インディカー・シリーズの第14戦ポコノは大波乱のレースとなった。結果から言えば、琢磨は500マイルのレースをフィニッシュできなかったが、彼が大きな怪我も負わずにガレージに戻ってきたことを喜ぶべきだろう。
木曜日にセントルイスでメジャーリーグの始球式を終えた後、琢磨はポコノに移動してきた。昨年はこのポコノでポールポジションも獲得し、琢磨にとっては相性の良い好きなトラックだが、今年は事前テストにチームが参加していなかった。
案の定とも言うべきかレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの2台はFP1からペースが上がらず、17~18番手で苦しんでいた。
琢磨はセッションの終盤で予選シミュレーションをトライし、8番手までタイムを上げて終わった。
「これで少し方向性が見えたので、予選はアクセルを思いっきり踏んでいきました」と言う予選のアタックでは、琢磨はアテンプトの順で2番手のタイムをマーク。マシンを降りて笑みがこぼれる。
最終的には10番手のグリッドとなったが、アイオワ、テキサスに続き琢磨のオーバルの予選アタックは、思いっきりの良さとベテランらしさが滲み出ている。チームメイトのグラハム・レイホールは18番手グリッドに沈んだままだ。
だがその予選後のプラクティスが雨でキャンセルとなり、どのマシンも決勝セッティングを試せないまま、レースのスタートを迎えることになった。
「こういう状況だとリソースの大きいチームが結果的に有利になりますよね。僕らみたいな中堅から下のチームは、データが少ないから苦労する。あまり歓迎できないですね。せめて日曜日に30分くらいプラクティスを設けてくれれば良いんですが……」
確かに全チームともに同じ条件だとは言え、事前テストに来なかったRLLRは決勝レースで苦戦を強いられそうだった。
■500マイルレースは波乱に
日曜日のレースになり、ほぼ予定通りにレースが始まろうとしていた。
最初のスタートではメインストレートでレイホールがスペンサー・ピゴットに追突するアクシデントがあり、すぐさまイエローコーションになった。
4周のイエローコーションの後に、レースが再スタートし、琢磨は順位をキープしたままターン1、そしてターン2に入っていくが、その前方ではライアン・ハンター-レイとロバート・ウィケンスがツーワイドから接触。ウィケンスが宙を舞ってフェンスと接触する大アクシンデントとなった。
これに琢磨、ジェームズ・ヒンチクリフ、ピエトロ・フィッティパルディらが巻き込まれた。
「イエローの破片が飛び散ったので、ライアンがクラッシュしたのがわかったんですが、その後オイルやら破片やらが飛び散ってきて前も見えなくなり、なんとか避けようとしていました。そうしたらオイルに乗ってスピンしたヒンチクリフが僕と当たって、マシンの左側にダメージを負ってしまい、どうすることもできませんでした……」
事故の瞬間をそう語る琢磨は、惰性で走っていたマシンが止まるとその場でリタイアとなった。
琢磨自身に怪我はなかったが、フェンスに激突したウィケンスはヘリコプターで病院に緊急搬送された。その後、ウィケンスは意識があるとリポートされたが、怪我の程度はまだ報告されていない。
「リスタート直後の冷えたタイヤで、路面もバンピーなターン2でツーワイドでいくのは無理だと思うし、長い500マイルのレースなんだから、みんなもう少し自重しても良かったと思います」
「僕もターン2の直前で(セバスチャン)ブルデーとサイド・バイ・サイドになりましたけど、彼もちゃんと引いてくれましたからね。こういう形でレースが終わってしまったのは残念ですが、次のセントルイスには出られますし、頑張りたいと思います。今はロビー(ウィケンス)の無事を祈ります」
ポコノと言えば、2015年のジャスティン・ウイルソンのアクシデントがふと脳裏をよぎった。ハイスピードなスーパースピードウェイはリスクも大きい。ウィケンスがとりあえず意識があったこと、そして再開したレースが無事にチェッカーを迎えられた事を幸いだと思わねばならない。
ロバート・ウィケンスの一日も早い回復を祈ろう。