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渡辺大知、『恋のツキ』で徳永えりと演じた“同棲3年”のカップル像 「声の演技と呼吸を取り合った」

2018年08月23日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 テレビ東京で放送中の木ドラ25『恋のツキ』。本作は、31歳フリーターの平ワコ(徳永えり)が、同棲して3年の彼氏“ふうくん”(渡辺大知)と、バイト先の映画館に現れた16歳年下の高校生・伊古(神尾楓珠)の2人の間で揺れ動くラブストーリーだ。ワコの揺れる心情や、同棲をして3年というカップルの性生活、年が離れているが趣味が合う高校生との恋愛に焦がれる様子などが赤裸々なまでに丁寧に描かれている。徳永えり演じるワコは、31歳という年齢から結婚に焦りを感じているためか、ふうくんに対する打算的な感情と純粋な愛情とが交錯しているように見える。恋愛に関して簡単には割り切れない登場人物の描写がとても繊細で生々しいと評判だ。


 今回リアルサウンド映画部では、ふうくんを演じる渡辺大知にインタビュー。一見だらしなく、視聴者が思わずワコへの愛情を疑ってしまうような“ふうくん”というキャラクターをどう魅力的に演じたのか。また徳永えりとの初共演について、話を聞いた。(編集部)


■「演技は想像するところに醍醐味がある」


ーー最初に台本を読んだ時の感想はいかがでしたか?


渡辺大知(以下、渡辺):徳永えりさん演じる主人公のワコの内面が、えぐい部分も含めて丁寧に描かれているところが面白いと思いました。普通のドラマだと、見逃されている、忘れられているところまでしっかり描写しているので。31歳という年齢の女性の心情が丁寧に伝わってくる作品だと思います。原作の漫画は絵柄が可愛らしくて、どぎつくないタッチなので、浮気がテーマではあるのですが、読みやすくて風通しのいい話だと感じました。


ーー渡辺さん演じるふうくんは、ワコと3年同棲している恋人です。3年って結構長いですよね。


渡辺:そう思います。“同棲3年”というのは演じる上で意識していたポイントで。一見、ワコ目線で語られていく『恋のツキ』の内容だと、ふうくんは、だらしなくマイペース、自分勝手というよりは、ワコをあまり見れていなく、知った気になってしまっていると思うんです。ただ、それはあくまで表面的にそう見えているだけで。自分が意識したのは、お互いが好きになった理由や3年間も同棲が続いた意味を想像しながら、大事に芝居をしました。表面的な要素だけでは、ふうくんが魅力的なキャラクターにはならないような気がして。ふうくんは、だらしなくどうしようもない側面もあるけど、ドラマに出てくるキャラクターとしては気になる存在であってほしい。自分としても、そのほうが楽しんで挑めると思いました。


ーーさりげない仕草や距離感に、長年一緒にいる2人の関係性が出ているなと思いました。


渡辺:ありがとうございます。今回の作品にかかわらず、そういった人物や関係性の背後にあるものを考えるのは、自分の役者としてのテーマでもあります。演技は想像するところに醍醐味があると思うんですよね。どの作品でも、その役がただの“○○キャラ”みたいになるのは避けたくて。たとえば“いじられキャラ”とか“草食男子”とか、自分が演じる人物が一辺倒な印象にならないよう意識しています。ある点からはこう見えるけど、人間には相反する一面も絶対あるはずだから。ふうくんは家では部屋着でゴロゴロしていて、ワコともろくに目を合わせないけど、外ではきっと社交的で、会社では意外といいやつと思われている、とか。外であまり自分の悪いところを見せないからこそ、家でワコに甘えちゃう部分があるんでしょうね。


ーー主人公の女性が2人の男性の間で揺れ動いているという点では、渡辺さんが出演していた映画『勝手にふるえてろ』にも共通する部分があるなと感じたのですが、いかがですか?


渡辺:そうですね。あと、一昨年のドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)も、主人公のゆり子(前田敦子)に二股されて、浮気を容認している彼氏役でしたね。なので、1人の女性を挟みがちというか、二股されがちというか(笑)。


ーー確かに(笑)。最初に『恋のツキ』を観た時は、『勝手にふるえてろ』の“二”とふうくんは人物像が少し似ているのかなと思ったのですが、二は自分の好意をヨシカ(松岡茉優)にストレートに伝えてましたけど、ふうくんはなかなか伝えようとしないですよね。


渡辺:いや、でもふうくんも付き合ったばかりの時はワコにめちゃくちゃ好きって言っていたと思います(笑)。


ーーなるほど(笑)。そういう部分にも、3年という時間が表れてるんですね。


渡辺:確かに近しいキャラクターではあると思うし、たぶん『勝手にふるえてろ』があったから今回オファーをもらったんじゃないかという気もするんですが(笑)。でも、自分としてはまったく違うキャラクターですし、今までにない心持ちで向かった作品でした。たとえば、ふうくんは家の中にいると自分の身体を掻いているんですよ。寝る時やお酒を飲みながらテレビを観てる時とか無意識に。そういうのは、ワコに対する一種の照れ隠しなのかなと思っています。


■「徳永さんは、“押し殺し”の表現が素敵」


ーー渡辺さんから見たワコはどういう女性ですか?


渡辺:人は生きている限り、いろんな面が出てくると思うんですが、ワコはそれを隠すのに慣れてしまった人なのかなと思います。感情を剥き出しにしてもいいのに、それをしてこなかった人。すごいドライな自分と、愛情深い、恋人を支えたいという気持ちを持った自分がいるのに、そういう両極の気持ちを押し殺してしまうというか。


ーーふうくんとも真正面からぶつかることもなく、言葉を飲み込んでしまうシーンが印象的でした。


渡辺:徳永さんの、その押し殺しの表現が素敵だなと思いましたね。そういう人って、イラッときた時こそ、ふわふわ笑うというか、ワコも「そんな言う?」って言って寂しげに笑うんですよね。徳永さんのその声の使い方や表情は、とてもワコらしいなと感じました。


ーー徳永さんとは今回が初共演ですね。


渡辺:僕、芝居中あまり徳永さんのことを見ていなかったんです。部屋に2人でいるシーンでも、僕はそっぽ向いていて、テレビに夢中だったりスマホをいじっていたり。目を合わせることも面倒になってしまったのか、照れくさいのか。3年も一緒に住んでいると、面と向かって名前を呼んで話しかけることも少なくなってしまうんじゃないかと思って。ふうくんの性格としても、逃げがちというか、家の中であまりパワーを使いたくないところがあって。なので、徳永さんの姿というより、声の印象のほうが強いかもしれませんね。徳永さんの声と芝居をしていたというか。


ーー“声と芝居をする”というのは、どういう感覚なんですか?


渡辺:僕、声が一番大事だと思っているんですよ。声で表情が決まるから。徳永さんの絶妙な声の演技と呼吸を取り合っていた気がします。(取材・文=若田悠希)