2018年08月18日 11:02 弁護士ドットコム
夫が風俗嬢に貢ぎ多重債務に陥ってしまったーー。妻から弁護士ドットコムニュース編集部に体験談が寄せられました。
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女性によれば、結婚10年目にして夫の風俗嬢との不倫が発覚。それもかなりの入れ込みようで「彼女と同棲用のマンションまで借りていました」と言います。しかも、ただの遊びではなかったのです。風俗嬢にお金を使うため複数の消費者金融から借り入れていました。
相談者の女性は離婚したいと考えていますが、借金のある夫が養育費、慰謝料を支払えないのではないと心配しており、経済面への不安から腹をくくることができないようです。多額の借金を抱えた夫であっても、養育費や慰謝料を支払わせることは可能なのでしょうか。氏家信彦弁護士に聞きました。
「養育費や慰謝料の支払を確保する上では、いくつかのポイントがあります。
まずは、早期かつ確実な回収のために、夫から今すぐ支払を受けられる金額を確認して、その分は直ちに支払を受けることです。
その上で、養育費や慰謝料の支払条件を明確に定めた条項を、公正証書や、裁判所の作成する調停調書・審判調書・和解調書・判決書など、執行力のある文書にするのがよいでしょう。夫から任意の支払を受けられない場合、これらの文書があれば、強制執行することができます」
特に養育費については支払期間も長くなるだけに支払ってもらえない場合のダメージが大きそうです。
「養育費は、強制執行制度の改善が図られつつあります。支払期限が来ていない将来分も差押えができる上、給与の2分の1まで差押えができるようになっています。また、養育費不払の場合には、不払分とは別に間接強制金を課すことが可能となっています。
さらに、裁判所の調停調書等を得ている場合は、強制執行より簡便な制度として、家裁による履行勧告や履行命令も利用することができます。これに加え、養育費の強制執行の実効性確保のために、民事執行法の財産開示制度の見直しが議論されているところです」
相談者は多重債務に陥っているとのことで、自己破産も考えられるところです。その場合でも支払わせることはできるのでしょうか。
「慰謝料は夫が破産すれば請求できなくなる可能性が高く、養育費は現実には義務者の収入や資産に左右されて支払を受けられないことも多いといわれており、支払確保の万全を期するのは容易ではありません。母子手当など現在の法令上の仕組みを十分に活用して、お子様とご相談者のこれからの生活の支えとしていただければと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
氏家 信彦(うじいえ・のぶひこ)弁護士
東京大学法学部卒。東京と新潟で法律事務所に勤務後、平成24年に現事務所を開設。平成29年度新潟県弁護士会副会長。遺言・相続、交通事故、離婚等の個人案件のほか、契約書作成、労働問題、企業法務、不当クレーム対策、民事介入暴力対策等まで、幅広く対応している。
事務所名:新緑法律事務所
事務所URL:http://www.shinryoku-law.com/