2018年08月30日 17:52 弁護士ドットコム
知的財産戦略本部の「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」(タスクフォース)の第6回会合が8月30日、東京都内で開かれ、事務局から「中間まとめ骨子案」が公表された。
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骨子案は、悪質で大規模な海賊版サイトの出現によって、マンガ・アニメを中心としたコンテンツ産業の成長機会が大幅に奪われ、大きな危機に直面していると指摘したうえで、一つの対策だけでなく、複数の手法を組み合わせた継続的な取り組みが必要だとしている。
正規版の流通促進や著作権教育・意識啓発などを盛り込んでいる。一方で、これまで委員の間で賛否が分かれ、激論がかわされてきたブロッキング(アクセス遮断)については、立法事実や憲法との関係についての議論を踏まえたうえで、引きつづき論点を整理することになった。
中村伊知哉・共同座長は、会合の終わりに「ブロッキングについては、内容や条件次第で法制度をつくるべきだという意見もあれば、ありうる・ありえないという意見もあった。私は、ブロッキングありきではないといいつつも、排除でもないとしてきた。合憲なのかどうか、技術的に可能かどうか、政策としてどうか、ということを深掘りする必要がある」と述べた。
村井純・共同座長もつづけて「ブロッキングが良い悪いという議論になりがちだが、ブロッキングありきではないというところから出発している。一方で、出版社もたくさん努力をして、それでも打撃が大きく、それをどう解決するのかという話だ。ISPとコンテンツ業界を担う人たちが力をあわせて、技術的・法制度的にすすめられることはなにか、洗い出す必要がある」と話した。
(1)正規版の流通促進
マンガ・アニメ分野のコンテンツが、複数のプラットフォームに分かれて流通している側面や、中長期的に厳しい国際競争にさられるおそれがある。正規版サービスを迅速に構築することや、マンガ・アニメが普及していない途上国において、海賊版対策と啓発活動を展開することが必要だ。
(2)海賊版サイトの検索結果からの削除・表示抑制
GoogleがDMCA(米デジタルミレニアム著作権法)にもとづいて、検索結果から侵害ページを削除するシステムを構築している。一定程度、反映しているが、一方で、大量の削除要請を実施したにもかかわらず、海賊版サイトのトップページ削除や検索順位降格が実施されなかったという指摘もある。
(3)著作権教育・意識啓発
文化庁は、小中高の恐縮員向けの著作権講習会や、生徒・教員向けの教材作成、啓発ポスターの広報活動を実施しており、今後もこうした活動の継続・強化に期待する。また、民間における著作権の理解促進のための呼びかけについて、さらなる活動の展開に期待する。
(4)海賊版サイトへの広告出稿抑制
正当なビジネスをおこなう企業の広告が意に反して、違法・不当なサイトに掲載されることが国際問題になっており、これまで自主的な取り組みがおこなわれている。広告三団体(JAA・JAAA・JIAA)に海賊版サイトのリストが共有されて、定期協議の枠組みもはじまった。JIAAは専門委員会で、広告掲載先選定にあたっての業界自主ガイドラインの検討をすすめる。
(5)侵害コンテンツの検知システムの確立
どのサイトが海賊版サイトなのか、ステークホルダーが認識を共有するため、海賊版サイトの認定・リスト管理のための権利者・ISP事業者・広告代理店・技術専門家でつくる組織が必要だ。そのリストをもとに、検索結果からの削除・表示抑制の要請、広告団体・広告会社への出稿の要請、ネット関連事業者・金融機関などへサービス停止要請を実施する。
(6)国際連携・国際執行の強化
国外のCDN事業者への差止請求について、試行的に訴訟をおこなうべきという指摘や、プロバイダ責任制限法にもとづく発信者情報開示請求について、開示情報の対象となる情報の範囲の見直しの可能性についての指摘があり、国際協力について今後もすすめる。
(7)リーチサイト規制
海賊版コンテンツのリーチサイトに対する法規制について、次の通常国会に著作権法改正法案の提出をめざして、文化庁文化審議会著作権分科会で審議する。
(8)アクセス制限に係る措置
「アクセス警告方式」(編集部注:https://www.bengo4.com/internet/n_8424/)による海賊版サイトへのアクセス制限の提案を受けて、具体的な実施に向けた課題の整理が必要だ。18歳未満の青少年を対象としたフィルタリングについては、改正青少年インターネット環境整備法にもとづいて関係事業者の取り組みをすすめる。
(9)その他の今後の課題
著作権を侵害する静止画のダウンロードの扱い、海賊版サイトへの資金流入の状況を確認できる法制度の整備についても、今後の課題として認識する。
(弁護士ドットコムニュース)