レッドブルが、2019年からピエール・ガスリーを起用すると発表した。これで2019年シーズンのレッドブル・ホンダのドライバーラインアップは、20歳(9月30日で21歳)のマックス・フェルスタッペンと22歳のガスリーというフレッシュなコンビに決まった。
年齢的には若いふたりだが、実力的には勝利を目指すレッドブル・ホンダにとって不足はない。フェルスタッペンは2016年に史上最年少でF1初優勝を飾った逸材。2017年もチームメートのダニエル・リカルドを上回る2勝を挙げ、予選では13勝7敗とリカルドを大きく上回った。2018年もすでにオーストリアGPを制し、予選では9勝3敗とリカルドを圧倒。それがリカルドの離脱の一因になっていたとも言われている。
近年のF1で、デビューから2シーズン以内に初優勝を遂げ、以後3シーズン連続で1回以上、優勝しているドライバーは、アイルトン・セナ、ミハエル・シューマッハー、デーモン・ヒル、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテルとフェルスタッペンしかいない。
一方のガスリーは今年、F1にフル参戦したばかりにも関わらず、すでに光る走りを披露している。バーレーンGPでは4位を獲得。フェルスタッペンの1年目の最高位に早くも並んだ。
したがって、オーバーテイク・キングの異名を持ち、これまで幾多の名勝負を披露してきたリカルドの離脱は残念だが、フェルスタッペンが2年目に急成長したように、ガスリーが来年飛躍すれば、ドライバーラインアップは決して悲観することはない。
そうなると、レッドブル・ホンダが2019年に勝利を収めるために重要な鍵となるのは、ホンダのパフォーマンスとなる。
■2019年はホンダとレッドブル・テクノロジーがパワーユニットとマシン開発を推進
だが、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は「保証はないが、今年に入ってからのホンダの仕事ぶりを見れば、来年一緒にやっていくパートナーとして十分に信頼できる相手だ。彼らには素晴らしい施設があり、優秀な人材もいる」と自信をのぞかせる。
これは、昨年ルノーと25馬力以上の差があると言われていたホンダのパワーユニットの性能が、今年は約15馬力にまで迫ってきたのではないかと言われていることが要因ではない。もちろん、馬力はないよりはあったほうがいい。しかし、レッドブルがホンダに本当に求めていることは、単に強力なパワーユニットを供給してもらうという関係ではなく、車体とパワーユニットをひとつ屋根の下で開発していこうという関係だった。その場所がイギリスのミルトン・キーンズにあるレッドブル・テクノロジーだ。
レッドブル・テクノロジーはレッドブルのファクトリーではなく、独立した開発機関で、レッドブルだけでなく、トロロッソも使用している。ホンダが発表したリリースでも、レッドブルだけでなく、レッドブル・グループに2年間パワーユニットを供給すると書かれていたのは、それが理由だと考えられる。
2005年にF1に参戦を開始したレッドブルが搭載した最初のエンジンは、コスワースだった。以後、フェラーリ、ルノーのカスタマーで1勝もできなかったレッドブルだったが、2009年から突然、チャンピオン争いに躍り出る。
その最大の理由は09年から導入された新しいレギュレーションに、エイドリアン・ニューウェイ率いるレッドブル開発陣がうまく対応したためだったが、その後もレッドブルは勝利を重ねた。その理由は、それまでワークスとして参戦していたルノーが、09年末にワークス活動を撤退。レッドブルがルノー勢のナンバーワンチームになったからだった。
レッドブルがルノーと共同で開発して成果を挙げた技術が、排気を空力に利用したブロウンディフューザーだった。しかし、14年からエンジンがパワーユニットになり、16年からルノーがワークスとしてF1に復帰。レッドブルが持つアドバンテージを生かす環境がなくなってしまった。
■ホンダパワーユニットの性能向上にレッドブル陣営も大きな期待
そこに現れたのが、3年間におよぶパートナーシップの末、マクラーレンから三行半を突きつけられて、姉妹チームのトロロッソと今年からパートナーを組むこととなったホンダだった。レッドブルが2017年からすでにホンダとのパートナーシップを視野に入れていたことは、昨年の日本GP前にレッドブルの関係者が、栃木県にある本田技術研究所 HRDさくらを訪問していたことでもわかる。レッドブルが正式にホンダをパートナーに選ぶと発表したのは、それから8カ月後ことだった。
発表の中で、ホンダは「ワークス」という言葉を使用しなかったが、供給するチームがレッドブルとその姉妹チームであるトロロッソだけしかないことを考えられば、今回の契約はレッドブル系チームへのワークス体制での供給であることは間違いない。
ホーナーはこう続ける。
「ホンダとの提携は、われわれにとって初めて自動車メーカーと緊密に連携する機会となった。これにより、われわれは与えられたモノをどう生かすのかという車体づくりではなく、車体をデザインする最初の段階から車体とパワーユニットの融合を考慮することができる」
レッドブルは夏休み前にホンダから来年用のパワーユニットの寸法を入手。2019年に向けてレッドブル・ホンダはすでにスタートをきっている。