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ねぶた祭「1時間5000円」駐車場に「ぼったくり」批判殺到、法的な問題はあるの?

2018年08月17日 11:02  弁護士ドットコム

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青森市で行われた「青森ねぶた祭」が思わぬ騒動を起こしている。祭りの期間中、市内にあるホテル「JALシティ青森」が所有するコインパーキングで、普段の16倍以上にあたる「1時間5000円」という料金設定をしていた。


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報道によると、期間中に高額設定の駐車料金を支払ったは76人にのぼり、ネットでは「ぼったくりではないのか」という批判の声が上がっている。しかし、駐車場を管理する会社「パラカ」では、高額料金はホテル利用客の自動車を優先的に駐車させるための措置だったといい、利用者にわかりやすい位置に特別料金であることを掲示していたと説明している。


知らず知らずのうちに高額となるコインパーキングについては、以前より消費者トラブルが少なくない。そのため、消費者庁でも昨年末、消費者に向けて注意喚起を発表。料金看板における表示方法に注意を促している。では、青森ねぶた祭のケースは「ぼったくり」にはならないのだろうか。鬼沢健士弁護士に聞いた。


●看板や張り紙で注意呼びかけ、「景品表示法の問題はない表示」

そもそも、通常は「日中20分100円」という駐車場において、「青森ねぶた祭」の期間中、数日間だけ「1時間5000円」という料金設定は「あり」なのだろうか?


「ありです。


駐車場の料金設定として、年間同じ料金しなければならないとか、時間帯によって料金を変えてはいけないという規制はありません。深夜料金を安くしていたり、土日だけ料金を変えている駐車場は珍しくありません。


高すぎるのではないかという指摘はあるでしょうが、高すぎることをもって不当とか、違法となるわけではありません」


管理会社の発表によると、通常の案内看板(縦1.2メートル、横2.4メートル)に張り紙をした他、「1時間5000円」と表示したチラシ(A4サイズとA3サイズ)も合計12カ所に貼り、特別料金を明示していたと説明しています。これは、景品表示法上、問題ない?


「駐車場代については誤解を料金表示について『わかりにくい』『想定よりも高い』などのトラブルが多く、消費者庁などが利用者に対し注意喚起をしています。


そして景品表示法上問題となるのは、消費者の誤認を招く表記かどうかということです。例えば『24時間最大1000円』という表記ですと、24時間を経過した後に最大料金が適用されるかどうかは不明確であり、24時間ごとに最大1000円と誤認するおそれがあります。


本件の『1時間5000円』という表示については、料金内容は明確に示されていますし、誤認するおそれはないと考えられます。不当に小さく表示していたというのなら話は別ですが、料金表示が目に入らなかったというのは、誤認を招く表記の問題にはなりません。したがって、景品表示法の問題はない表示といえるでしょう」


●どうすれば、トラブルを回避できたか?

管理会社によると、事前にも告知をしていたという。しかし、それでも大きな批判を呼んでしまった。どうしたら、このトラブルは避けられた?


「これは非常に難しい問題です。


ホテルや駐車場を管理する会社はたくさんの人が集まることがわかっているから、駐車場代をたくさん得たい(※業者側はこの意図を否定しています)、ホテル宿泊客が駐車場を使えるようにしたいという意向があります。


駐車場利用者側は、車でお祭りに行きたいわけですし、駐車場代もできるだけ安く済ませたいという意向があるのは当然でしょう。さらに、地元の方には駐車代金を高くしすぎることによって、遠くからねぶた祭りに来てくれる人が減ってしまうのではないかと心配する声もあります。


かといって、駐車場の利用そのものを止めてしまうのは誰のメリットにもならない措置です。料金表示を見て納得した上で駐車した人もいるかもしれません。駐車場を管理する会社には注意を喚起した努力は見られますし、仮に高く設定するとしても不満が出ない料金設定というのは誰にもわからないことです。


酷ですが、利用者側が駐車場の料金表示をしっかりと確認してから駐車するという防衛策が最善の策であると思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
鬼沢 健士(おにざわ・たけし)弁護士
交通事故、労働、家事問題(離婚・不倫)を取り扱う。
事務所名:じょうばん法律事務所
事務所URL:http://www.jobanlaw.com/