いまだに有用性を疑問視されているコクピット保護デバイス“ハロ”だったが、第13戦ベルギーGP決勝レースの大クラッシュでその有用性が実証された。
スタート直後に起きた今回のクラッシュでは、1コーナーのラ・スルスでルノーのニコ・ヒュルケンベルグがマクラーレンのフェルナンド・アロンソに追突した。その勢いで弾かれたアロンソのマシンが、ザウバーのシャルル・ルクレールの真上を通過。アロンソのマシンの前輪がルクレールのハロに接触しながら飛び越えていったのだ。
仮にハロがなかったとしたら、ルクレールは大けがを負ったか、あるいはもっと悪い結果につながっていた可能性もある。
ルクレールは「衝撃を感じた。後から映像を見たらかなりひどかったね。僕にとって今回の結果はラッキーだったよ」と語る。
「たくさんのメッセージをもらった。僕の母は何度も電話をかけてきたよ。みんなとても心配してくれていた」
図らずもルクレールに被害を与えてしまった当事者であるアロンソは、ハロがドライバーを守ったことについて、ルクレール同様に喜んでいる。
「ハロが装着されていて本当に良かった。映像を見るかぎり、彼の身を守る助けになったと思う」とアロンソは語った。
■今回のクラッシュについて近日中に検証へ
今回のインシデントは、2018年のF1シーズンでハロが導入されて以降、初めてその有用性が実証された事例と言える。同時に、F1のレースディレクターを務めるチャーリー・ホワイティングは、ハロが今回の衝撃にどの程度持ちこたえたのかを近日中に検証するという。
「今のところはっきりしているのは、かなりのタイヤ痕がシャシーにもハロにも残っているということだ」とホワイティング。
「相当強く当たったように見える。このタイヤ痕が実際にはシャルルの頭部についていたかもしれない、と想像するのは難しいことではない。もしハロがなかったとしたら、(ルクレールの頭部に)痕がつかない方がよほど不思議だ」
「ともかくタイヤ痕がシャシーとハロの両方に付いていることは明白だ。我々は多くの写真を撮っている。またFIAの調査員がザウバーに連絡をとって、マシンから取り外したハロとそれを固定するボルトが良い状態のままかどうか、といったことを確認するつもりだ」
「そしてより重要な事として、それらの形状がゆがんだりしていないかどうか確かめたい。今のハロはボルトで固定されているが、もし形が変わっているようなら、そこから何かを学んで次につなげたいと考えている」
今回のクラッシュを見て、その幸運だった結果に対しても感銘を受けたもうひとりの人物が、2016年の世界王者であるニコ・ロズベルグだ。事故直後、ロズベルグは自身のツイッター上にメッセージを投稿した。
「これでハロの有用性に関する議論は終わりだ。ハロは命を救うんだ」