ヨーロッパラウンドを締めくくるF1第14戦イタリアGPは、1週間前に行われたばかり第13戦ベルギーGPと似て、パワーユニット(PU/エンジン)の性能が問われる、いわゆるパワー感度が大きいサーキットだ。
したがって、新しいパワーユニットが導入された2014年以降は、ベルギーGPとイタリアGPの予選を席巻してきたのは、メルセデス勢だった。しかし、今年は少し異なる様相を呈している。
ベルギーGPの予選は、Q3がウエットコンディションとなったためにメルセデスがポールポジションを死守したが、レースではフェラーリのセバスチャン・ベッテルがストレートで豪快にハミルトンをオーバーテイク。ハミルトンも「ストレートでフェラーリの速さについていくことができなかった」と完敗を認めている。
しかし、ベッテルはストレートスピードの差はパワーユニットの性能だけでなかったと言う。
「僕たちは少しウイングを寝かせていた。だから、セクター1とセクター3では僕たちのほうが速かったけど、セクター2は逆にメルセデスのほうが速かった」
なぜ、メルセデスはダウンフォースをつけ気味にしたのか。それは第9戦オーストリアGPのレースでハミルトンがブリスターに悩まされたからだった。ベルギーGPでもレース中にメルセデスはハミルトンとバルテリ・ボッタスの2台がブリスターを発生させていたことを考えると、ストレートスピードを多少犠牲にしてもダウンフォースをつけ気味にしたセッティングは間違っていなかったと言っていいだろう。
■パワーユニットに勝るフェラーリと、マシンコントロールに優れるハミルトン
その点、イタリアGPが行われるモンツァは、スパのセクター2のようなコーナーがほとんどないため、ブリスターを恐れることなく、リヤウイングを寝せることができる。つまり、スパと比べて相対的にメルセデスのストレートスピードが上がる可能性がある。
現在、イギリス・スカイ・スポーツのコメンテーターを務め、世界耐久選手権でトヨタのリザーブ&開発ドライバーとして活躍しているアンソニー・デビッドソンは、「ルイスのモンツァでの成績は驚異的」と、コースとの相性も忘れてはならないという。
勝利数ではハミルトン4勝に対して、ベッテルも3勝を挙げており、大きな差がないように見えるが、デビッドソンは「予選でのパフォーマンスを比較してほしい」と指摘する。
そこで予選の成績を見ると、ベッテルが優勝回数と同じ3回のポールポジションを獲得していたのに対して、ハミルトンはその2倍の6回もポールポジションを獲得。しかも、最近は4年連続でハミルトンの独壇場となっている。いかにハミルトンがレスダウンフォースでのマシンコントロールに優れた技術を持っているかの表れといってもいいだろう。
フェラーリPUのパワーが炸裂するのか? それとも、コースとの相性がいいハミルトンが5連続PPを獲得するのか? いずれにしても、全21戦中、ラップタイムの平均速度が最も高いモンツァを制する者が、2018年のF1界の最速ドライバーとなることは間違いない。