2018年08月15日 10:42 弁護士ドットコム
子どもたちは、時に親以上にスマホやタブレット、ゲーム端末機を使いこなしてしまうもの。小中学生の子どもが親のクレジットカードを勝手に使ってゲームに課金をした場合、未成年者の契約だから支払わなくていいと思っていないだろうか。実際に返金されるのか、消費生活センター等の相談現場での実例は千差万別だ。
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返金されることもあれば、一部返金のこともあれば、まったく返金されないこともある。分かれ道はどこにあるのか、結論が異なる2つの事例を紹介する。(ライター・高橋ホイコ)
1つ目のケースは、11才の男児が「20歳以上」とウソをついて登録してしまったケースだ。
男児は有料のゲームアプリを購入するため、母親のクレジットカードをゲーム配信サイトに無断で登録した。さらに、その3カ月後、息子は別のゲームアプリをインストールし、アイテム購入を勧める画面が表示された。以前カード情報を登録したことを思い出し「20歳以上」を選択して購入。1万円弱の購入を繰り返し、合計47万円分を利用した。
翌月、カード会社から母親あてに高額な請求があり、息子がゲームに課金していたことが判明した。地元の消費生活センターに相談したところ、ゲーム会社は取り消しに応じるという。
小学6年生の子どもが「ウソの生年月日」を登録し年齢を偽ったケースで、返金されなかったケースもある。次に、この事例を紹介したい。
小学6年生の子どもが、親に買ってもらったゲーム機のマスターアカウントを作ろうとしたが、正しい氏名と生年月日を入力してもうまくいかなかった。そこで、初期化をして誕生年を「1970年」と適当に変更した。8カ月後、親が入浴している間にクレジットカードを財布から抜いて番号を控え、ゲーム機で決済の登録を行った。
その3カ月後、カード会社からの請求で母親が事態に気がついた。地元の消費生活センターに相談し、ゲーム会社に「未成年者取り消し」を行使する旨を伝えたが、ゲーム会社は「生年月日を偽っているため、未成年者取り消しには応じられない」と伝えられた。親に同意なく利用した金額は13万円にのぼっている。
法律ではどのように考えるのか。まず、未成年者が親の同意なしに契約をした場合、民法の「未成年者取り消し」で契約を取り消すことができる。しかし、2つ目の事例のように年齢を偽った場合「詐術を用いた」として取り消せない可能性もある。
どういう状況なら「詐術を用いた」と言えるのか。その判断基準はかなりあいまいな状況に置かれている。
経済産業省の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」には、「少なくとも、単に年齢確認画面や生年月日記入画面に虚偽の年齢や生年月日を入力したという事実のみをもって『詐術を用いた』とは断定できず、事業者の設定した年齢確認や親の同意確認の障壁を容易にかいくぐることができるものであったかなど他の考慮要素も踏まえた総合判断が求められると解される」と書いてある。
なんともモヤっとした表現だ。
つまり、どういう「年齢確認システム」に対し、どういう「ウソ」をついたら「詐術」にあたるのか明確な基準がない。そのためゲーム会社により考え方が異なってしまうのだ。
事例として公表されている文章を読んだだけではすべてのことはわからないが、前述の2つの事例で一方は返金され、一方は返金されなかったのは、画面の作りや子どもの行為の違いというよりは、ゲーム会社の考え方の違いだった可能性が高いと思われる。
このように未成年者契約だからといって必ず全額返金されるとは限らない。
国民生活センターはそもそもトラブルにあわないために「自身が作ったクレジットカードについては管理責任があることを認識した上で、子どもにクレジットカードの大切さについて伝えることが必要」とアドバイスしている。
オンラインゲームではクレジットカード決済が使われることが多い。「子どもが勝手にクレジットカードを使用した」等と申し出ても、多くの場合、家族間の利用として利用規約に基づきクレジットカードの管理責任を問われ、カード名義人である親等に請求されることになる。子どもが親に無断で、財布からクレジットカードを抜き取った事例もある。日頃からクレジットカードの管理を徹底することが重要だ。
また、返金はゲーム会社の考え方次第と言っても、相談者や消費生活センターとの交渉の過程でゲーム会社が考えを変える可能性もある。トラブルにあった場合には最寄りの消費生活センター等に相談してほしい。
【ライタープロフィール】
高橋ホイコ:2001年国民生活センターに入所。商品テスト、相談情報データベース(PIO-NET)、ホームページ関連の業務に携わってきた。2016年に退職し、現在はフリーライターとして活動している。
(弁護士ドットコムニュース)