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WEC:“ハイパーカー”の草案作成に関わるトヨタ、2018年11月までの策定に自信

2018年08月28日 15:01  AUTOSPORT web

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東京オートサロン2018に続き同年のル・マンで披露されたGRスーパースポーツコンセプト
WEC世界耐久選手権に2020年に導入予定の『新トップカテゴリー』、通称“ハイパーカー”について、トヨタとアストンマーチンは規則策定のペースは上がっているとコメント。11月に迫った期日までの策定に自信をみせた。

 2018年のル・マン24時間で発表された“ハイパーカー”は、現行のLMP1クラスに代わる形で導入されるWECの最上位クラス。自動車メーカーがハイエンドの市販車と似たデザインを持つプロトタイプカーを製造できる“GTP(GTプロトタイプ)のような”コンセプトだ。

 このハイパーカーでは1シーズンあたりの予算を現行のものより25%少ない2500~3000万ユーロ(約32億5000万~38億9000万円)に制限されるほか、パワートレインにはよりローコストなハイブリッドシステムが搭載される予定だ。

 現在、ワーキンググループでは12月の世界モータースポーツ評議会(WMSC)で承認を受けるためにレギュレーションの草案作成が進められており、その期限は11月に迫っている。

 ワーキンググループに参加しているTOYOTA GAZOO Racingのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは「我々は準備を整えているところだ」と述べた。

「今年の終わりまでに草案を提出しなければならならず、残された時間は短い。それまでに提出できるよう準備を進めているところだ。8月上旬の木曜日にはミーティングを行なったし、その頻度も高まっている。(期日までに)規定は完成するだろう」

■トヨタとアストンマーチン以外のメーカーの関心度は不透明のまま

 アストンマーチン・レーシング(AMR)のデビッド・キング代表によれば、アストンマーチンは規定の策定プロセスにおいて「熱意ある参加者」だという。

「我々はこのスポーツのために正しいことを行うため全力で、熱心に取り組んでいる」とキング代表。

「もし誰もが満足できる規定を全体で作り上げることができたら、次のステップとしてどこに予算をつぎ込むのか、どことパートナーになるのかなど、さまざまなことについて決断していくことになる」

 しかし、キング代表は2020/21年のWEC参戦に向けて準備を整えているメーカーにとっては、準備期間が限られていることが大きな課題となりうることも認めている。

「私が一番懸念していることは、すべてを極めて迅速に決めなければならないことだ。(新トップカテゴリーに参戦を望む)メーカーは(2年後の)2020年9月の開幕戦グリッドにマシンを並べるわけだからね」

「(新規定導入で)できることの余地が広がっていて、予算が降りていないのにチームはレーシングマシンのデザインをスタートさせる準備を整えているような状況だ」

 また、キング代表はトヨタとアストンマーチンはワーキンググループ・ミーティングにレギュラーメンバーとして参加しているため、現段階でそのほかのメーカーがどれだけ関心を持っているのかを推し量るのは難しいとも指摘する。

「(他のメーカーは)規定について熱心だったり、そうでなかったり、まるでポーカーをしているかのようだ。(ミーティングに)参加するものもいれば、参加しないメンバーもいる」とキング代表。

 トヨタのバセロンも「(ミーティングには)来る者もいれば、去っていく者もいる。(関心を測るのは)現時点では難しい状況だ」とキング代表に同調する。

「ミーティングでは毎回、大きなテーブルを囲み、多くの参加者がそのまわりで議論している。これは素晴らしいことで、誰もが関心は持っているのだ。基本的にこれらの新規定は魅力あるものだ。他のメーカーが魅力をしっかりと理解するには、少し時間が掛かるかもしれないと考えている」

“ハイパーカー”規定と似ているDPi規定を採用している北米のIMSAと共通基盤を形成するかは流動的だが、ACOフランス西部自動車クラブは現段階でフォードから2020/21年のWECに参戦する確約を得られなかったようだ。

 現在はLM-GTEプロクラスを戦っているフォードは、今後IMSAのDPiクラスへの関与を強める予定で、ACOとIMSAが共通レギュレーションを策定できなければ、WECの“ハイパーカー”へエントリーすることはないと表明している。

 その一方、同じくLM-GTEを戦っているフェラーリは“ハイパーカー”開発に関心を強めているとされている。

■トヨタのWEC参戦プランのアナウンスは2019年初旬か

 現時点でLMP1で唯一のメーカーワークスチームとなっているトヨタ。バセロンは2019年初旬にはWEC継続参戦についてアナウンスされるとの見方を示した。

 現在、トヨタが参戦を表明しているのは2018/19年シーズン末までとなっており、その後の活動については明言されていない。ただし、2019年以降も現行のTS050ハイブリッドで参戦を継続するとの見方が濃厚だ。

「2019年の初めには我々の参戦について最新の発表ができるだろうと思う」とバセロン。

「通常、我々は(一度に)複数シーズンの契約はしない。1年ごとにシーズンの契約をするのだ。それが原則だ」

 また、バセロンはトヨタが2019/20年のWECに参戦したとしても、その翌シーズンに導入される“ハイパーカー”に参戦することが確定するわけではないとも述べている。

「(“ハイパーカー”クラスに参戦するかは)状況次第だ」とバセロン。

「来シーズンについては参戦可能なマシンがあるから参戦し、その後は(活動を)やめることもあり得る。どんなことも起こり得るんだ」

 また、AMRのキング代表は“ハイパーカー”よりも現時点ではGTプログラムにもっとも重きを置いていると語るが、2020年からの参戦が取り沙汰されているDTMドイツツーリングカー選手権については明言を避けている。

 キング代表は「我々がメインに取り組みを続けるのはGTレースであり、我々が言ったように、少なくとも次の4年間はそこに集中する」とコメント。

「フェラーリとポルシェ、そしてアストンマーチンがWECのGTクラス常連であることを誇りに思う。この状況を継続したい」

「ほかの活動については評価から始めなければならない。我々のブランドに何をもたらしてくれるのか、我々の製品にどのように役立ち、どうPRしてくれるのかをね」

「今後数カ月で我々が進むべき道が判明するだろう」