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「女性医師は患者の死亡率を下げる」 東京医大の得点操作問題で健康社会学者が提言「女性のやり方を男性も学ぶべき」

2018年08月26日 10:01  キャリコネニュース

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東京医科大の入試で行われていた、女子の合格者を減らす得点操作の問題で8月21日、受験生らを支援する弁護団が結成された。23日放送の「モーニングCROSS」(TOKYO MX)では、この報道に関連し、健康社会学者で東大博士号を持つ河合薫さんが出演。米国で行われた研究データを元に

「女性医師が患者の死亡率を下げる」(内科・外科)
「女性医師の方が再入院率を下げる」(内科)

と解説した。良い結果が出ている女性のやり方を、「男性も学ぶべき」と提言している。(文:okei)

女性医師だと30日以内の死亡率が0.4%、再入院率は0.5%下がる

河合氏は、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院が行った研究を紹介。2011~14年に入院した65歳以上の高齢者130万人のデータで「医師の性別による患者の30日以内の死亡率や再入院率」を比較した結果、「女性医師だと30日以内の死亡率が0.4%、再入院率は0.5%下がる」ことがわかった。

「たったの0.4%」と見るかもしれないが、河合氏は「同じ患者を男性医師と女性医師が見た場合、約3万2千人が、女性医師が診たほうが良い結果が出た」と説く。

要因として挙げられたのが先行研究の結果だ。女性医師は、「男性医師に比べて、患者の立場に立ってコミュニケーションを取る」「診断に入る前に、ある程度患者と会話をする」傾向が強いという。丁寧なコミュニケーションによって患者が希望を見出し、重篤でも前向きに生きていこうとする力につながるとしている。

この日MCを務めたパトリック・ハーランさん(パックン)は、「診断どうのこうのだけじゃなく、どんな風に接したかで死亡率が変わるかもしれないんですね」と感想を述べた。

「女性のほうが言語能力が高い、親切などと言われている一般的な言説に、エビデンスはまったくない」

河合氏は、「これは集団での比較なので、必ずしも男性医師の方がダメとか女性医師のほうが優れているという話ではなく」と断った上で、

「集団で比較したときに、それだけ女性医師のほうがいい結果をもたらすということが分かれば、そこの部分は男性側も女性に学んで、そういった教育を病院側はすべきだと思うんです」

と考えを語る。どちらが優秀という話よりも、患者にとってより良いやり方を学ぶべきという主張だ。

興味深いのは「なぜ女性のほうがコミュニケーションを丁寧に取るのか」だが、一般に言われる男女比較で「女性の方が言語能力が高い、親切心があるなどとされる心理的なものには、エビデンスがまったくない」とも河合氏は語る。

ただし、1つだけアイデンティティの作り方に違いがあり、男性はDO(する)「患者を治す』ことで、女性はBE(いる)「患者の話を聞く、そこに存在する』ことで、自分の存在意義を確かめる傾向があるため、こうした違いが顕れるのではないかという。

こうした結果をみると、女性医師を減らすよりも増やしたほうがいいことは明白だが、日本の医師を取り巻く労働環境は厳しく、女性医師だからコミュニケーションを丁寧に取れると言われても疑問が残る。宮瀬茉祐子アナは「男女ともにコミュニケーションの時間を作るためには、根本的に医師不足対策や働き方改革をしっかり進めなければならないですよね」と、まとめ、河合氏も「ゆとりですよね」と応じていた。