが、石井もみなに引けを取らない笑顔で、放送日である金曜の夜に華を添えているのだ。


 そんな石井は小学2年生の頃よりダンスをはじめ、14歳の頃よりE-girlsのメンバーとして活動。現在20歳である彼女は、人生の半分以上をダンスとともに歩んできた。11人の新体制となったグループ内では、メンバーの武部柚那とそろって最年少。おっとりとした性格が持ち味で、グループ内では妹キャラ的な立ち位置だ。


 E-girlsといえば、メンバーそれぞれが自身の個性や特性を活かし、ダンスに軸を置きつつも各々のフィールドで活躍中だ。スタイルの良さを活かし、モデルとしても活躍する佐藤晴美や楓。武部とともに、子ども向けバラエティ『ガチャムク』(BSフジ)に出演中の須田アンナ、さらにはボーカリストとして着実に歩を進める鷲尾伶菜など。その中で石井が歩むのは女優の道。パフォーマーとして、楽曲ごとのカラーにすっと染まることのできる彼女の勘の良さは、女優業でも感じられる。


 もちろん石井の活動の軸もE-girlsにあるのだが、女優としての活動は2012年からで、連続ドラマ『GTO』(2012・フジテレビ系)や、映画『だいじょうぶ3組』(2013)などで、早くから頭角を現しはじめていた。そんな彼女が大きく存在感を示し始めたのは、やはり『前篇・事件』『後篇・裁判』と二部に渡って製作された大作映画『ソロモンの偽証』(2015)だろうか。本作での石井は、いつもの印象的な笑顔を抑えて悲痛な叫びを披露し、舞台となる閉鎖的な中学校の暗部を力強く体現した。物語のキーパーソンの1人であった彼女だが、ここで見せた演技の求心力に、同年代の役者陣の中で石井が頭ひとつ抜けた存在なのだという印象を持たれた方も多いのではないかと思う。そこには紛れもなく、女優の誕生の瞬間があった。


 ここ最近の出演作でも、『たたら侍』(2017)や『心が叫びたがってるんだ。』(2017)などで物語の重要なポジションを担い、若手俳優陣やベテラン演技者陣の中で、名実ともに止まらぬ勢いで伸びている印象だ。まだ20歳になったばかりで可能性は無限大。それはいくつも、どこまでも広がっている。


 当サイトの過去のインタビュー(参考:E-girls・石井杏奈が語る、女優とパフォーマーの両立 「どちらも挑戦するたびに発見と勉強がある」)内で、「女優のときと、E-girlsのパフォーマーのときと、表現に対する考え方は変わるものですか?」という質問に対して石井は、「……お芝居をするときは、監督がおっしゃってくださったことを守りつつ、期待された以上を返したいって思っているかもしれません。(中略)自分がいつも感じている部分を反映させています。それに対して、E-girlsのときはみんなで合わせて一つのものを形にすることを一番に考えていますね。自分の感情を出していくというよりは、E-girlsという完成形を目指していく感じです。どちらも挑戦するたびに発見と勉強があるので、私にとっては両方とも大事なんだと思います」と答えている。


 ダンス、演技、チームワーク……今作『チア☆ダン』では、まさにこの“表現者”としてのバランスが絶妙に取れているのではないだろうか。そしてここで得たバランス感覚と、表現者としての新たな学びと発見は、ひるがえってE-girlsの活動でも活きるはずである。本作での石井杏奈は、物語の、そして“作品そのもの”の、原動力になっている。お茶の間にも広がる彼女の魅力と活躍は、E-girlsの今後の展望にもつながることとなりそうだ。(折田侑駿)