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『銀魂2』、前作超えを狙える好発進 映画は続編を作るためにこそある!?

2018年08月22日 17:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 先週末の映画動員ランキングは『銀魂2 掟は破るためにこそある』が初登場1位。土日2日間の数字は動員38万5000人、興収5億2800万円。金曜日初日からの3日間では動員60万人、興収8億円を超えている。昨年7月に公開された前作は土曜日の公開だったので正確な比較はできないが、初日だけで比較するならば興収で159%という好調な滑り出し。シリーズ作品は観客が初動に偏る傾向があることをふまえても、前作の累計興収38.4億円を超える可能性は十分あるだろう。


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 興収40億円超えの『万引き家族』、興収70億円超えの『劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』と、今年は6月以降に実写日本映画のヒットが連発しているが、実は『銀魂』の興収38.4億円という数字は昨年の実写日本映画ではナンバーワンの成績。「実写日本映画のトップでも年間では全体の13位」ということからも、昨年の実写日本映画がいかにヒットに乏しかったかがわかるが、『銀魂』は製作のワーナー・ブラザース ジャパンにとっても、そしてコミック原作映画というジャンルにとっても、近年においては数少ない「希望の星」となった。


 今回の『銀魂2』の快挙はまず、前作から約1年で続編の公開を実現させたことにある。公開前から続編の製作を匂わせながらも、1作目が興行的に失敗した途端に続報が途絶える作品が少なくない中、『銀魂』の続編の製作が正式に発表されたのは2017年11月のこと。もちろん、水面下では1作目の製作中から続編を想定した動きはあったに違いないが、それにしても発表からたった9か月でこうして劇場公開まで漕ぎ着けるのは簡単なことではなかったはずだ。


 人気アクターは2年くらい先まで撮影スケジュールがびっしりと埋まっている(実際にそういう話をよく耳にする)現在の日本映画・ドラマ界にあって、主演の小栗旬はもちろんのこと、菅田将暉、岡田将生、吉沢亮、柳楽優弥、堂本剛、長澤まさみ、橋本環奈らをはじめとする他の作品だったら主演クラスの役者たちをすぐに再び集めることができたこと(それに加えて今回の『銀魂2』では堤真一、三浦春馬、窪田正孝らも出演)。前作からの約1年で、『斉木楠雄のΨ難』、『50回目のファーストキス』に続いてこれが3作目となる福田雄一監督の異常な仕事量。そのような難しい状況を突破できたのは、1本目が成功したからにはできるだけ早く2作目を公開しなくては、という製作サイドの執念あってこそだろう。


 というのも、自社配給した2006年の『デスノート』の大ヒットがきっかけとなったワーナー・ブラザース ジャパンの実写日本映画への注力は、『るろうに剣心』という大ヒット・シリーズを生み出すに至ったが、同シリーズ最終作となった2014年9月公開の『るろうに剣心 伝説の最期編』を最後に、『銀魂』を唯一の例外として、シリーズ化するに足るだけの結果をまったく残していなかったからだ。2016年4月公開の『テラフォーマーズ』(興収7.8億円)、2017年8月公開の『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(東宝と共同製作・配給。興収9.2億円)、2017年12月公開の『鋼の錬金術師』(興収約11億円)、2018年7月公開の『BLEACH』(興収見込み約8億円)と、非少女コミック原作実写化作品に限ってもまさに死屍累々といった状況。タイトルに「第一章」とある『ジョジョの奇妙な冒険』は言うまでもないが、エンドクレジット後に続編を示唆するシーンが挿入されていた『鋼の錬金術師』、劇中では「死神代行篇」とシリーズ前提のタイトルを掲げていた『BLEACH』など、宣伝戦略的に製作サイドが続編を否定したことはあったとしても(『銀魂』も当初は最初で最後の実写化という触れ込みだった)、それらの作品が続編を想定していたのは明白だ。


 21世紀に入ってから世界中の映画マーケットを席巻してきたスーパーヒーロー作品も、言い方を換えれば「コミック原作実写化作品」(原作との参照点は作品によって千差万別で、キャラクター原案に近い作品も多いが)。特にワーナー・ブラザース本社にとって、DCのシリーズ作品は映画事業の屋台骨をずっと支えてきた。そんなワーナー・ブラザース本社からしてみれば、「日本でもコミック原作のシリーズものを」と考えたのは自然の流れだろう。とかくコミック原作実写化というと日本の映画界特有の流行のように語られがちだが、むしろ日本は自国に人気のコミック原作が豊富にありながらそれを活かしきれてこなかった、とする方が正確だ。そんな中で、ワーナー・ブラザース ジャパンに限らず日本映画界全体を見渡しても数少ない「シリーズ化の成功例」となりそうな『銀魂』。当然、水面下では3作目に向けて動いているはず。そこに障壁があるとしたら、同じ出演者を確保できるかどうかだろう。役者のギャランティーの桁が2つくらい違って、シリーズ作品の成功例が積み重ねられていない現状では仕方がないことではあるが、今後はハリウッドのように役者とのシリーズ複数本契約のような動きも出てくるかもしれない。(宇野維正)