2018年08月22日 10:42 弁護士ドットコム
女子高生から下着やだ液を購入したとして、40代の男性がこのほど、神奈川県青少年保護育成条例違反の疑いで書類送検された。警察の取り調べに対して、男性は「エッチなことをすると逮捕されるので、下着を買って性欲を満たそうと思った」と話しているという。
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報道によると、書類送検されたのは、男性はことし5月、神奈川県相模原市の駐車場にとめた車の中で、女子高生(当時16歳)に下着を脱がせて、だ液とともに現金1万6000円で買い取った疑いが持たれている。女子高生とはSNSで知り合って、下着などの購入を持ちかけたそうだ。
現時点で不明なことが多いが、書類送検された男性は、逮捕されることをおそれて、下着やだ液を買って性欲を満たそうとしたが、結果的に条例違反となったようだ。この条例があまり知られていないことも背景にあるかもしれない。
どういう行為が禁止されているのだろうか。わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
「神奈川県保護育成条例で禁止されているのは、着用済み下着などを青少年(18歳未満)から買い受けたり、青少年からの売却を委託したり、売却の相手方を青少年に紹介する行為です。
神奈川県条例では、『着用済み下着等』=『青少年が一度着用した下着又は青少年のだ液若しくはふん尿』とされています。青少年がたとえ着用していなくても、これらに該当すると称するだけで対象になります。
神奈川県の解説によれば、『下着』とは、上着の下に着装し直接肌身に接するもので、通常の公衆の面前では見られることのない衣類です。
靴下やストッキングは含みませんが、パンティーストッキングについては、そのすべてが公衆の面前で見られることがないので、下着にあたるとされています」
相手が18歳未満だと知らなかったらどうなるのか。
「下着等買受罪は、相手が18歳未満だと知らない場合でも、『過失』があれば処罰されることになっています。したがって、下着等を買い受ける際には、年齢確認を尽くす必要があります。
神奈川県の解説では『履歴書を提出させるだけでは本人を確認したとは言えず、運転免許証等の顔写真つきの身分証明書で確認するか、必要によっては保護者等に確認するなどの手段を講じた場合は、過失がないと言える』とされています」
今回のケースで、男性は、駐車場にとめた車の中で、女子高生に下着を脱がせたようだ。ほかの法律に反する可能性はないのだろうか。
「購入者の面前で下着を脱いで売る、いわゆる『生脱ぎ』は、それ自体が『青少年に対するわいせつな行為』となる可能性があります(神奈川県青少年保護育成条例違反)。『生脱ぎ』の機会に対償供与して、青少年と性的行為をする児童買春事件も珍しくありません」
どうして、このような行為が禁止されているのだろうか。
「2000年代前半ころ、いわゆる『ブルセラショップ』という、青少年からの下着の買取業者が出現して、社会問題になったことがあり、業者だけでなく、個人的な買受も禁止されました。
当時は『不健全な遊興等に消費する金銭の入手経路を断つ』『少年の正常な倫理観や労働観の喪失を防ぐ』とされていましたが、最近では、購入者の面前で脱ぐ『生脱ぎ』行為が、性犯罪や福祉犯罪のきっかけとなっていることがあり、そこで、警察も下着買受行為の検挙に注力しているのです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm