GAZOO Racing 86/BRZ Raceの第6戦、第7戦が8月20日に十勝スピードウェイで開催され、プロフェッショナルシリーズでは青木孝行(ケーエムエス フェニックス86)と谷口信輝(KTMS 86)が優勝。クラブマンシリーズでが橋本洋平(カーウォッチ86 BS revo)と庄司雄磨(OTG DL 86)も優勝を分け合った。
十勝スピードウェイで行われた今季唯一のWヘッダー大会は、なんと1デイレース。併催の北海道クラブマンレースカップのオリジナル3カテゴリーと併せ、7レースを予選も含めて一挙に行うとあって、まさに慌ただしいことこの上なし、といった状況になっていた。
また、昨年のWヘッダーではタイヤは6本使用可、第1レースのベストラップ順に第2レースのグリッドが決められるというシステムによって、若干の混乱も来したこともあり、今年は2セット8本の使用が可能に。
さらにセカンドベストタイムが第2レースのグリッドを決めることになり、当然普段とは違って予選では2アタックが必要となる。ならば、1アタックごとニュータイヤを投じてしまおう……というのが当然の成り行きとなる。
しかし、15分間の計測では、タイヤ交換にまた違った混乱を来しかねないということで、エントラントからの要望により、5分間の延長が認められることに。この結果、スケジュールは10分間前倒しになり、最初の予選となるクラブマンシリーズは早朝7時50分からのスタートとなった。
そして、今回もうひとつのトピックスとなったのは、土曜日に行われたプロフェッショナルシリーズの専有走行で、ダンロップユーザーが上位を独占したこと。
新たに投じられた『β04』のポテンシャルは前評判以上で、契約ドライバーである服部尚貴と菅波冬悟(OTG DL 86)のみならず、ブリヂストンの契約ドライバー以外のほとんどがスイッチするまでに。
服部は「基本的にはライフの改善を狙ったタイヤなので、ずっとコンスタントに行けるように作ってきてくれたんですが、ベストラップもいい感じで、前の『β02』を上回って。そう言う意味では、タイムも出て、ロングもよくなった正常進化のタイヤです」と新タイヤを評する。
ベストタイムの順で決まる第6戦は、青木が服部と谷口を僅差で従え、ポールポジションを獲得。しかし、服部と谷口、そして菅波は十勝のローカルルールで禁じられていた、予選中のピット内でのタイヤ交換を行ってしまったため、2グリッド降格のペナルティ。
これにより、2番手、3番手には近藤翼と小河諒(神奈川トヨタ☆DTEC86R)が繰り上がることとなった。一方、それまで無敵だったブリヂストン勢では、平木湧也(茨城トヨペット86レーシング)の6番手が最上位。
「かなりひさしぶりですね、ポールポジションは」と青木。
「1回目のアタックはスリップストリームをバリバリ使われてしまいましたけど、2回目のアタックはかなりうまくいきました。パフォーマンスとして、クルマもかなりいいんじゃないかと思っています」
「タイヤは、今まで使っていたBSと、かなりキャラクターが違っていて、他の人はセットをかなり変えて合わせていたようですが、僕はセットを少しだけ変えて、走りの方で合わせました。個人的な感想ですが、どの領域でも安定したグリップがあるという感じがしますね」
一方、セカンドベストタイムで決まる第7戦は、谷口がトップで、青木が2番手。以下、菅波、小河、BSユーザーの最上位となる井口卓人(CG ROBOT BRZ BS)、そして近藤の順となっていた。
「第1レースはペナルティで5番手、第2レースがポールから、今回戦う上では十分なポジションからスタートできるので、着実にレースしていきたいと思います。調子いい? いや、まだ分からないですよ。昨日まで基本BSで行くつもりだったんですが、専有走行の結果を見るとDLが上を固めたので、僕もDLを選んだんですが、ずっとBS側でセットしていたから、今日慌ててセットを変えて、一か八かだったので。ロングができていないので、不安要素はないわけじゃないんです」と、谷口は普段より控えめなコメント発していた。
しかしながら、その谷口をランキングで従えていた織戸学(サミー☆K-one☆MAX86)と佐々木雅弘(小倉クラッチREVO 86 BS)が予選で絶不調。それぞれ20番手と16番手、17番手と10番手に沈んでいたこともあって、谷口にとってはトップ浮上の機会が、一気に高まっていた。
■ポールシッターの青木、2015年十勝戦以来の勝利
第6戦はポールシッターの青木が好スタートを切り、オープニングラップのうちにマージンを築く。一時は独走態勢に持ち込むかと思われたほどの逃げを見せたものの、中盤からはペースが鈍り始め、近藤と小河の接近を許すこととなる。終盤に入ると、さらに青木のペースは落ちて、防戦一方となるなか、やがて服部、谷口、そして平木も加わって、さながら“青木レーシングスクール”状態に。
だが、十勝はオーバーテイクポイントが少ないサーキット。下手を打てば、接触やコースアウトで痛い目にあうことは、このメンバーならば熟知していた。結局、上位には最後まで順位変動はなく、辛くも青木が逃げ切って、2015年のここ十勝以来となる、ひさびさの勝利を挙げることとなった。
「スタートはすごくうまくいきました、集中して。序盤はけっこう良かったんですが、中盤からがくんとペースが落ちちゃって。ロングを一度もかけていなかったので、タイヤがどうなるか分からない状態からスタートしたので……。最初はすごく良かったのに、最後は抑えるだけのレースになっちゃいました。でも、とりあえず1勝できたから、すごく気が楽になりました。今年ここまでつらいレースが続いていましたからね」と青木。
