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リニア談合・清水建設「他3社に誘われ、断れなかった」…検察「性懲りも無く幹部が主導」、罰金2億円求刑

2018年08月24日 17:42  弁護士ドットコム

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リニア中央新幹線の建設工事をめぐる談合事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われた法人としての清水建設(東京都中央区)の論告求刑公判が8月24日、東京地裁(鈴木巧裁判長)であった。検察側は罰金2億円を求刑し、弁護側は「他3社に誘われたためで、当初から談合を主導していない」などとして情状酌量を求めた。これで公判は結審し、判決は10月22日に言い渡される。


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●起訴内容「間違いありません」

この日は清水建設の法務部長が会社を代表して法廷に立った。弁護人からの尋問に対し、法務部長は「間違いありません」と起訴された内容は争わないことを表明。「このような事態になったことを会社として重く受け止めている。社会に重大な影響を与え、深く反省している」などと陳謝した。


なぜ今回の事件が起きたかについては、「コンプライアンスの責任者として大変残念だった。営業担当者が、リニアという国家事業において当社としての実績をぜひ残したいという思いがあったのは間違いない。そこに他社からの誘いがあり、誘惑で断れなかったのではないか」と述べた。


弁護側の主張では、大林組と大成建設、鹿島の3社の担当者が「3社会」などと称して密に連絡を取り合っていたところ、「清水建設が勝手に動いてもらっては困る。こちらに入らないか」との誘いを受け、清水建設側はいったん回答を留保したものの、最終的に受注調整の輪に加わることになったという。


●談合決別宣言あったのに…

ゼネコン業界ではこれまでも談合体質が指摘され、自らが襟元を正すため、2005年末には「談合決別宣言」を清水建設、大成建設、大林組、鹿島のゼネコン大手4社が出していた。ただ、今回はこの4社が談合に関わったとして検察や公正取引委員会が追及している。


検察側が、談合決別宣言があったのになぜ談合を防げないのかを問うと、法務部長は「本当に申し訳ない。会社としては真剣に取り組んできたが、個人の倫理観のレベルで行き届いていない部分があった」と答えた。


裁判官からは、実際に談合に関わったとされる担当者の処分状況について質問があった。法務部長は「刑事裁判の確定と公正取引委員会による処分を待ってから、検討する」と述べるにとどめた。


●検察「共同して談合。厳しい処分が相当」

検察側は、極めて公共性の高い国家的プロジェクトを受注するにあたり、ゼネコン大手4社は本来は模範となるべきところ、共同して談合を行なったと指摘。「談合体質は根深く、性懲りも無く幹部職員が談合を主導し、再発防止は困難。再発防止策を策定し反省の弁を述べているとはいえ、厳しい処分とするのが相当」として、罰金2億円を求刑した。


弁護側は「誠に重く受け止めていて、何ら言い逃れをするつもりはない」とした上で、清水建設が当初から主導した談合ではなかったと主張。「リニアの受注は悲願だったため、誘惑に負けた。他3社に引き込まれたものだった」などと述べた。


今回の談合事件では、法人としての大林組も公判中で、9月13日に結審する予定。他に大成建設の元常務執行役員、鹿島の専任部長と、法人としての両社も起訴されている。


(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama


(弁護士ドットコムニュース)