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原田知世が振り返る、『半分、青い。』和子役へのアプローチ 「新しい扉を開けたような感覚」

2018年08月28日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『半分、青い。』(NHK総合)放送開始当初より登場し、律(佐藤健)の母親として、幼少期から鈴愛(永野芽郁)を見守る存在として、そして晴(松雪泰子)の親友として、作品に暖かさをもたらしてきた、原田知世演じる“和子さん”こと萩尾和子。律と鈴愛にとってかけがえのない存在である和子は、第124話で天国へと旅立った。


 リアルサウンド映画部では、和子さんを演じた原田知世にインタビュー。夫を演じた谷原章介、息子を演じた佐藤健と築いた“萩尾家”の関係性から、和子役への思いまでじっくりと語ってもらった。


参考:最後の呼び方は「お母さん」 『半分、青い。』律と和子、そして弥一が築いた“萩尾家の軌跡”を辿る


●和子さんは少女のままお母さんになったような人


ーー脚本の北川悦吏子さんは、原田さんありきで和子さんというキャラクターを作ったと話していました。原田さんはどのように和子さんを捉えていますか?


原田知世(以下、原田):とても楽しみながら演じさせていただきました。北川さんに当て書きをしていただくのは3作目となりますが、今回も台本を読むのがとても楽しみでした。和子さんを演じることでまた新しいチャレンジをさせていただけた気がしています。和子さんの登場シーンでは出産直前にもかかわらず、病院でミステリー小説を読んでいました。その内容がすごく怖いお話なのに、とてもうれしそうに読んでいる。シーンとしてはわずかですが、あの描写だけで、和子さんがユニークな女性であることが想像できました。ほかの登場人物にも言えることですが、北川悦吏子さんは短い尺の中でもそれぞれの個性を生かしながら、生き生きと描いていらっしゃると思います。


ーー和子さんは年齢を重ねてもキュートな魅力はずっと変わりませんでした。金八先生をはじめとした和子さんの「モノマネ」を楽しみにしていた視聴者も多かったように思います。


原田:和子さんはピアノを弾いたり、お菓子を焼いたり、とても上品な人なんですけど 楽しいことが好きで、日頃からきっとテレビを観ながら独自にモノマネも研究していたんでしょうね。夫の弥一さん(谷原章介)と息子の律(佐藤健)に、「ねえ、ねえ」って披露している姿が思い浮かびました。それにしても、金八先生のモノマネはかなりハードルが高くて、台本を読んだときから1番悩みの種だったんです。でも、実際に演じてみたら楽しくできました(笑)。


ーー和子さんから見た律はどんな息子でしょうか?


原田:和子さんがふわふわしていて夢見がち、少女のままお母さんになったような人なので、律は幼少期から周りのことを優しく見つめることができる性格になったんじゃないか と思います。ご一緒していて、佐藤健さん自身も年齢よりも少し、精神的な部分が成熟している人のように感じました。相手の心を静かに見つめているような眼差しがとても印象的で、何も語らなくても繊細さや優しさがその瞳から伝わってきます。それが律であり佐藤健さん自身の魅力のように感じています。


ーー幼少期から鈴愛を見てきた和子さんにとっては、律は鈴愛と幸せになってほしいという思いもあったように思います。


原田:幼なじみの鈴愛ちゃんの成長も温かく見守ってきた和子さんですので、彼女のことを娘のように感じていたと思います。幼い頃から繊細でどこか不器用な息子・律に自信をくれたのが鈴愛ちゃんで、律も鈴愛ちゃんの気持ちを、もしかしたら本人以上に理解していた。性格は全く違いますが、2人は目に見えない強い絆で繋がってました。でも、お互い思いはありながらもタイミングがずれてしまったのでしょうね。そのことについて、和子さんが語ることはありませんでしたが、和子さんにとってやはり鈴愛ちゃんは特別な存在だったと思います。一方で、律を支えてくれているより子さん(石橋静河)を大事にする気持ちも和子さんの心にはあったと思います。


●和子さんを演じることは、新しい扉を開けるような感覚でした


ーー律を演じる佐藤さんとのシーンで最も印象的だったのは?


原田:岐阜犬を通して律と話すシーンです。セットの関係で、自宅にいる和子さんを先に撮影し、後日、センキチカフェにいる律の芝居を別撮りする予定でした。でも、大事なシーンなので、と健さんが深夜まで残って私のお芝居に付き合ってくださったんです。本番と同じテンションで芝居していただいた健さんに、感謝の気持ちでいっぱいになりました。あのシーンで、律が和子さんに言った「おかあさん」という声が、今でも深く心に残っています。


ーー一方、最後まで和子を支え続けたのが夫の弥一さんです。初登場シーンから2人が並び立つ萩尾家の雰囲気がとても素敵でした。


原田:弥一さんがいたから和子さんが成立したと思います。萩尾写真館の紹介シーンはとても印象に残っています。写真館の中で2人で並んで「いらっしゃいませ」と一言だけ言う短いシーンでした。隣に立つ弥一さんの声とたたずまいがとてもやわらかく穏やかで、その1カットだけで萩尾家や夫婦の空気感が見えた気がしました。谷原さんと共演するのは本作が2作目になるのですが、本当に素敵な方で、谷原さんがいらしてくれたおかげで現場でもいつも安心することができました。


ーー病気が進んで行く和子さんを演じられる上で、最も意識した点は?


原田:和子さんは物語の中で、ずっと明るい雰囲気をまとったキャラクターでした。朝の15分という時間の中で、泣かされる部分もあれば最後にクスッとなれる、温かい気持ちになってもらえたらという思いで演じてきました。後半は和子さんらしさを残しつつも、少しずつ身体が弱っていく感じを加えて、そのさじ加減を監督と相談しながら最後のシーンは演じていきました。北川さんが作ってくださった和子さんを演じることは、新しい扉を開けるような感覚でした。一つハードルを超えたような気がしています。


(取材・文=石井達也)