2位は小河が獲得し、今季初めての表彰台へ。チームメイトの近藤が3位を獲得した。
第7戦もまたポールシッターの谷口が好スタートを決め、早々に青木以下を引き離す。しかも2周目からは「エンジントラブルで」青木が失速して、順位を落としていったことから、より後続との差を谷口が広げることとなった。代わって2番手におどり出たのは小河で、これに続いたのは井口。特に井口は好スタートが効いた格好だ。
ひとり逃げる谷口に対し、2番手争いが激しかったが、ここもまた逆転は最後まで許されず。小河はただひとり連続で表彰台に上がり、井口は久々の表彰台獲得によって、DL勢の上位独占を阻止することとなった。
「1周目のうちに逃げられたから、もう自分のラインでまずは逃げることに徹していたら、青木が失速してまた離れたし、後ろもやり合ってくれたので、僕としては非常に楽な展開になって、本当にミスなく、クルマを壊さないように丁寧に走るだけで勝てたので、本当に良かったです」と谷口。
「タイヤのいいところも第1レースを走ったことで、だいぶ理解してダンパーやエア調整だけでも、かなりいい方向に行ったと思うんですが、何はともあれ守りきれたことと、ランキングのトップに上がれたことが非常に嬉しいです。でも、まだ全然油断はできないし、どこかで僕が0点やったら、すぐ追いつかれてしまうので、あと2戦も頑張ります」
織戸は2戦とも入賞ならず、佐々木は第7戦で5位まで上がるのがやっとだった。
■クラブマンはポールシッターが流れに乗れず。ランク首位庄司が戴冠王手
クラブマンシリーズの予選は2年目で、躍進を果たした水野大(リキモリ制動屋ピース剛式86)と神谷裕幸(N中部GRGミッドレスDL86)がポールポジションを分け合うことに。神谷は第6戦でも2番手ながら、両レースともランキングのトップを争う庄司雄磨(OTG DL 86)が、すぐ後ろにつけていた。
第6戦の水野は初ポール。「1回目のアタックは、最終コーナーでスピンしてしまって。でも、気を取り直してタイヤを換えてから、2回目に行った時、少し修正してトップタイムを出せました。2レース目は少し厳しいと思いますが、1レース目をなんとか頑張っていきます」とコメント。
そして神谷は「最初のアタックは手堅くいって、もっとプッシュできる要素はあったんですが、コースの状況見ながら走っていたので、次はそのあたりを考慮して。ちょっとだけ上がったんですが、最終コーナー立ち上がって4速入れる時に、ちょっと入らなかったので、それがもったいなかったというか、それがなければWポールも獲れていたでしょう。2レースともスタートでトップに立って、そのまま逃げたいですね」と語っていた。
だが、決勝ではこのふたりの思惑が、スタートから間もなくズレが生じてしまう。まず第6戦は予選3番手の橋本洋平(カーウォッチ86 BS revo)が好スタートを切って、水野と神谷の間に割って入る。そして庄司も加えて1コーナーをまず集団で駆け抜け、2コーナー、3コーナーまで並走。しかし、続く4コーナーで水野がシフトミスで失速し、これをかわそうとした神谷と接触してしまう。そこをすり抜けて行ったのが橋本と庄司で、さらに予選5番手の水谷大介(ネッツ東京レーシング86)も3番手に浮上する。
「スタートがめちゃくちゃ決まって、2台の間に割って入って、4コーナーまで並走。そこでトップに立ってからは、タイヤが冷えている時にガーンと行っちゃえと。行ったら離れたし。でも練習中に左リヤを脱輪してスピンしているんです。そういうことを繰り返さないようにと、途中からは淡々とコントロールして走ることができたくらい、今回は乗れていました。良かったです、やっと勝てました」と橋本。
庄司と水谷のバトルも最後まで続いたが、順位変動はなく、そのままフィニッシュとなった。
一方、接触で「リヤのアライメントが狂ってしまったようです」という神谷は5位で、そして水野は9位でゴールするのが精いっぱいだった。
神谷と水野のふたりは、第7戦でも流れに乗れず。神谷はスタートでこそトップを守ったものの、5コーナーで最も抜かれたくない庄司にかわされた後、またも順位を落とし続けて5位でフィニッシュ……。水野は7位で、ポジションキープを果たすに留まっていた。
4周目から神谷に代わって2番手に浮上したのは、6番手スタートだった菱井將文(CUSCO BS 86)だ。もちろん、続いて庄司も迫るが、そこに続いてきたのが橋本。第6戦を制した勢いそのままに菱井を追いかけ、9周目には2番手に浮上する。しかし、それ以上の上昇は「スタート直後にぶつけられて、ステアリングのセンターが曲がっちゃって」と無理だったことを、橋本は口にした。
逃げ切った庄司は「トップに立ってからは何もなく……。いや、実際にはありありでした(苦笑)。僕のペースがあまりに悪かったので、後ろ見たらドンドン来ているし、詰まってもいたから、一歩間違えば思いっきり落ちると思ったので、わざと内側でブレーキを早めて、後ろを詰まらせるようなイメージで、僕は閉めるところを閉めて。そしたら、後ろで思いっきりやり合ってくれて、差が開いていくの繰り返しでした。そうじゃないと今日、勝てませんでした」とレース後にコメント。2勝目をマークして「次で決めます!」とも。悲願の王座獲得に、大きな前進を果たしていた。