スペイン在住のフリーライター、アレックス・ガルシアのモータースポーツコラム。2019年のF1に参戦しないことを発表したフェルナンド・アロンソ。3冠達成の大きな野望を秘めていたアロンソが次に向かう先は?
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フェルナンド・アロンソは2019年のF1に参戦しない。アロンソは彼のすべてのファンに対してサプライズを用意し、マクラーレンとともに8月中旬に発表したのだ。彼にとって3冠達成への関心が大きくなり、F1においてマクラーレンの改善が進んでいないことを見れば、それはいかにも起こりそうなことだった。
しかし実際に発表されると、モータースポーツ界全体に激震が走った。そして2019年にアロンソがF1に参戦しないということで、関心のすべては彼の次のステップに向けられる。来年、アロンソはどこでレースをするのだろう?
その予想をする前に確定しているところを整理しよう。アロンソは、TOYOTA GAZOO Racingと契約中なので、2018/19年のWEC世界耐久選手権の“スーパーシーズン”の残りのレースに参戦するのは確実だろう。
つまり基本的にアロンソは、2019年の3レースに出ることがすでに決まっている。3月15日のセブリング1000マイル、5月4日のスパ・フランコルシャン6時間、そして彼にとって2度目の参戦となる6月15~16日のル・マン24時間だ。それ以外のことは純粋に憶測となってしまうが、最近アロンソが何をしているか、また、何を達成したがっているのかといったことをもとに、分かっていることからいくつか推測することはできる。
まずは3冠達成だ。最近まで、レーシングドライバーが3冠達成を追求すべき真の目標とすることはなく、どちらかといえばそれはF1内外の様々なシリーズに参戦して成功を収めるようなキャリアを持つドライバーたちにとっての、名誉のあるタイトルというものだった。
アロンソは3冠を目標にすることで、自身の付加価値を高められることに気づいたが、おそらく最も重要なことは、たとえF1ではなくとも、極めて名高いレースシリーズのトップで戦うチャンスを見いだしたことだ。だからアロンソは、2017年にインディ500へ挑戦しただけでなく、2018年にはF1とWECに並行参戦し、トヨタとともにル・マン24時間の初勝利をものにしたのだ。
そのため、アロンソの近い将来メインとなる目標は、やはりインディカー参戦だと推測される。彼は2017年に同シリーズの歓迎を受けインディ500に参戦したが、それは市場性と彼の紛れもない才能の両方によって実現した。
しかし2冠の世界王者であるアロンソが前回の挑戦で素晴らしい経験をしたと語っている一方で、彼はもはやスポット参戦をしたがっていないらしいという噂がすでに出ている。
■フェルナンド・アロンソ、インディカーのフルシーズン参戦への野心
アロンソはフルシーズン参戦することがインディ500優勝のチャンスの助けになると考えているようだ。さらに重要なことには、アロンソには野心があり、最高峰のイベントだけで勝つつもりはないようなのだ。
ル・マン24時間とインディ500は世界三大レースに含まれるが、アロンソはWECとインディカー選手権で勝利し、実際にそれらのチャンピオンも獲得したがっている。これが2019年にフェルナンド・アロンソが米国でレースをするのを目にする可能性が高い理由だ。
もちろん、どのチームからレース参戦すべきかということは大きな問題だ。それに答えるには、アロンソのF1離脱発表まで戻る必要がある。彼は引退するとは決して言っておらず、マクラーレンが競争力のあるマシンを作れるのなら、F1にカムバックすることも考えるかもしれないと実際に明らかにしている。
つまり、マクラーレンと何らかの形で繋がりを継続するのはアロンソにとって理にかなっていることだろう。マクラーレンがインディカー参入を1年以上検討しているという事実と相まって、そのことはこれから起こることを大いにほのめかしている。差し当たってマーク・マイルズ(インディカーの親会社であるフルマン&カンパニーのCEO)は、マクラーレンがインディカー参入を検討していることを認めている。
最近になるまで、マクラーレンが米国でレース参入することについては曖昧な噂しかなかったが、マイルズの声明はレーシングファンの希望を燃やすのに十分に明確なものだ。
しかし、マイルズ自身は2018年の終わりまで物事が決定することはないと述べているため、忍耐強く待つことが大切だ。すでに今年も後半に入っており、さらに決断が遅くなると、マクラーレンが自チームを準備する時間がなくなってしまうだろう。
■アロンソがインディカーに参戦する場合のエンジンはシボレー?
だが、既存チームとの提携はマクラーレンにとってまさに必要なものであり、あり得ることだろう。インディ500におけるアンドレッティ・オートスポートとの提携のようにだ。以前も提携したことから、マクラーレンとアンドレッティ、そしてアロンソが2019年に再び組むことになると一部では確実視されている。
だが、日本が関わる小さな問題がある。アロンソがホンダ製エンジン搭載マシンをドライブすることをトヨタが受け入れると考えるのは難しい。同様に、アロンソのようなビッグネームがトヨタのマシンでWECのレースで優勝するかもしれないことを、ホンダは良しとしないかもしれない。
他の可能性として、マクラーレンはシボレーのエンジンに大いに期待することができるだろう。実のところ、インディカーや昔のUSACレースにおけるマクラーレンの歴史を語る際、シボレーはF1でのホンダのように彼らにとって真の歴史的パートナーなのだ。“シェビー”(※シボレーの愛称)チームに関しては、カーリンやエド・カーペンター・レーシングがパートナーとなる可能性があるが、他にも候補はある。そしてアンドレッティについては、2019年シーズンに向けたエンジン変更の可能性が以前からあるのだ。
私はアロンソが2019年にインディカーに参戦することを確信している。噂ではスコット・ディクソンが米国でのマクラーレン・ドライバーの最有力候補とされていたが、彼は最近になってガナッシとの契約を更新していることから、マクラーレンがアロンソと契約することもあり得る。
だが、ひとつ私は疑問を抱いている……アロンソとマクラーレンはA.J.フォイトから現在のF1カーナンバーである14号車を取り上げようとするだろうか?それとも2017年に使用したインディカーのカーナンバー、29号車を取り戻そうとするだろうか?