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濃度が増す2強対決と、新生フォース・インディア誕生で構図が一変したBリーグ争い【今宮純のF1ベルギーGP決勝分析】

2018年08月28日 13:11  AUTOSPORT web

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2018年F1第13戦ベルギーGP セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
2018年F1第13戦ベルギーGP決勝は、フェラーリのセバスチャン・ベッテルがオープニングラップの勝負を制し逆転優勝。メルセデスのルイス・ハミルトンとの差を17点まで縮めることに成功した。F1ジャーナリストの今宮純氏がベルギーGPを振り返り、その深層に迫る──。

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 ほぼ1カ月ぶりの夏休み明けゲーム、F1第13戦ベルギーGPをひとことで言えば「濃厚な後半戦・リスタート」だった。1コーナー(ラ・スルス)と5コーナー(レ・コンブ)でいきなり起きた、熾烈なブレーキング・シーン。ベルギーGP決勝は、オープニングラップが勝負の行方を決めた。

 カオス状態になった1コーナー、18番手ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)がまっすぐフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)に突っ込んだ。


 前にマシンがいたわけではない。完全に彼は最初のブレーキング・ポイントを誤った。ここはやや上りになっているスパの“最低速コーナー”、ダウンフォースは弱まる。4輪ロックアップ、猛烈なタイヤ白煙を上げながら追突。

 ブレーキ関係のトラブルかと思われたがそうではなかった。最大被害者アロンソは現場でヒュルケンベルグを叱責しなかった。その行動から、このスポーツにもう“こだわり”はないのだろうと感じさせた。ちょっと前なら烈火のごとく怒りを爆発したアロンソなのに……。

 オープニングラップの300メートルで後半初戦を終えたアロンソもシャルル・ルクレール(ザウバー)にも外傷はなかったがマシンは大破。PU(パワーユニット/エンジン)やギヤボックスにダメージが及んでいないだろうか……今週は連戦のイタリアGPである。

 ラ・スルスからオー・ルージュに30mも下り、そこからケメル・ストレート1150mを加速し70mをいっきに駆け上る。この約25秒間、およそ2kmが“ジェットコースター”全開区間だ。


 さあレ・コンブ進入、4台が一瞬並んだ。インからエステバン・オコン(フォース・インディア)、ベッテル、ハミルトン、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)。誰かが引かないと“カオス状態”になる……。

「初めてトップに出られるぞ」、オコンはしかしその欲望を抑えて引いた(これも勇気だ)。ブレーキング・ポイントを譲らず奥まで鋭く刺したのはベッテル、強い必勝の意欲がこもっていた。24点差を覆すためのブレーキング、ここで逆転するイメージができていたのだろう。

 ハミルトンはフェラーリに従う動きで、この瞬間を今日の勝負どころとはしなかった(ように感じた)。ペレスは違った。いちばんアウトにいた彼はベッテルとハミルトンの動きを見きわめ、インのオコンが引いたから“3番手”ポジションで切り抜ける。4人の攻防は“カオス状態”にならず、スパならではの極上の『スリル』を観客とファンに見せたのだった。

■F1第12戦までのコンストラクターズポイントを失ったフォース・インディアが再出発


 異例な政治的配慮により、シーズン途中に新チームが生まれることが木曜に正式に決まった。英国ベースのエントリー名称『レーシングポイント・チーム』となり、シャシー名称としてフォース・インディアはそのままに。その引き換えに彼らは開幕戦から第12戦まで『フォース・インディアF1チーム』で得ていたコンストラクターズポイントの合計59点を失った。

 これでBリーグ(トップ3チーム以外の中団7チームの争いの通称)の構図は一変、この新チームは最下位ゼロから後半戦に挑むことになった。雨が絡んだ予選Q3を巧妙に戦った彼らはグリッド2列目を占め、ライバルチームを抑え込む。すばらしいファイトだった。

「フォース・インディアには勝てそうにない。直線がすごく速い。我々はしっかり9、10位のダブル入賞をめざそう」と予選5、9番手のハースはBリーグの“セカンド・ポジション”を現実目標とした。16点リードのルノーは後方グリッドに沈み、7点差に接近していたフォース・インディアは戦績上では消えてなくなった。ハースのロマン・グロージャンとケビン・マグヌッセンはやるべきことをちゃんと理解していた。


 F1第4戦アゼルバイジャンGPの3位に次ぐ、ベルギーGPで5位を獲得したペレス、2018年シーズン3度目の6位入賞を果たしたオコン。ザウバー19点に肉薄する合計18点を獲得、名ばかりの新チームが“デビュー戦”にダブル入賞。ちなみに前半の59点と合わせればフォース・インディアは77点、ハース76点を超えるがこれはあくまで“幻の加算”でしかない……。

 この結果、Bリーグ順位はルノー82点、ハース76点、マクラーレン52点、トロロッソ30点、ザウバー19点、レーシング・ポイント18点、ウイリアムズ4点。この7チームはルノー対ハースの接戦両チームと、低迷マクラーレンを追い上げるトロロッソらのグループに二分化されつつある。

 2強対決はハミルトンとベッテル(17点差)、メルセデスとフェラーリ(15点差)、どちらも縮まった。Bリーグはそれ以上に逆転の可能性が毎戦ある。後半戦はレースBYレースに“濃度”が増す、それが開幕スパからよく分かった。