新設されたタイレム・ベンドでの第11戦、新規カレンダー入りの“The Bend”スーパースプリント開催を目前に控えたVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーで、今季ルーキードライバーのトッド・ヘイゼルウッドを走らせているMSR(マット・ストーン・レーシング)が、シーズン中にフォード陣営からホールデンにスイッチする異例の発表を行った。
このメーカー変更によって、2017年に下部カテゴリーのスーパー2でシリーズチャンピオンを獲得したヘイゼルウッドは、残るシーズンはカスタマー仕様の旧型ホールデン・コモドアVFをドライブすることに。
そして2019年に向けてはホールデンのファクトリー指定チームであるトリプルエイト・レースエンジニアリングからの技術サポートを獲得する予定で最新型のZBをドライブする予定という。
今季からメインシリーズであるVASCにスーパー2のチャンピオンドライバーとともに昇格してきたMSRは、フォード系トップチームのDJRチーム・ペンスキーとの契約で昨季モデルのフォード・ファルコンFG-Xを投入。
このペンスキーとの契約は、カスタマーサポートに積極的ではないDJR側と、技術的提携を望むMSR側とで長らく協議が続けられてきたが、シーズン前半戦のMSRは一切のテクニカルサポートを得ることなく戦ってきた。
そのため昇格初年度のMSRは競争力不足に苦しんでおり、ヘイゼルウッドは21レースが終了した時点で、フルタイムで参戦するレギュラードライバー勢最下位となるランキング21位に沈んでいる。
チームオーナーのマット・ストーンは、来季フォードがシリーズへの投入を計画している『フォード・マスタング』のプロジェクトに強い関心を抱いていたというものの、カスタマーサポートの契約を勝ち取ることは、彼の職務とチームの将来に向け「不可欠な要素だった」と説明する。
「もちろん、我々としてもマスタング・プロジェクトには興味があったが、今季初めて“メインゲーム”を学ぶ過程で、新人ドライバーとともに戦う初年度のチームにとって、ノウハウを持つ既存ワークスチームとのテクニカルアライアンスの必要性を痛いほど感じているところなんだ」と、ストーン代表。
「誰の目にも明らかなように、ここまではチームとして独学で戦いを続けており、とくに高い理解を有しているとは言えないフォードのマシンで苦戦を強いられている」
「フォードとも来季の話し合いを続けていたが、すべての要素を考慮しても我々がマスタング・プロジェクトのサポートを得られるとは思えなかった。そこでスーパー2時代に技術提携の経験があったトリプルエイトにも話を持ちかけ、このパートナーシップが実現したんだ」
「もしトリプルエイト製のZBを走らせることができる……となれば、それはペンスキーからは一切オファーのなかったサポートプログラムを、ただちに得ることができることを意味する」
ルーキーのヘイゼルウッド自身も、この急な契約変更で週末のタイレム・ベンド戦を前に、コモドアVFのテスト機会を設けることは不可能となったが、それでも「ホールデンへのスイッチに興奮している」と期待を語った。
「この新しい方向性が、チームとして前進するのに役立つだろうと信じているし、これは一夜漬けの決定なんかじゃない。チームが変更を決断したこと、僕がそれに適応できることに自信を持っているんだ」とヘイゼルウッド。
「スーパー2でタイトルを獲得したパッケージに戻って、メインシリーズの後半戦を戦えることは本当にうれしい。シリーズで成功を収めた人物(マット・ストーン代表)がマネジメントの側にいてくれるのは本当にラッキーで、心強いね」
今季、MSRがスーパー2で走らせているマシンもDJRチーム・ペンスキーとの提携でフォードにスイッチしていたが、この新契約によりこちらも即時ホールデン・コモドアVFへのリターンを決断。これにより、DJR製ファルコンのシャシー2台が無期限で宙に浮く形となった。