8月18日、ツインリンクもてぎ2&4レース併催のN-ONE OWNER‘S CUP第11戦に、元ロードレース世界選手権(WGP)ライダーの青木拓磨が参戦。ホンダN-ONEを駆り、ハンドドライブでレースに挑んだ。
二輪の最高峰シリーズであるWGPに参戦していた青木は1998年、テスト中に転倒。このときに脊髄損傷を負って以来、車椅子での生活を送っている。以降は四輪レーサーとして活躍。ハンドドライブで四輪レースへ積極的に参戦している。今回の参戦にあたり、すべての運転操作を手元で行うハンドドライブ仕様のN-ONEについて、レース前に話を聞いた。
通常フットペダルで操作するアクセルとブレーキは、ステアリングの右横につけられた手動運転補助装置で操作する。小さなレバーを右側に倒すとアクセルが開くようになっており、イメージとしてバイクのスロットル操作に近い。
ブレーキはこのレバー全体をぐっと前方に押し出せばかかるようになっており、走行中は右手でアクセルとブレーキを操作し、左手でハンドル操作を行う。
この『右手アクセル・ブレーキ、左手ハンドル』は車両によって異なり好みも分かれるようで、青木は「僕、本当は左ブレーキ(とアクセル)、右ハンドルが好きなんですけどね。いい練習にはなるけど」と笑っていた。
「このクルマはもちろん街中でも運転できるものです。普段乗れる車両でレースができて、健常者の人と戦えるのはすごいことだと思います」
N-ONEオーナーズカップはホンダの軽自動車であるN-ONEのナンバー付きワンメイクレースで、いわゆる参加型の入門レースとしての位置づけにある。「普段乗れる車両でレースをする」のはすべてのエントラントに共通ではあるが、ハンディキャップを持つドライバーが健常者とともに競えることが「すごいこと」なのだと青木は言う。
「僕にとってそれはすごく普通のことで、『当たり前じゃん』と思います。けれど、そう思わない(ハンディキャップを持つ)人もたくさんいますから。(興味があるなら)1回乗ってみてほしいですね」
青木は今回で、N-ONEオーナーズカップ参戦3回目。元WGPライダーであり、現レーシングドライバーでもある青木にこのレースの印象についても聞くと、「レベルはそれなりに高いです。けれどもちろん、なかには今日初めてレースに出る人もいて(一緒に戦える)。すごく間口が広いレースになっているんじゃないかなと思いますね」との答えが返ってきた。
その青木は今大会で、25番手からスタート。45台が出走した決勝では、22位チェッカーを受けている。
ちなみに青木はハンドドライブレーシングスクール(HDRS)という、手動運転補助装置付きレーシングカーのスクールを開催している。これは車椅子で生活するドライバーも参加するスクールで、青木は自身がレース参戦することで「これ(手動運転補助装置)を付ければ(ハンディキャップを持つ人でも)クルマに乗れる、レースが楽しめるということを伝えたい」と語っていた。