8月の第3週に開催されたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の第4戦カールスクーガにて、2018年の選手権を席巻してきたPWRレーシングのセアト・クプラTCRが規定に反する形状のエキゾーストを使用していた問題で、レースディレクターを務めたボリエ・ブローメンは「改めて(性能上の)アドバンテージがあった」との見解を表明した。
スウェーデンのモータースポーツ連盟であるSBF(スウェディッシュ・モータースポーツ・フェデレーション)が任命し、カールスクーガの週末でレースディレクターを務めたブローメンは、地元の日刊紙であるダーゲンス・ニュヘテルに対し「PWRレーシング・セアト・ディーラーチームの使用していた排気管の形状は、明らかに彼らのマシンに性能上の利点を与えていた」との意見を述べた。
予選で1~3番グリッドを独占し、レース1でダニエル・ハグロフ、フィリップ・モーリンがワン・ツー・フィニッシュ。レース2ではミカエラ-アーリン・コチュリンスキーが、シリーズの歴史上初となる女性ドライバーによる勝利を挙げたかに思われたPWR勢だが、このいずれのリザルトも車両規定違反により霧散。リザルトからの全面除外という後味の悪い結末を迎えていた。
「自分たちが気にいる物だけをつまみ食いするような真似は許されない。我々の世界ではこれは非常に明快な原則で、ホモロゲーションシートに記載された画像を見るだけで、その判断は可能になるんだ」と説明するブローメン。
「規則がどのように解釈されたかを話し合うことは可能だが、彼らが実際に行ったことの結果により、その他のクルマより明らかに高いレベルの性能を発揮していたのは事実なのだ」
この結果、WorldRX世界ラリークロス王者のヨハン・クリストファーソン擁するKMS(クリストファーソン・モータースポーツ)や、大ベテランであるフレデリック・エクブロムが所属する選手権の古豪WCR(ウエスト・コースト・レーシング)らは、シリーズ前半戦のリザルトについても精細な再調査が必要との見方を強めている。
そのKMSが運営するフォルクスワーゲン・ディーラーチーム・バウハウスは、PWRレーシングの使用した排気構成が性能的利点をもたらすかどうかを検証するべく、STCCの次戦に先立ちテストを行うことを提唱している。
■同一パッケージのフォルクスワーゲン陣営「本当に理解できない現象」
チームマネージャーであり、WorldRX王者ヨハンの父でもあるトミー・クリストファーソンは、PWRのセアト・クプラTCRと、自らのチームで使用するフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRに関して次のように説明する。
「双方のマシンはともにセアトのモータースポーツ部門で開発、製造が行われていて、同じエンジン、同じギヤボックス、同じサスペンション構成を持っている。違っているのはエクステリアのデザインだけだ」と、前出の日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルの取材に応えたトミー代表。
「我々はシーズンを戦い進めていくうちに、コーナーの脱出で不利な立場に立たされていることに気づいた。コーナーごとに平均して半車身ほど引き離されるのは、本当に理解できない現象だったよ」
「これに関して明確な検証をする必要があるだろうし、我々はすでにいくつかのテストを行う準備を進めている。サーキットに双方の仕様(規定合致のエキゾーストとPWRレーシングの仕様)を持ち込み、並走させて出力の相違を見ればいい。その結果はシリーズに大きな影響を与えるものになるはずだ」
エキゾーストの効率が改善していれば、当然エンジンの出力面にもアドバンテージがあると考えられるが、トミー代表は「もちろん、テストをしていない現時点では断定的な物言いは避けたい。何らの差異もない……という結果もあり得るわけだからね」と、慎重な姿勢も見せている。
一方、PWRレーシングのチームマネージャーを務めるダニエル・アンダーソンも、同じ日刊紙に対し「パワーの優位性はない」と断言している。
「我々はクプラ・レーシングの用意したオプションのなかから、バリエーションをセレクトしたにすぎない。性能面での優位性は一切ない」とアンダーソン。
「基本的に、我々が違法行為に手を染める理由はどこにもないんだ。我々の感覚的には100%正しい戦いを続けている。供給されたパーツを使用しているだけなのだからね」