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WEC富士プレビュー:F1とは一味違う姿も。円熟の境地に達した走りで魅せるアロンソ

2018年08月24日 12:01  AUTOSPORT web

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WECのアロンソはF1の現場とは一味違った走りや表情をみせる
“スーパーシーズン”第3戦までが終了した2018/19年のWEC世界耐久選手権。10月12~14日に行われる第4戦の舞台となるのは、霊峰富士の麓に位置する富士スピードウェイでの1戦、WEC富士6時間耐久レースだ。ここでは今季からTOYOTA GAZOO Racingに所属しているフェルナンド・アロンソについて、改めてその魅力に迫る。

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 2018/19年のWEC最大の話題は、やはりフェルナンド・アロンソのシリーズフル参戦だ。F1で過去2回世界チャンピオンに輝いたアロンソは、今シーズンTOYOTA GAZOO Racingの一員として、トヨタTS050ハイブリッド8号車をドライブ。デビュー戦となったWEC開幕戦スパ6時間でデビューウインを飾った。さらに、第2戦ル・マン24時間でも優勝するなど、強い存在感を放っている。

 アロンソは2017年、WEC最終戦バーレーン終了直後のテストで、初めてトヨタTS050をドライブした。それまで後輪駆動のフォーミュラばかり乗ってきたアロンソにとって、前輪をモーターで駆動させる全輪駆動のTS050のドライブフィールは、驚くべきものだったという。

 アロンソをもってしても最初は限界を掴みきれず、リミットまで攻めきれなかったようだが、さすがは天賦の才を持つ男。ほどなくTS050を乗りこなし、年明けの30時間テストでは、経験豊かなレギュラードライバーとそん色ないペースで走るようになった。

 F1でのアロンソは、どちらかといえば唯我独尊なイメージが強い。しかし、トヨタの一員となったアロンソは、主張すべきことは主張しながらも、基本的には協力的なチームプレイヤーであり、すぐにチームに溶け込んだという。

 過酷な30時間テストでも黙々と周回を重ね、マシンの信頼性およびパフォーマンスの向上に大きく貢献。その真摯な態度に、チームメイトやスタッフは感銘を受け、アロンソに対する信頼を深めた。そして、アロンソ自身もチームの一員としての役割を果たす事を心から楽しんでいたようだ。

 実際、スパやル・マンにトヨタのレーシングスーツ姿で現れたアロンソは、とてもオープンで、楽しそうに見えた。ファンの求めに応じ気軽にサインをしたり、一緒にカメラに収まったりと、ファンサービスにも積極的だった。

 近年F1では苦戦が続くアロンソだが、F1での彼とはまた違う、生き生きとした姿を10月の富士6時間レースでは見ることができるかもしれない。

■中嶋一貴のアロンソ評「レースがうまいドライバーはトラフィック処理もうまい」

 ル・マン24時間でのアロンソは、8号車TS050の一員として素晴らしい仕事をした。レースは中盤、チームメイトの7号車が8号車をリードしており、アロンソが乗り込んだ時、2台の差は2分以上あった。しかし、アロンソは夜のサルト・サーキットでルーキーとは思えないような走りを披露し、7号車よりも1周あたり2~3秒速いペースで周回。

 差はどんどんと少なくなっていき、最終的にはアロンソの担当スティントで約40秒差まで縮まった。いろいろな要因があったにせよ、アロンソの快走が、その後の8号車の逆転優勝に繋がったことは事実である。

 周回遅れのマシンを抜かす、いわゆるトラフィック処理も非常に巧みだった。8号車のチームメイトである中嶋一貴は「レースがうまいドライバーは、トラフィック処理もうまい」とアロンソを評していたが、実際その通りだった。

 WECではさまざなマシンが走っており、それぞれ速いセクションが異なる。つまり抜きどころの見極めがかなり難しいのだが、アロンソは正しい判断と思いきりの良さで、前走車を次々と抜き去っていった。その時のドライビングは非常に切れ味鋭く、F1での全盛期の彼を見ているようだった。

 もちろん、ドライバーとしての技量は現在でもトップクラスに違いないが、それでも戦闘力の高いマシンに乗った時の走りはやはりひと味違う。円熟の境地に達したアロンソの、彼本来のドライビングは一見の価値がある。富士6時間レースでは一体どのような走りを見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。

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 WEC第4戦富士の概要やチケット情報など、詳しくは富士スピードウェイの公式ホームページまで。