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この夏最も濃い一夜に? 開催迫る『ソニックマニア』全ラインナップをチェック

2018年08月13日 12:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 8月中旬になり、今年の夏フェスも後半戦に突入して来た。野外型、都市型と様々なロケーションで、様々なアーティストが今年も素晴らしいパフォーマンスを見せてくれているが、その中でも深夜型としてディープな魅力を放っているのが8月17日開催の『ソニックマニア(SONICMANIA 2018)』だ。


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 ロック中心のステージ「CRYSTAL MOUNTAIN」、ダンスミュージック勢による「SONIC WAVE」、ジャズ、ファンク、インストゥルメンタル・ヒップホップを中心としたFlyng Lotus率いるインディレーベル<Brainfeeder>のアーティストが集結する「SPACE RAINBOW」と、3つのステージで平行にパフォーマンスが繰り広げられるのだが、今年のラインナップはとにかくヤバい。何がヤバいかと言うと、どの時間、どのステージにいても、間違いなく脳が揺れるか、回るか、トぶかしているのである。タイムテーブルを眺めるだけでも、酩酊してくる。そんな「真夏の夜の夢」を彩るラインナップを、完全予習版として改めてご紹介しよう。


<CRYSTAL MOUNTAIN>


・Cornelius
 すでに説明をする必要もないかもしれないが、小山田圭吾によるソロユニット。昨年のフジロックやツアーでのステージも語り草になっているが、精密に刻まれる各セクションの音の交差が立体的な音像となり、それが映像や照明と完全にリンクすることで、総合芸術とも言うべき完璧なステージを創り出す。初見の観客は見入る他なく立ち尽くし、その世界に圧倒されることだろう。


・Nine Inch Nails
 トレント・レズナー率いるインダストリアルロックバンド、Nine Inch Nailsが日をまたぐ時間帯に登場。内省的な歌と漆黒のサウンドが、夏の夜を憂鬱に切り裂き、会場を塗り潰すことを想像するだけでも、ぞくぞくと被虐的な快楽が全身をほとばしる。過去にも圧倒的なパフォーマンスを見せつけて来た彼らの、新たな伝説の瞬間を目撃することになるのは受け合いだ。


・My Bloody Valentine
 轟音フィードバックノイズが生み出す桃源郷サウンド。通称“シューゲイザー”と呼ばれるスタイルの代表格、My Bloody Valentine。音量が大きすぎて、会場で耳栓が配布されることでも有名だが、音と人体の境界すら溶けてしまうほどの官能的なノイズに耽る体験など滅多に味わうこともないので、是非とも身を委ねて楽しんでいただきたい。ライブが終わる頃にはモノの見え方が変わっていると思われる。


・電気グルーヴ
 最早、日本一フロアを盛り上げるアーティストと言っても過言ではない電気グルーヴが、CRYSTAL MOUNTAINステージのトリとして、夜明けまでノンストップで盛り上げてくれる。テクノミュージックとしての多幸感から、コミック要素の強いパフォーマンス、そして少し甘酸っぱくなるような、センチメンタルなメロディまで、変幻自在な音楽が朝日とともに射し込んでくるだろう。


<SONIC WAVE>


・Clean Bandit
 SONIC WAVEステージの幕を切って落とすのは、エレクトリックミュージック meets クラシックなサウンドで世界中のフロアを熱狂させるClean Bandit。楽曲ごとにハウス、EDM、レゲエ、ロック、ポップと取り込む要素を変えるフレキシブルなスタイルを取りながらも、オール・キラーチューンという盤石のトラックメイキング力。華やかな音にひたすら酔いしれる時間を満喫しよう。


・中田ヤスタカ
 日本屈指のトップトラックメーカー。エッジの効いたバッキバキのクラブサウンドから、キャッチーでポップなKawaiiまで縦横無尽に駆け抜ける振り幅と、常に最先端サウンドを導入してアップデートを繰り返して行く先駆性に、今や世界中のフロアが沸騰している。ビールを飲んでハンドクラップして、曲が変わるごとに叫んで踊ってを繰り返す。そんなハッピーな時間を過ごせるステージに期待したい。


・Marshmello
 マシュマロのマスクを被った謎の覆面DJ。ハウス、EDM、フューチャートラップを取り込んだ即効性のあるトラックと謎めいた正体の議論で瞬く間に話題になった彼が、ソニックマニアのフロアをどのようにジャックするのか、否が応でも期待は高まる。本能から覚醒させられるダンス衝動に身を委ね、狂乱と快楽の音楽に身を委ねよう。


・Petit Biscuit
 昨年までは高校生だったフランス出身のDJ。ドリームポップ、トロピカルハウスを取り入れたスウィートかつセンチメンタルなトラックで美メロ・エレクトロシーンを席巻中。チークタイムのように甘いムードを演出したかと思えば、フロアを沸かせることもしっかり出来る、若者とは思えないほどの演出の切り替えにハッとさせられるだろう。


