海洋汚染を防止するため、プラスチック製のストローを廃止する動きが広がっている。スターバックスは今年7月、2020年までに日本を含む全世界の約2万8000店でプラ製ストローを廃止すると発表した。
ファミリーレストランのガストやバーミヤンを展開する「すかいらーくホールディングス」も8月17日、2020年の東京五輪・パラリンピックまでに全ての店舗でストローを廃止すると発表した。また、環境省は8月24日、紙ストローなどへの切り替えを後押しするため、製造企業に補助金を出すことを決めた。
しかしストローの廃止で本当に海洋汚染は防げるのか。日本自然保護協会・自然保護部の志村智子さんは「生産されるプラスチック製品のうちストローが占める割合は少ないでしょうから、これで問題解決とはならないと思います」と話す。意義がないというわけではないが、汚染を食い止める鍵とまではならなそうだ。
「ストローという身近なものを廃止することで消費者の意識改革につながると期待」
「ストローという身近なものを廃止することで消費者の意識改革につながると期待したいです。またESG投資も盛んになっていますし、こうした取り組みをする企業への投資が増えれば、環境保護のための施策がさらに加速する可能性もあります」
「ESG投資」とは、「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」の頭文字を取ったものだ。環境問題や人権問題に取り組む企業に投資し、そうでない企業からは投資を引き上げようという動きで、現在世界の投資の約4分の1(2500兆円)を占めている。
ストローを廃止するだけでは不十分でも、こうした取り組みが発端となって消費者の意識が変わったり、企業が環境保護に積極的になったりする可能性があるということだ。
海に流出するプラスチックは毎年480万~1270万トンに上り、海洋動物が絡まったり、誤飲したりする被害を引き起こしている。2050年までに海に蓄積するプラゴミの量は、生息する魚の総重量を超えるという予測もある。
さらに最近では「マイクロプラスチック」による汚染も危惧されている。
「5ミリメートル以下のプラスチックの欠片をマイクロプラスチックと言います。これが魚や貝の体内に取り込まれ、人間にも影響を及ぼす危険があります。実際にどうなるのかは、まだわかっていませんが、人体に有害だとわかった時には取り返しのつかないことになっている可能性もあります」(志村さん)
オーストラリア、ブータンなどではレジ袋を禁止 仏や英でも規制
プラスチックの大量消費とそれが引き起こす海洋汚染。防止するためには、どうすればいいのか。
「まずはレジ袋を削減する必要があると思います。諸外国ではレジ袋を禁止している国も珍しくありません。ペットボトルの使用も減らすべきです」
例えば今年7月、オーストラリアでは使い捨てのレジ袋が禁止された。バングラデッシュやブータン、ルワンダなどでも禁止されており、フランスやイギリスにも規制がある。アイルランドでは2002年にレジ袋に課税する法案が成立し、使用量が激減したという。諸外国がプラスチック製のレジ袋を次々と規制する中、日本ではなかなか対策が進んでいない。
しかしレジ袋は、マイバックを持ち歩くことで利用を控えることができる。ペットボトルもマイボトルを持ち歩いたり、缶入りの飲料を選んだりすればよい。志村さんは、消費者に向けてこう呼びかけていた。
「どうしてもプラスチック製品を使わないといけない場合はきちんとリサイクルしてほしいと思います。また使い捨てのプラスチックは使わなくても済むのであれば、すぐに使うのをやめてほしい。このままでは海が危ないです」