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V系バンド BCD=ベル、Chanty、Develop One’s Faculties、サウンドの共通点に注目

2018年08月26日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 ギターをメインに楽曲を展開するギターロックが生まれて久しいが、質の高いギターロックを求めているなら、ぜひヴィジュアル系バンドもチェックしてほしい。中でも今、勢いのある、ギターに重きを置く魅力的なロックバンドが、それぞれのバンド名の頭文字をとって“BCD”と呼ばれる、ベル、Chanty、Develop One’s Facultiesという3組だ。


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 彼らは“BCD”3バンドで、2017年には『二進化十進法』と題した全国スリーマンツアーを開催した(ちなみに『二進化十進法』は英語でBinary-coded decimal = BCDのことを表す)。同じ事務所に所属しているわけでもない彼らがなぜここまでのことを成し遂げているのか? まずは3バンドがそれぞれどんなバンドなのかを紹介していきたい。


■ベル


 “歌謡サスペンス”をキーワードに、歌メロ、ギターフレーズ共にキャッチーな楽曲を繰り広げるベル。夢人(Gt)、明弥(Ba)といった複数のコンポーザーの高いメロディセンスがどの曲にも光っている。また、ハロ(Vo)が歌い上げる男女の切ない恋愛模様は、インディーズ時代のシドをも彷彿とさせる。ライブMC中のBGMに昭和の歌謡曲を使用していることからも、コンセプトを重視しているバンドといえる。


■Chanty


 日々の生きづらさや苦悩を表現しながらも、その辛さに寄り添い、最後にはそこから救いあげる。まるでオーディエンスにとっての生きる道標を示すようなライブを展開しているChanty。演奏面は主に千歳(Gt)、芥(Vo)が牽引しており、同じアレンジは2度と演奏されないのではないかというほど、曲間のつなぎも含め繊細で秀逸である。


■Develop One’s Faculties


 不条理な現代社会に対する不満を歌詞に込めたギターロックは、yuya(Gt/Vo、パート名としてはAsserter)・yuyaを中心に展開されている。彼は近年のヴィジュアル系バンドには珍しい、ギターボーカルを担当。ロックのみならずジャズやファンク等にも精通し、レガート奏法やスイープ奏法を得意とするギタリスト、リッチー・コッツェンに影響を受けており、ライブでもそのギターテクを偉観なく発揮している。


 こうして聴いてみると、3バンドはいわゆるギターロック的な楽曲の傾向に親和性の高さが感じられる。結成年の近さ、メンバー間の仲の良さなどに加え、サウンドに近しいものがあったからこそ、『二進化十進法』ツアーが実現したといっても過言ではない。


 同ツアーは回を追うごとに段々とリピーターが増え、さらには、目当てのバンド以外のステージも全力で楽しむオーディエンスの姿が多数見られた。結果、このツアーは全編通して“BCD”というひとつのバンドのワンマンライブであるかのようなステージとなった。誰に仕向けられたわけでもなく、純粋にお互いのバンドを尊敬し合った結果生まれたツアーであったといえる。


 彼らは普段からイベントでの共演も多いため、ひとつのイベントライブで3バンドを堪能することも、そう難しくはない。『二進化十進法』ツアーの公式Twitterアカウントがツアー終了後も更新されていることから、今後の“BCD”によるツアー再演にも期待せずにはいられない。ヴィジュアル系ファンだけでなく、ロック好きなリスナーもぜひサウンドに注目してじっくりと楽曲を聴いてみてほしい。(白乃神奈)