・UNKLE
 DJシャドウ、DJ KRUSHなどを輩出した伝説的レーベル<Mo’Wax>の創始者、ジェームス・ラヴェル率いるUNKLEがSONIC WAVEステージのトリを飾る。昨年7年ぶりにリリースされた最新作『The Road pt 1』を引っさげての登場だ。作品ごとに様々なスタイルを取り入れ、変幻自在の音楽プロジェクトだけに、今回どのようなパフォーマンスを見せるのか未知数だが、その読めなさこそが最大の魅力と言える。


<SPACE RAINBOW BRAINFEEDER NIGHT IN SONICMANIA>


・Jameszoo
 新世代ジャズ勢を擁する<Brainfeeder>の中でも、アヴァンギャルドジャズや実験的エレクトロニックサウンド、プログレ、ブラジリアンジャズを自在に織り混ぜたトラックで、様々な音像を生み出すオランダ出身の若き鬼才。張りつめるような音と音の鍔迫り合いかと思いきや、そこから散った火花から一斉に色が広がって空間を彩っていくような、予想もつかない展開に想像力を駆使しながら身を委ねていく楽しさは、あなたの思考の最深部のその先まで誘ってくれることだと思う。


・Dorian Concept
 Flying Lotus、The Cinematic Orchestraのライブサポートメンバーとしてだけでなく、Thundercatの作品にも名を連ねる彼は、YouTubeで公開したmicro KORGの即興演奏動画で一躍話題となった天才演奏家だ。演奏、エフェクト、ループを超高速で繰り出し、液体の如く常に変化し続ける音は、時間も空間も捻じ曲げるようにフロアを飲み込んでいく。手元の妙技に酔っても、吐き出され続ける“揺らぎ”に脳を揺らされても、これ以上のない至福を味わえるのは間違いなさそうだ。


・George Clinton & Parliament Funkadelic
 先日、ツアー参加からの引退を表明したGeorge Clinton。彼が率いるParliament Funkadelicをフェスという形で見れるのは、おそらくこれが最後だろう。70年代から80年代にかけて、音楽シーンを揺らしまくった伝説の集団が、幕張の深夜に降臨する。極彩色のサウンドと渦巻くリズム。無限に続くような乱痴気グルーヴが、天元突破の螺旋エネルギーとなって、宇宙を突き抜けていくのは間違いない。とにかく飲んで踊って騒ごう。


・Thundercat
 King Crimson『クリムゾン・キングの宮殿』のように、後の世になっても必ずネタになるであろう、強烈なインパクトを誇るジャケット写真からは想像が出来ない豊潤なサウンドが詰め込まれた『Drunk』で世界中を魅了したThundercat。昨年のフジロックでのステージもうっとりするほど素晴らしかったが、今年は『ソニックマニア』のステージを盛り上げてくれる。6弦ベースを繰る超絶技法が生み出すメロディと甘いボイスで芳醇な空気を醸したかと思いきや、ユニークな歌詞と演出で、場の空気を朗らかにする。この魔法のような時間を楽しんでいただきたい。


・Flying Lotus
 <Brainfeeder>を率いる天才DJ。ヒップホップ、エレクトロニカから、ジャズ、ワールドミュージックなどジャンルを飛び越えたトラックメイキングで、プレイごとに新たな地平を開拓し続ける研究者とも挑戦者とも言える。その彼が、この夏に自身の最先端であるモードを披露し、それを体感できるのだから見逃すわけにも行かないという参加者は多いのではないだろうか。どんなビートが、どんな音が、どんな発想が来るのか。新しい次元を開き続ける知恵と、本能を刺激するダンスミュージックの奇跡的な融合を目撃していただきたい。


・Ross From Friends
 SPACE RAINBOWステージのトリを飾るのはローファイハウスで頭角を表したUKのプロデューサー、Ross From Friends。メランコリックなメロディとロービートを得意とする彼のトラックは、夜明け前の最も深い闇から、朝日が街に光をもたらすまでの時間にピッタリと言える。フロアでゆっくり体を揺らしてみたり、どこかにで誰かと話し込んでみたり、ぼうっと床に座り込んで身体をクールダウンしてみたりと、それぞれの時間と感情にフィットする抜群のサウンドを与えてくれることだろう。


 以上が『ソニックマニア』全ラインナップである。読み終えて、改めて冒頭に書いた「どの時間、どのステージにいても、間違いなく脳が揺れるか、回るか、トぶかしている」というセンテンスをより理解していただけたのではないだろうか。この夏一番の濃くて熱い夏を、頭にも身体にも浴びて、異次元の快楽を満喫していただきたい。(石川雅文)