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二宮和也、『検察側の罪人』で感情を爆発 『ブラックペアン』に重なる迫力の演技に注目

2018年08月27日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 8月24日、木村拓哉と嵐・二宮和也の共演で話題になっている映画『検察側の罪人』が公開になった。木村はエリートベテラン検事・最上毅を、二宮は入庁5年目の若手検事・沖野啓一郎を演じる。2人の演技合戦を中心に、松重豊や大倉孝二、酒向芳など実力派俳優たちが渾身の演技を見せる同作品、息を呑むような物語の展開や、俳優たちの演技力など様々な見どころがある。さらに、この映画の「正義とは何か」というというテーマにおいても、みる人によって様々な感想を抱きそうだ。そんな見どころたっぷりの『検察側の罪人』だが、本稿では二宮の演技について注目してみたい。


参考:二宮和也が吠える【写真】


 二宮といえば、ジャニーズきっての実力派俳優。テレビドラマ『南くんの恋人』(テレビ朝日系)、『流星の絆』(TBS系)、『フリーター、家を買う。』(フジテレビ系)、映画『硫黄島からの手紙』、『GANTZ』、『母と暮せば』、『ラストレシピ~麒麟の舌の記憶~』など、言わずもがなこれまで数々の名作に出演してきた人物だ。その演技力は確かなもので、数々の賞を受賞しており、映画『母と暮せば』では第39回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞も受賞している。


 そんな二宮が、2018年4月期のドラマ『ブラックペアン』(TBS系)で4年ぶりに連続
テレビドラマの主演を務めたことは記憶に新しい。これまで好青年や優しい青年の役が比
較的多かった二宮だが、『ブラックペアン』で演じたのはダークヒーロー。相手をどこか
馬鹿にするような飄々とした態度、声を荒げたり、冷たく「死ねよ」と言い放つ表情、ド
Sな発言をする二宮が新鮮で、大きな話題になっていた。


 その二宮の演技力にも評価が集まり、連日彼の演技はネットで取り上げられていたほど。SNSなどでも視聴者から賞賛の声が上がり、最終回終了後は「二宮ロス」になる人々も少なくなかったようだ。もともと高い演技力を持っていた二宮だが、『ブラックペアン』を経たことで確実に演技の幅が広がったのではないだろうか。今までの青年役を演じていた二宮に、この『ブラックペアン』の演技がうまく重なったのが『検察側の罪人』だ。


 二宮演じる沖野は、「最上流正義の継承者」と自称するほどに研修担当検事であった最
上に憧れを抱いていた。もちろん沖野自身も優秀なのだが、最上のやり方や最上からの期
待に応えようと奮闘していく様子が印象的である。故に、「最上の正義感はおかしい」と
疑問を抱いても、はじめはその疑問をぶつけることができないでいた。しかし、徐々に最
上に疑問を抱いていく様になる。


 物語の後半、最上の正義に確固たる疑問を持った沖野はかつて崇拝していた最上に対しても毅然とした態度を取るようになっていく。その表情は物語の前半と全く違う。「あなたの正義は間違っている、自分は自分の正義を貫く」と宣言しているような、挑戦的な目だ。この微妙な心情の変化の表現の仕方は、絶妙であると言える。大げさでもなく、分かりづらくもなく、ちょうどいい塩梅なのだ。


 また物語の序盤、クセのある被疑者を取り調べるシーン。沖野は相手にナメられないように必死に機転を利かせ、取り調べを進めていく。ここまでは、これまでよく目にしていた二宮の演技だ。しかし物語の中盤、老夫婦殺人事件の被疑者の1人であり、過去未解決殺人事件の重要参考人であった松倉重生(酒向)を取り調べるシーンでは、一気に感情を爆発させ、松倉に詰め寄る。早口かつ長台詞なのだが、完全に自分の言葉として喋っているかのようでかなり迫力がある。かと思えば、自殺した松倉の兄の写真を目の前に出し、「お前が兄貴を殺した」と耳元で囁くように冷淡に言い捨てる。この緩急が素晴らしい。123分の映画の中での沖野の心情の変化を的確になぞらえ、感情をこれでもかと表現してくる二宮からは、『ブラックペアン』での演技経験がしっかりと見て取れるはずである。


 『検察側の罪人』における二宮の演技の素晴らしいところは、キャラクターの縁取りが
秀逸なことだ。戸惑い、憧憬、向上心、正義感、反抗心…、沖野啓一郎という人物が持つ
様々な感情をあの手この手で表現している。スクリーンに映し出される、二宮渾身の演技
を是非堪能しながら作品を楽しんでみてほしい。(高橋梓)