2018年08月22日 15:52 弁護士ドットコム
選択的夫婦別姓を求め、ソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏らが国を相手取り訴えている裁判の第3回口頭弁論が8月22日、東京地裁(中吉徹郎裁判長)で開かれた。国の反論に対し、代理人の作花知志弁護士が再反論、国会や地方議会でも夫婦別姓を求める動きが広がっていることなどを指摘した。
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原告側の準備書面によると、今年に入ってから国会議員からは次のような夫婦別姓に関する発言があったという。
・国重徹議員(公明党)が「平成8年に法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を答申してから20年がたつが、法制化されていない。我が国の社会の変化や将来を見据えたときに、選択的夫婦別姓制度を早晩導入せざるをえないのはないか」と質問(3月20日、衆議院法務委員会)。
・串田誠一議員(日本維新の会)が「夫婦が同姓同名だった場合、不動産登記簿謄本はどうなるのか。強制執行したときに、夫のものだと思ったら妻のものだったということもあり、家庭内の問題ではなく、社会的な混乱」と指摘(3月20日、衆議院法務委員会)。
・糸数慶子議員(沖縄の風所属)が、選択的夫婦別姓について世論調査では反対が多数を占めたのは70歳以上のみで、特に女性は60歳未満のすべての年代で反対はわずか10%であるなどとして、「法改正をしないことに合理性はない」と指摘(3月22日、参議院法務委員会)。
・立憲民主党、日本共産党、国民党、無所属の会、自由党、社民党の5党1会派によって、選択的夫婦別姓を導入する民法一部改正法案が衆議院に共同提出(6月14日)。
これ以外にも4月に野田聖子総務相が山形市内で記者団に対して、「選択的夫婦別姓の問題を避けて通れない」と発言。福田康夫元首相も4月、都内の講演で「女性が働きやすい環境になるためには(夫婦別姓制度は)必要かもしれない」と語ったことが挙げられた。
また、地方議会でも夫婦別姓を求める声は上がりつつあるという。
・2016年3月、大阪府泉大津市議会で、「選択的夫婦別姓の導入を求める意見書」が採択。
・2016年6月、埼玉県新座市議会で、「選択的夫婦別姓制度の早期導入を求める意見書」が可決。
・2018年6月、埼玉県蕨市議会で「選択的夫婦別姓制度の導入を求める意見書」が採択。
・2018年6月、千葉県市川市議会で議案「選択的夫婦別姓制度の法制化を求める意見書の提出について」が可決。
この裁判は今年1月に提訴されたが、その後、さまざまな夫婦別姓訴訟が続いている。
2015年に最高裁まで争われた夫婦別姓訴訟の弁護団が5月、別姓の婚姻届が受理されないのは「信条」の差別にあたるなどとして、東京地裁と立川支部、広島地裁の3カ所で同時に提訴、第二次夫婦別姓訴訟を起こしている。
6月には、アメリカで法律婚をしたにもかかわらず、日本の戸籍に婚姻が記載されないのは、立法に不備があるとして、映画監督の想田和弘さんと舞踏家で映画プロデューサーの柏木規与子さん夫妻が婚姻関係の確認などを求めて東京地裁で提訴。
8月にも、東京都文京区の出口裕規弁護士と妻の40代女性が、再婚する際に子どもの姓に不自由が生じることなどから葛藤、立法府が選択的夫婦別姓を認める法改正を怠ったことによって精神的苦痛を受けたと訴え、東京地裁で提訴した。
今年の夫婦別姓訴訟のラッシュを受け、青野氏は22日、「第3、第4の夫婦別姓訴訟が続いていることがうれしいです。夫婦同姓によって僕が感じた不利益は一側面であり、他の方達が別の問題を感じていることを明らかにしてくれています。みんなで『最高裁にGO!』です」と、意気込みを語った。
青野氏らの夫婦別姓訴訟の第4回口頭弁論は10月24日。年内に結審し、今年度中には判決が下される見通しだ。
(弁護士ドットコムニュース)