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MotoGPイギリスGP決勝レース中止で焦点となった、シルバーストンの新しい路面と水はけの悪さ

2018年08月27日 18:01  AUTOSPORT web

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MotoGPイギリスGP決勝レースは最後まで開催の可能性が模索された
イギリスのシルバーストンサーキットで開催されていたMotoGP第12戦イギリスGPは、全クラスの決勝レース開催中止という形で幕を下ろした。その背景には、今季から新しくなった路面による水はけの悪さが理由にあった。

 シルバーストンにおけるウエットでの路面状況の悪さについては、すでに予選日から指摘がされていた。このサーキットの路面は、2018年1月に全面再舗装工事が施されたばかりだ。

 予選日午前中に行われたフリー走行3回目ではハーフウエットから次第にドライに乾いていくコンディション。午後に行われたMotoGPクラスのフリー走行4回目ではセッションのほとんどがドライコンディションだったものの、終盤に雨が落ちウエットに変わった。

 このとき、7コーナーで多重クラッシュが発生。転倒しグラベルに倒れていたティト・ラバット(レアーレ・アビンティア・レーシング)に、やはりこのコーナーで転倒したフランコ・モルビデリ(エストレージャ・ガルシア・0.0・マーク・VDS)のバイクが接触するアクシデントが起こり赤旗が提示され、そのままセッションは終了した。

 なお、ラバットは右足の大腿骨、脛骨、腓骨を負傷。25日、搬送先の病院で手術を受けて無事に成功したことが、チームの公式SNSで伝えられている。

 ドライから一転、ウエットになった路面状況とフリー走行4回目のアクシデントにより、予選Q1、Q2ともにセッションの開始時間は遅れた。さらにQ1はウエット、Q2はウエット路面から乾き始めの路面が混在するという困難なコースコンディションのなか、予選セッションが行われる。

 この日の状況について、バレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ・MotoGP)は「アスファルトが新しく、水はけがあまりよくないことが問題なんだ。もし大量の雨が降ったら、水は路面上に残りアクアプレーニング現象が起きてしまうだろう。そうなったら、非常に危険な状態だよ」と予選後に語った。

 また、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)も「明日、フリー走行4回目終盤のようなコンディションだったらレースはできない。それを僕たちはしっかり考えないといけないね。アクアプレーニング現象はとても危険なんだ。(フリー走行4回目では)僕もほとんど転倒しかかっていたし、多くのライダーは多くのライダーが転んでいた」とコメントしている。

 ロッシ、マルケスが懸念していた『アクアプレーニング現象』とは、ハイドロプレーニング現象とも呼ばれる。ウエット路面を走行中のタイヤと路面の間に水のまくができてタイヤがグリップを失い、ハンドルやブレーキによる操作が効かなくなる現象のことを言う。それだけ大量の水がコース上に溜まっており、MotoGPライダーが走行に危険を感じる状況だったということだ。


 決勝日も天候回復が見込めず、こうした水はけの悪い路面状況を受け安全性が考慮された結果、予選終了後には決勝レース開催時刻の変更が決定された。この時点で、MotoGPクラスは現地時間11時30分にスタート時間が繰り上げとなっている。

 迎えた決勝レースのスタート進行時点で天候は雨、路面状況はウエット。レース直前のサイティングラップまではタイムスケジュールに沿って行われたものの、コースを走行したライダーたちが、コース上に水たまりがあること、路面が滑りやすい状況であることを訴えたためにレースディレイとなった。

 その後、何度かセーフティカーがコース状況を確認のために走行を行い、IRTA国際ロードレーシングチームがミーティングを開いてレース開催に向けた調整が行われた。motogp.com日本語サイトによれば、現地時間15時にはセーフティ委員会が行われ、ライダーたちからも意見が集められたという。しかしその結果、安全面を理由に現地時間16時に全クラスのレース開催中止が正式に発表された。

 決勝レースの開催中止にともにない、レースディレクションが共同会見を実施。それぞれの観点から、今回の経緯を説明した。

 IRTA国際ロードレーシングチームのレースディレクター、マイク・ウェブはコース上の安全性が確保できないことが中止の理由だと語った。

「コースは明らかに安全ではない。ライダーたちとの協議の結果、レース開始を遅らせて状況が改善するかを見守ることにした。雨が小降りになっても、まだ安全にレースができる状況ではなかった。したがって、非常に難しく残念なことだったが、開催の中止を決断した」

 また、ウェブは月曜日の代替開催についても言及し、「月曜日に決勝レースの開催を検討した。オーガナイザーと協議した結果、それは可能ではなかった」とmotogp.com日本語サイトのなかで述べている。

 新しく舗装された路面の水はけの悪さが判明したことについては、FIM国際モーターサイクリズム連盟のグランプリセーフティオフィサーであるフランコ・ウンチーニが、2度の視察ではウエットコンディションを確認できなかったこと、原因究明のために今後、6週間にわたる調査を行うことを明らかにした。

 ライダーたちの反応としては、開催中止に賛同する声が多かったようだ。MotoGPのプロモーター、ドルナスポーツのレースディレクションを務めるロリス・カピロッシは参戦ライダーたちから集めた意見について、motogp.com日本語サイトのなかでコメントしている。

「全ライダーが(開催中止について)同意した。我々はシルバーストンでのウエットコンディションに対して経験があり、ウエットレースを何度も実施したが、新しい路面となった今年は、大量の水が路面に溜まり、排水しなかった。サーキットの関係者たちは週末を通じて大変な努力を尽くしたけれど、自然に立ち向かうことはできないんだ」

 いかに最高峰のライディングスキルを持つMotoGPライダーと言えど、自然の驚異にはかなわない。とは言え、今回最大の焦点となったコースの水はけの悪さは人為的なものだ。ウンチーニが語ったように今後は調査、そして改善が求められることになるだろう。