LMP1プライベーターのSMPレーシングからWEC世界耐久選手権に参戦しているジェンソン・バトンは、自身の力走で総合3番手を得た第3戦シルバーストンの予選後、「プライベーターはトヨタと戦えない。彼らがレースを支配するだろう」と早々に白旗を揚げている。
日本のスーパーGT500クラスにフル参戦しながら、開催期間が1年を超える“スーパーシーズン”として行われている2018/19年のWECにも前戦ル・マン24時間から出場しているバトン。WECドライバーとして初の母国レースを迎えた第3戦シルバーストンでは僚友の元F1ドライバー、ビタリー・ペトロフとともに11号車BRエンジニアリングBR1・AERで予選に臨み、フロントロウを独占したTOYOTA GAZOO Racingに次ぐ決勝3番手グリッドを獲得してみせた。
しかし、プライベーター勢のトップである11号車BR1・AERにしてもポールポジションを獲得した7号車トヨタTS050ハイブリッドとは2秒の開きがあり、第3戦を前に更新されたEoT(イクイバレンス・オブ・テクノロジー=技術の均衡)がうまく機能しているとは言えない状況だ。
この結果について、バトンは「(メーカーワークスとプライベーターの差は)比較にならないよ」と語った。
「トヨタは四輪駆動車でレースをしているが、僕らのクルマはリヤの二輪駆動だ。そうしたなかで、僕たちが使うLMP1用ミシュランタイヤはトヨタのために作られたもの。フロントの駆動も含めた設計がされているから、後輪駆動車ではリヤが必要以上に加熱してしまう」
「また、フロントタイヤの幅がリヤタイヤのようにワイドだからバランスを取りにくく、クルマがとてもトリッキーな動きをするんだ。さらにフロントの“ピックアップ”も多く発生する。これらはすべてプライベーターにとってディスアドバンテージになっている」
「トラフィックに引っかかれば、1ラップあたり約4秒遅くなる。これらを踏まえると僕たちはトヨタに4周遅れにされると考えている。これでは僕らはレースをしているとは言えないよ」
■バトン「低速コーナーでは永遠にそこにいるように感じる」
しかし、2009年のF1ワールドチャンピオンは同じLMP1プライベーターの中での戦いには期待を示し、特に予選4、5番手につけたレベリオン・レーシングとは面白いレースができると信じている。
「(残念ながらトヨタとは勝負にならないが)僕たちにはレベリオンという良きライバルが居るから楽しいレースができるだろう。また(同じシャシーを使用する)ドラゴンスピードも加わってくるかもしれないね」
「レベリオンのR13と僕たちのBR1、特性の異なるクルマ同士の争いはきっと楽しいものになるはずだ」
バトンによれば、SMPレーシングの各ドライバーはルフィードやアリーナのような低速セクションでバランスをとるのに苦労しているという。
また、予選では「リヤが大きく動いていたので、高速コーナーに向かうときには自信が持てなかったと」と付け加えた。
「しかし、決勝レースではこの問題は好転するだろう。その一方で低速コーナーではずっとその場に留まっているように感じるはずだ」
「プロトタイプカーは空力に依存している。それはLMPカーにとって重要なことだが、低速域では充分にダウンフォースが得られずターン3やターン4のような小さく回り込む箇所では永遠にそこにいるように感じるんだ」
「この場所では(メカニカルグリップに勝る)GTカーに置いていかれるくらいだよ。もっとも、それはレベリオンも同じ状況だと思うけどね」