2018年08月16日 09:52 弁護士ドットコム
「離婚後、元主人が逮捕されました。養育費はどうなりますか」という相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
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相談者は2年前に調停離婚。その後、元夫から養育費は支払われ続けていました。ところが、元夫が逮捕され、無期懲役に近い実刑判決になるといわれてしまう事態に発展。子どもが私立高校に進学することになっているため、相談者は途方に暮れています。また、元夫の両親に請求できないものかと悩んでいるようです。
元夫が刑務所に入ることになり、資産もほぼないような場合、養育費はどのように請求すればよいのでしょうか。佐田理恵弁護士に聞きました。
刑務所でおこなった労務作業に対しては、作業報奨金が支払われます。元夫が刑務所に入った場合、この作業報奨金を差し押さえるなど、養育費を確保する手段はあるのでしょうか。
「相談者は調停離婚をされていますので、調停調書のなかに養育費の記載があれば、これをもって、元夫に差し押さえられる財産があれば、差押えをすることは可能となります。
しかし、作業報奨金は、釈放時の基準で計算されるのが原則となりますので(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律98条1項)、差押えは困難ではないかと考えます。元夫が養育費の支払いに充てたい旨を申し出た場合は、一部支払われる可能性はあります(同条4項)。とはいえ、作業報奨金の額はわずかですので、いずれにせよ大した金額にはならないでしょう」
元夫の両親に養育費を請求することはできるのでしょうか。
「元夫の両親には、養育費を支払う法的義務があるわけではありません。もちろん、相談をしてみることは可能ですし、もし、元夫の両親が元夫の代わりに養育費を支払ってくれるのであれば、それに越したことはありませんが、両親の資力や考え方によるところでしょう」
無期懲役に近い刑罰を科された場合、時効が成立してしまうおそれもあります。時効を成立させないためにできることはあるのでしょうか。
「時効が成立していても、元夫に対して請求をすること自体は出来ます。ただし、元夫が時効を援用すると、時効が成立している部分についてはそれ以上請求できません。養育費について取り決めがある場合、時効は5年です。毎月の支払期限ごとに計算します。
時効完成前に訴訟を提起することで時効を中断させることは出来ます。判決が出れば、時効はそれから10年になります。また、元夫に滞納分について支払う旨一筆書いてもらうことも一つの方法ですが、その後放置すれば、やはり時効にかかりますので、注意が必要です」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
佐田 理恵(さだ・りえ)弁護士
2007年弁護士登録。第二東京弁護士会所属。離婚・相続・子どもの問題などを多く扱っている。
所在エリア:東京新宿
事務所名:アストレア法律事務所
事務所URL:http://www.astraea-law.jp/