2018年シーズン後半戦、F1第13戦ベルギーGPが始まりました。今回も引き続きムッシュ柴田氏が現地の様子をお届けしていきます。
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2018年の夏ヨーロッパに居座った熱波のせいで、木曜日のスパ-フランコルシャンは、スパらしからぬ暑さでした。名物オールージュを撮ろうとコースに出たら、肌が直射日光でちりちりと……。
といっても気温25℃ほどだし、湿度なんて50%もないぐらいでしたから、日本で残暑にあえいでる人たちには申しわけないぐらいです。
短い夏休みの間に、F1界にはいろんなことが起きてました。そのひとつを象徴するのが、このフォース・インディアのトランポです。
ハンガリーまであったロゴが、全部消えてる。その横でチームスタッフたちが集まって、何やら話し込んでる様子は、かつてのケイターハムやマノーの末期と同じ雰囲気でした。
とはいえフォース・インディアの場合は無事に買収交渉も終わり、この日のうちに「レーシングポイント・フォース・インディア」として再出発することが正式に発表されました。そして新たにチーム代表に任命されたのがこの人、オットマー・サフナウアーです。
まあ、実質的にレース現場もファクトリーも、彼がリーダーシップを振るってきたわけで、彼以外の適任者はいなかったわけです。個人的にはホンダF1に入って以来の10年以上の付き合いでもあり、とうとうチーム代表になったんだな~と、感慨深いものがありました。ちなみにマクラーレンのジル・ド・フェラン、広報責任者のチム・バントンも、ホンダF1時代のオットマーの同僚です。
しかしフォース・インディア買収騒動が一段落した一方で、一番割りを食ってしまったのがエステバン・オコンです。
大富豪ローレンス・ストロールを中心とした組織が買収したことで、ランス・ストロールのフォース・インディア移籍は確実。
押し出されたあとは、おそらくウイリアムズしか行き場所はなさそうです。つい数週間前までは、メルセデスへのステップアップさえ噂されていたのですから、改めてF1の世界の状況変化の速さ、過酷さを思い知らされました。
それでも本人は、(少なくとも表面上は)悠然と構えて、「僕はいつだって崖っぷちだったし、それを乗り越えてここまで来たから」と、強気のコメント。
全然心が折れてる風ではありませんでした。1、2年は雌伏の時期を強いられるかもしれませんが、この姿勢を貫けば、このまま終わることはないでしょう。
一方、フランス語系ドライバーの中では、経験も実績もオコンより下だったピエール・ガスリーが、あれよあれよという間にレッドブルへの抜擢が決まってしまいました。
木曜会見でダニエル・リカルドと談笑する間も、自然に笑みがこぼれるのを抑えられない感じでした。1年あまりでトロロッソを卒業してしまうのは、セバスチャン・ベッテル以来の快挙です。まさにあれよという間の、シンデレラボーイ。なので初日のカコミ取材の際に、「ずいぶん運にも助けられたんじゃない?」とあえて意地悪な質問をしてみたところ、
「確かに運に助けられたこともあったよ。でもそのうちのいくつかは、僕自身が作り出してきた」と言ったのには、感心しました。それだけの強烈な自負がないと、頂点は目指せないんですね。
対照的に、笑顔がめっきり少なくなってきたハートリー。
ちょっと心配です……。