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ニューエンジン対決のゆくえと、チャンピオン候補が絞られるスーパーフォーミュラ第5戦もてぎ戦【プレビュー】

2018年08月17日 17:51  AUTOSPORT web

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ランキング3位で背水の陣で臨む石浦宏明(P.MU / CERUMO · INGING)
お盆&夏休み明けの恒例イベントとなりつつあるツインリンクもてぎ2&4。スーパーフォーミュラ第5戦もてぎ戦がいよいよ今週末に開催される。金曜の搬入日、そして金曜走行を終えたもてぎの現場で、週末の戦いのポイント、そして気になるトヨタ、ホンダのニューエンジンについて聞いた。

 このスーパーフォーミュラ第5戦もてぎのいくつかのポイントのうち、まずは今回特筆すべきなのが、ホンダ、トヨタの両陣営が投入するニューエンジンの出来映えだ。スーパーフォーミュラではシーズン2基のエンジン使用が認められているが、この第5戦からシーズン2基目のエンジンが投入される。

 F1でスタンダードになっているプレチャンバー(副燃焼室)技術が急激に進歩しているが、この技術が特に今年のスーパーフォーミュラのエンジン、NRE(ニッポン・レース・エンジン)にも導入され、エンジン開発競争が過熱している。プレチャンバー技術の本格導入によって、現在のスーパーフォーミュラのエンジンは燃焼圧の高圧縮化、熱効率(パワー)がこれまでに比べて飛躍的に高まったと言われているのだ。

 今週末のもてぎ戦では、そのエンジン開発競争のシーズン第二章を迎えるわけだが、ホンダ、トヨタ両陣営に聞く限り、今回の開発は少し異なった考え方で進められているようだ。トヨタのスーパーフォーミュラ活動の現場責任者でもあるTRD岡見崇弘エンジニアが話す。

「もう、そんなに新しいものは入れていません。来年のことを考えると、残り3戦で壊さないでどれだけ性能を使い切れるか、出し切れるかという、運用面で戦っていくしかないかなと思っています」とTRD岡見エンジニア。

 来年、2019年のスーパーフォーミュラのエンジン使用は年間1基。メーカー側としては、今年の2基から倍の走行距離で信頼性を確保しなければならず、今季の残り3戦に向けての開発よりも、来年以降に向けての開発にシフトしなければならないタイミングになっている。

 そのため、開発部分についてはこれまでよりもトーンダウン方向だが、とは言ってもエンジン開発競争が収まるわけではない。これまでの前半4戦から、残りは3戦となるため、信頼性の部分を削ってパフォーマンスに振ることはできる。その点はホンダのプロジェクトリーダー、佐伯昌浩エンジニアも認める。

「そうですね。2基目は正常進化バージョンになりますが、そのような方向になります」とホンダ佐伯エンジニア。

 ホンダの2基目のエンジンとしてはドライバビリティの向上、全域でのパワーアップが開発ポイントになっているようだが、トヨタとホンダ、現在のエンジンのギリギリのパフォーマンスバトルのゆくえが、この第5戦もてぎで判明することになる。

■王者候補のターニングポイント。ソフトタイヤをどう使いこなすか

 ドライバーラインアップとしても注目点が多い。今回はWEC第3戦シルバーストンに参戦する中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)に代わってJ-P.デ・オリベイラ、同じく小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)に代わって中山雄一が参戦。そして福住仁嶺(TEAM MUGEN)が開幕戦以来の2戦目の参戦となり、彼らがどのようなパフォーマンスを見せるのかは大きな見どころのひとつだ。

 また、チャンピオン争いに目を移せば、トップの山本尚貴(TEAM MUGEN)が22ポイント、2番手ニック・キャシディ(KONDO RACING)が21ポイント、3番手に石浦宏明(P.MU/CERUMO·INGING)が13ポイントと、上位2人が抜けている状態。

 ディフェンディングチャンピオンの石浦は「このもてぎを含めて、残り3戦しかないので、ランキング上位のふたりには今回追いつかないとチャンピオン争いは厳しいと思うので、今回が勝負だと思って来ています」と今週末へ背水の陣で臨むように、チャンピオン候補のドライバーは実質、このもてぎ戦で絞られることになる。

 レースの展開としては、これまでのもてぎ戦はストップ&ゴーのコース特性上、予選上位者が圧倒的に有利だったがここ数年のスーパーフォーミュラはソフトタイヤ導入による2スペック制で、多様な展開が見られるようになった。石浦も今週末の展望を以下のように話す。

「予選の順位は重要ですが、去年の例もあるように、タイヤが2スペック制になってから決勝での追い上げも可能な展開になってきています。ただ、正攻法なら予選で前のグリッドを獲得して、決勝でも順当に前で進められれば優勝も見えてくると思います。去年、レースでトップを独走していた(小林)可夢偉選手がピット作業で遅れて2位になりましたが、レースの展開としては、あの戦い方が理想ですね」と石浦。

 週末の戦い方としては、まずは予選Q1ではきちんとクリアラップを取ってQ2に進出し、Q2、Q3では上位タイムをマークするためにクルマのセットアップだけでなく、ソフトタイヤのウォームアップを見極めて1周にピークのグリップを凝縮させるタイヤマネジメントが重要になる。そしてレースではミディアムタイヤよりもソフトタイヤの方が約1秒速いことが予想されることから、そのソフトタイヤをどれだけ長く引っ張れるかが勝負どころになると推測される。

 もちろん、2スペック制によってコース上で抜けるようになったとはいえ、レース中に義務付けられたピットストップも大きなターニングポイントになる。TEAM MUGENなど、このもてぎ戦から自動ジャッキを導入してきたチームも多いようで、今年のピットストップの重要デバイスとなっているチーム独自の自動ジャッキシステムにも注目してみたい。