WEC世界耐久選手権やル・マン24時間などのスポーツカーレースに参戦するLMP2カー、リジェJS P217の開発・製造を手がけるオンローク・オートモーティブは、同社が開発に関わった『ニッサンDPi』を引き続きIMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップ(WSCC)のグリッドに留めるために複数のオプションを用意しているという。
ニッサンのシンボルとなっている“Vモーショングリル”をフロントに掲げ、パワートレインにはニッサンGT-RニスモGT3と同じ3.8リッターV6ツインターボエンジンをリヤミッドに搭載するニッサンDPi。
タイトルスポンサー、テキーラ・パトロンのコーポレートカラーである鮮やかなグリーンのカラーリングを纏うこのマシンは、デビューイヤーの2017年、最終戦プチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)で総合優勝を飾ったほか、2018年シーズンは第2戦セブリング12時間でも歴史的勝利を収めた。
しかし今年7月、そんなニッサンDPiを走らせるエクストリーム・スピード・モータースポーツ(ESM)を長期に渡って支援してきたテキーラ・パトロンが、今季限りでモータースポーツへの出資を中止することを発表。
チームはこれを受けて、長年のパートナーに謝辞を述べるとともに2019年シーズンも2台のニッサンDPiを走らせる努力を続けていくという声明を発表しているが、現時点でESMが来季もWSCCのグリッドに着けるのかは不透明な状況だ。
こうしたなかで、ESMとともにニッサンDPiを開発してきたオンロークのチーム代表、フィリペ・デュマは今後もESMが参戦を継続できるようサポートを続けていくと語ったが、マシンを確実にグリッドに並べるためには他チームへのマシン供給もプランのひとつとして考えているという。
■マクラーレンF1のザック・ブラウン率いるユナイテッド・オートスポーツがニッサンDPiを採用か
「我々はESMが引き続きニッサンDPiを走らせることを明確な第一目標としている」とオンロークの姿勢を説明したデュマ。
「スコット(・シャープ/ESMチームオーナー)が来季も2台のクルマを維持するために、支援に関心を持つ者や予算を持ち込むドライバーを見つけてくるのが私の仕事だ」
一方で、この計画がうまくいかなくなった場合に備えてオンロークは次の手も考えているという。
「ニッサンDPiのプロジェクトは、テキーラ・パトロン・ESMと2年間に限っての独占契約を結んでいたため、2019年には他のチームにカスタマーカーを供給することが可能になる」
「我々のマシンに高い競争力があるのは過去1年半の間に示してきた結果をみれば分かるだろう。また、エースドライバーのピポ(・デラーニ)は何度も光る速さをみせてくれている」
「(DPiの最多勝はキャデラックDPi-V.Rだが)プチ・ル・マンとセブリングで優勝を飾っている我々のクルマが“良いマシンではない”と言えるはずがないんだ」
そう自信を覗かせるデュマは、DPiが導入された2017年以降初となるLMP2カーでの優勝を果たしたJDC-ミラー・モータースポーツともカスタマーカー供給についての話し合いを行なっていたと明かした。
しかし、既報のとおりJDC-ミラーはキャデラックDPiへのマシンスイッチを発表。ニッサンDPiの供給には至らなかった。それでも「まだ興味を持っているチームはいると」とデュマ。
その候補となるのはイギリスにおけるリジェのインポーターとなっているパートナーチーム、ユナイテッド・オートスポーツだ。
2018年にフェルナンド・アロンソ、ブルーノ・セナらを擁し、2台のリジェJS P217・ギブソンでデイトナ24時間参戦した同チームは、オンローク製ニッサンDPiの供給先としてもっとも有力な相手とみられている。