中小企業の働き方改革をサポートする「あしたのチーム」は8月22日、「企業の残業削減」に関するアンケート結果を発表した。調査は今年5月に、従業員数10人以上300人未満の会社の経営者および従業員、男女20歳~69歳を対象にインターネットで実施し、会社経営者100人、従業員100人計200人から回答を得た。
勤務先で残業をしているか聞くと、「恒常的にしている」(29.5%)、「時々している」(43.5%)と、73%の企業で残業をしていることが明らかになった。経営者と従業員で残業をしているとの回答割合は、ほぼ同じだった。
働き方改革法案では残業時間の上限を「月45時間以内、年360時間以内」としている。今回の調査で、残業を「恒常的にしている」「時々している」と答えた従業員に月の平均的な残業時間を聞くと、「10時間~20時間未満」「20時間~30時間未満」(同率26.0%)が最も多かったが、「30時間~40時間未満」(9.6%)、「40時間~50時間未満」(6.8%)、「60時間以上」(6.8%)という回答も。かなりの数の人が基準に抵触するおそれがありそうだ。
従業員の過半数は、残業削減の取り組みに不満
勤務先で残業削減取り組みを実施しているか聞くと、全体では「取り組みを行っている」は38.5%に留まった。また経営者では「取り組みを行っている」が43%だったのに対し、従業員では34%と9ポイントも開きがあった。
勤務先が残業削減の取り組みを行っていると答えた経営者に、従業員が取り組みに満足しているか聞くと、「満足していると思う」の割合が86%に上った。一方で、従業員に聞くと、「満足している」は約半分の44.1%で、経営者と従業員の意識の乖離があることが明らかになった。
満足していない理由として、
「あまり減らしてもらっても給料が減るだけ」(61歳女性/従業員)
「受け入れられる仕事量が減り、会社全体の売り上げが伸ばせない」(61歳男性/従業員)
といった声が寄せられた。
「残業削減に効果的だと思う取り組み」を聞くと、全体では1位「業務の平準化」(50.6%)、2位「ノー残業デーの設定」(33.8%)、3位「フレックスタイムの導入」(19.5%)となった。現在行っている取り組みと同じ順位となっており、現行の取り組みに効果を感じているようだ。
一方で、経営者と従業員で「効果があると思う取り組み」の順位が異なった。経営者は1位「業務の平準化」(62.8%)、2位「ノー残業デーの設定」(30.2%)、3位「フレックスタイムの導入」(20.9%)だが、従業員は1位「ノー残業デーの設定」(38.2%)、2位「業務の平準化」(35.3%)、3位「長時間の残業を規制するルールを新たに作る」(20.6%)だった。従業員は残業削減の為の新たなルール作りが効果的だと思っていることがうかがえる。
「残業を減らしても生産性が高ければ人事評価に反映してほしい」との声も
残業削減の取り組みを行っている企業の従業員に、収入に変化があったか聞くと、「収入は変わらない」(58.8%)が最多で、次いで「収入が減った」(29.4%)だった。
従業員に、人事評価において残業削減がどのように評価されるべきか聞くと、「残業時間に関わりなく生産性のみで評価されるべき」(67.6%)で最も多く、次いで「残業削減に応じて評価されるべき」(52.9%)だった。約7割の従業員が短時間でも業務量や質が変わらなければ、人事評価に反映してほしいと望んでいることが推察できる。
直近の業績別に、残業削減の取り組みをしているかを聞くと、「増益(増益予想)」と回答した企業の60.5%が「取り組みを行っている」と回答し、「横ばい(横ばい予想)」(33.6%)、「減益(減益予想)」(28.6%)の企業よりも残業削減に取り組んでいる割合が26.9ポイント以上、上回っていることがわかった。