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back number、三浦大知、KREVA、森山直太朗、ENDRECHERI…実力派男性アーティスト新作

2018年08月21日 10:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 初の東京ドーム公演を成功させたback number、いまや日本のエンターテインメントを代表する存在となった三浦大知など、音楽的クオリティと幅広いポピュラリティを備えた男性アーティストの新作を紹介。着実にキャリアを積み重ねている彼らの、熱量と才能がたっぷり込められた楽曲を堪能してほしい。


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 現在、初のドームツアーを開催中のback numberのニューシングル『大不正解』。表題曲は映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』の主題歌だ。いわゆる書き下ろし曲だが、熱量の高いバンドサウンド、濃密な感情を込めたボーカル、〈僕等は完全無欠じゃ無い/原型を愛せる訳でも無い〉という歌詞がひとつになった骨太のロックチューンに仕上がっている。一般的には「クリスマスソング」「瞬き」などのバラードナンバーで知られる彼らだが、その根底にあるのはやはり、エモーショナルなロックバンドとしての存在感なのだ。プロデュースは蔦谷好位置。生々しいグルーヴと打ち込みのビートを共存させたアレンジもきわめて刺激的。自らのアイデンティティと新しいトライアルを同時に示した意義深い楽曲だと思う。


 三浦大知の物語性を重視したコンセプチュアルな作品『球体』と同じく、Nao’ymtのプロデュースによる表題曲「Be Myself」は、現行のオルタナR&Bと80年代のダンストラックをナチュラルに繋ぐようなトラック、心地よいグルーヴを描き出すボーカルが印象的なナンバー。“常に自分であれ”というテーマを押し出したリリックは、一貫して「どんなことをやっても“三浦大知は三浦大知”という存在でありたい」と発言している彼の、アーティストしてのベーシックなスタンスをそのまま反映している。“大切な人とのパーフェクトな休日”を描いた「Perfect Day Off」、息苦しいほどに哀切な恋愛模様を映し出す「Breathless」は三浦の作詞による楽曲だ。


 〈存在感はある でも/でも、代表作が無いような気がした〉と吐露する「存在感」、自分自身の美意識そのものをテーマにした「俺の好きは狭い」。2019年のソロデビュー15周年へのキックオフ的な新作『存在感』のテーマは“個”。2ndアルバム『愛・自分博』ではグローバルな視点を提示し、常に音楽シーン全体、もっと大きく言えば世界全体を視野に入れて活動してきたKREVAは本作において、自分自身の現状と内側を冷徹に見つめ、あまりにもリアルで切実な楽曲に結びつけてみせた。シリアスな雰囲気のリリックを際立たせる、アンビニエントなトラックメイクも印象的。KREVAが紡ぎだす切実な言葉にじっくりと耳を傾けたい作品である。


 劇場公演『あの城』で歌われた「糧」「やがて」「自分が自分でないみたい」、原宿VACANTで行われた舞台『なんかやりたい』のなかで披露された「群青」などデビュー15周年(2017年)以降の活動のなかで生まれた楽曲が収められた、森山直太朗の約2年ぶりのアルバム『822』。リリース日(8月22日)をそのままタイトルに冠したドキュメンタリー性の強い作品と言えるだろう。特に印象的だったのは、「出世しちゃったみたいだね」(コーラス/友部正人)、「時代は変わる」(コーラス/森山良子)。フォーク、カントリーのテイストを色濃く反映したサウンド、飄々とした表現で物事の本質を捉える歌詞は、森山直太朗(と御徒町凧)の真骨頂だろう。個人的な願望ですが、来年、フジロックのFIELD OF HEAVENで観たいです。


 サマーソニック(東京公演)に出演し、濃密なファンクサウンドで観客を惹きつけたENDRECHERIのニューシングル『one more purple funk… -硬命 katana-』。表題曲は煌びやかにして神秘的なグルーヴと和の叙情性が感じられるメロディが溶け合うナンバー。そのほか、サイケデリックな渦を感じさせるアンサンブルと現在の社会に対する違和感を含んだ歌詞がひとつになった「funky レジ袋」、70年代ソウルバラードを現代的な音響によってアップデートさせたラブソング「Rainbow gradation」などを収録。オーセンティックなファンク、ブルース、ロックを軸にしながら独自の価値観、美意識を込めまくった彼の音楽は、キャリアと作品を重ねるごとに奥行きを増しているようだ。


■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。